(以下の会話は本年3月18日にパリのシャルル・ド・ゴール空港内の待合室において録音したものですが、本欄でご紹介するに当たり関係諸氏のご快諾をいただきました。)
和夫:やれやれ、また爆弾騒ぎかあ、まあ、パリらしくていいけれど。
淳子:無事に飛行機に乗れさえすればいいじゃないの。乗っちゃえば後は寝るだけだし。
和夫:昨日の夜だけど、ホテルのテレビでアリーをやってるって教えてくれてどうも有り難う。危うく見逃すとこだった。
淳子:あなたは明けてもアリーちゃん、暮れてもアリーちゃんだから、まったく。私のような理解ある人と一緒で感謝しなさいよ。まあ、私もあのドラマ、割と嫌いじゃないし。
和夫:それにしても、一挙に2回分まとめて放映とは凄かったな。さすが、M6、民放だから外国ソフトの放映枠を目一杯使ってるんだろうな。でもどうせ2回分まとめてやるなら、夜十時過ぎからじゃなくて、もっと早い時間から始めて欲しいな。
淳子:それにまだ日本では放映していない分だったし。それでもまだ第一集でしょ、アメリカのフォックステレビ(http://www.fox.com/ally/)ではもう一年も前に放送した分よ。
和夫:おめえ、やけに詳しいなあ。でも、フランス語の吹き替えで聞くアリーはいまいちだったな。そう思わない?なんか、安っぽいアメリカのソープものを観てるような感じで。
淳子:私は気にならなかったけど。それより、場面進行のタイミングが何となく不自然に思ったけど。どこもカットはして無いわよねえ。
和夫:それはね、これまたフランスの決まりで、1時間もののドラマでは途中でコマーシャルは一回しか入れられないことになっている。だから、アリーのように、途中で3回コマーシャルを入れる計算で製作されていると、本来、コマーシャルで一呼吸つくべきところを続けてやるから、それで変な感じがしたんだろ。
淳子:あなた、物知りなのはいいけれど、もうちょっと知ったかぶらない言い方はできないの? わたしだって、業界の友達から色々聞いているのよ。たとえば、昨日のアリーの殺人事件の話、続きがあるって知ってる?
和夫:え? 昨日の二話連続で完結じゃないの?
淳子:えへへー、それが違うのよ。アリーの原作者のデヴィッド・ケリーって人は、大変な売れっ子らしいんだけれど、実はフォックス以外にABCとも仕事をしていて、ザ・プラクティスっていうもう少しシリアスな連続の弁護士ドラマで、あのアリーのエピソードの続きを書いたらしいわよ。
和夫:まさか、だって別のテレビ局でしょ?
淳子:そこがアメリカのすごさってやつよ。それも同じ日に続けて、もちろんチャンネルは別で、放映したらしいわよ。
和夫:そんなこと言われたら、もう、見ないわけにいかないよ。NHKに励ましのお便りでも書こうか。
淳子:無駄に決まってるでしょ、ABCの連続ドラマを一回分だけNHKが買うなんて。そんな洒落た真似できるわけないじゃない。
和夫:あーあ、ひょっとして、ヴィデオで売り出したりしないだろうなあ。
淳子:あ、き、ら、め、なさい。
和夫:確かにNHKには期待できないよ、いつかアリーの中に出てきたボクシングのシーンも著作権の関係か何か知らないけれど、勝手に別のシーンに差し替えてあったし、オリジナルを観たいという視聴者の純真な思いを踏みにじってる。ホームページを見たってアリーのアの字すらないし。その点、ニュージーランドのTV2ときたら、わざわざコンピューター用に、アリーのスクリーンセイバーをウェブページ(http://www.tv2.co.nz/)で配布しているんだよ。ま、趣味は余り良くないけれど。
淳子:まあ、あなたのような病気の人に付ける薬はないわね。マイレッジでも溜めて、世界一周アリー鑑賞ツアーにでも出かけたらどう?
和夫:お、それ凄い考えじゃない?アメリカは放映が月曜日、日本は木曜日だからいいとして。ええと、でも、ニュージーランドとフランスは、両方とも水曜日の夜で重なるな。
淳子:時差を計算に入れても無理よ。
和夫:お、見ろよ、爆弾処理、とっくに終わってる。早く行かないと飛行機出ちゃうぞ。
(1999年4月6日)