彼は生涯数え切れないほどの多くの油絵を描き、エッチングを作った。いくつかの風景画(それも初期に限られるが)を除き、そのほとんどは「机の上の瓶と椀」を描いたものである。その瓶や椀もとりたて変化があるわけでもなく、同じ瓶、同じ椀が繰り返し、繰り返し現れる。これほど稼ぎ出した瓶も珍しいのではないかと下世話なことを考えてしまうほどだ。
モランディはその最初期に未来派と交流があり、未来派の画風の画もいくつか描いている(例えば現在エルミタージュにある静物画、1918年)。しかし、モランディは未来派以上に「未来的」であった。80年経った今、私達の目には、慌ただしい時間の流れや、喧燥からもっとも遠いところにあるモランディの静物画は、今もなをさらに未来を夢見てまどろんでいるように見える。