Giorgio Morandi

ジョルジオ モランディ


 モランディは不思議な画家である。その魅力を人に説明することは容易ではない。万人を納得させる説明はもとより無理としても、美術を愛する人に説明するにも、多くの言葉を費やしたからとて、分かってもらえるものでもなさそうである。そのうち、説明しようとしている自分自身が、その魅力を充分に理解しているかも不安になってくる。

 彼は生涯数え切れないほどの多くの油絵を描き、エッチングを作った。いくつかの風景画(それも初期に限られるが)を除き、そのほとんどは「机の上の瓶と椀」を描いたものである。その瓶や椀もとりたて変化があるわけでもなく、同じ瓶、同じ椀が繰り返し、繰り返し現れる。これほど稼ぎ出した瓶も珍しいのではないかと下世話なことを考えてしまうほどだ。

 モランディはその最初期に未来派と交流があり、未来派の画風の画もいくつか描いている(例えば現在エルミタージュにある静物画、1918年)。しかし、モランディは未来派以上に「未来的」であった。80年経った今、私達の目には、慌ただしい時間の流れや、喧燥からもっとも遠いところにあるモランディの静物画は、今もなをさらに未来を夢見てまどろんでいるように見える。


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