闘病記 in Egypt

おしりを切られちゃいました

はじめ、おしりに「にきび」ができたなぁ、と思っていました。僕はそんなに「にきび」の出きる体質ではないのですが、「最近、暖かくなってきて、汗でもかいたのかなぁ」と、「それにしても、変なところにできたなぁ」と、いろいろ思っていました。

はやく、よくならないかなあと、思っていたのですが、だんだん大きく育ってきました。それでも、「にきび」もつぶれたりする前に、赤くちょっと膨らむので、これも、「ああ、もうそろそろ山越えるな」と気楽にかまえていました。

それにしても、大きくなっていきます。いよいよ、「にきび」というより、「おでき」に近くなってきました。座っていたら、もちろん痛いのですが、立っていても痛くなってきました。寝るときは、もちろん、うつ伏せ状態です。

おしり、というのはとても重要なところですね。体重を支えてくれているとても大切なところです。

ちょっと、話がそれますが、僕は寝相(ねぞう)がよいのです。いつも仰向けにまっすぐ寝ているのですが、朝起きても、そんなに動いた感じはありません。いままで、そうやって寝てきたので、いきなり下を向いて寝るなんて、とても寝心地が悪いのです。胸を圧迫されるし。

小さい頃は、うつ伏せで寝ると、よく怖い夢をみたものです。

横を向いて寝たり、いろいろ頑張って寝ていたのですが、熟睡もできないし、第一、だんだん大きくなって、いっこうによくなる気配がありません。

授業も、小さい子供たちの中には、僕の足の上に座って(椅子が低いため)、練習する子がいるのですが、ホント痛くなって、顔がひきつるようになってきました。

いよいよ、こりゃ相談しなきゃ、ダメだな、と思って、黒澤さん(JICAの医療調整員)に相談しました。そうしたら、「明日、カイロの病院で診てもらいましょう」ということになりました。

しかし、明日はずっと前から、子供(希望者のみ)と音楽鑑賞をする予定にしていました。マンスーラからカイロまで2時間かけて、オペラハウスまで聴きにいくのです。これをキャンセルするわけには、いきません。子供も楽しみにしていたし。

結局、子供が音楽鑑賞している間に、僕は1人、おしりの治療にむかうことになりました。ちなみにプログラムは「ラフマニノフのピアノ協奏曲2番」

病院には黒澤さんにも付き添ってもらいました。しかし、せっかく行ったのに、「医者がいないから、明日もう1度来てくれ」っていうこと。

「えー、明日もう1度来るの?マンスーラから?往復4時間もかかるのに」。いろいろ、ウダウダ、言ってると、受付の人もあきらめて、「じゃあ、ちょっと待ってて」と言って、お医者さんを連れて来てくれました。

駄々をこねていると、うまくいくかもしれないのが、エジプトのいいところなの・・・かな?しばらく、待たされて、診察です。

お医者さんは、僕のおしりを思いっきりつねって、「おでき」をつぶして、うみを出しました。めちゃくちゃ強引。思わず、バッと、体が前に飛び出ました。そして、つねり終わった後、お医者さんが言うには、「手術しなきゃいけません。しかもすぐに」

僕は、こういう「おでき」みたいなものは、最悪ほうっておいても、いつかは治るものと思っていました。しかし、この「おでき」は、ほうっておいたら、ほとんど良くなる見込みはないし、むしろ死ぬ可能性だってあるんだそうです。

結局、明日、もう1度出てくることになりました。

この夜は、車を1台チャーターして、後部座席に横に寝て、マンスーラまで帰りました。子供に「ミスター阿登、頑張れ!」とか、慰められながら・・・。

しかも、この子供の家の近くは、ガタガタ道。車は壊れるほどに揺れて、僕も、なんか泣きたくなりました。家に着いたのは、朝の2時。

4時間ほど仮眠をとって、バックに何泊かできるようにいろいろ準備をし、家を出ました。

そして、ユースセンターに「しばらく授業お休み」の張り紙をして、カイロに上がりました。

前日の長時間移動や今日の移動で、はっきり言って、僕のおしりはめちゃくちゃです。ホント痛いし、ズボンには血が染みているし。

午後、いよいよ手術。全身麻酔。

僕は過去に3度手術しているのですが、全身麻酔の手術をしたとき、なかなか意識が戻らなかった経験があるので、今回もちょっと不安でした。頭の中では、渡辺淳一の小説「麻酔」の場面がよみがえります。

そして、手術。

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手術が終わって、気がつくと1人です。手術が無事終わるまで、渡辺調整員がいてくれたらしいのですが、僕の意識が戻った頃には、誰もいません。

全身麻酔をかけるということで、僕は前日から何も食べていませんでした。飲んだのもお水だけ。お腹がすいて、たまりません。麻酔がきれると、痛いんです。当たり前なんだけど。こんなに痛い思いをしているのに、何も食べていな
いんじゃあ、元気になるはずがありません。かといって、どうやって食べ物を手に入れればよいか。もう夜の11時半。

頭はまだ、朦朧(もうろう)としてたけど、頑張って、ケンタッキーに出前をとりました。ハンバーガーを3つ。一気に食べました。

翌朝、少しよくなった感じなので、病院の外まで、重い体を起こして、ジュースを買いに出かけました。のどが、とても乾いていたのです。本当は誰かに買ってきてもらいたかったんだけど、朝の8時じゃあ、仕方ありません。

それで、買って帰ると、ベッドメークをしてくれる人が、ベッドのシーツを換えていました。ここで、素朴な疑問があったんです。

「チップはいるのか・・・?」

おばちゃんは、さりげなく何かほしそうな素振りをしてるんだけど、でも、ここは病院で、ホテルじゃないし、でもこういう場合でもあげるものなのかな、と思ったりもして。いろいろ迷ったあげく、あげませんでした。こういう時、本当はどうするものなんでしょう。

午後、お医者さんがやってきて、手術のことや今後の治療について話をしてくださいました。あまり詳しいことはわからなかったけど、とりあえずOKなんでしょう。ニコニコしてたから。この日、退院です。結局、入院したのは1日だけでした。

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それから2日して、もう1度、診察を受けに病院に行きました。

そのいつもニコニコしているお医者さんが、いきなり、傷口をほじくり始めました。痛いよ。そして、消毒して、ガーゼをあててくれました。うみを出していたようなのですが、だとしたら、僕のこの手術は何だったんだろう。まあ、でも、こういうものなのかな。

とりあえず、1日2回、おしりに抗生物質の注射を打つように言われました。翌日から、病院通いです。

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翌日、消毒して、ガーゼをとりかえてもらったまではよかったんです。

それで、問題の注射。どう見たって、掃除のおばちゃんに見える看護婦さん。いきなりやる気まんまんで、「いくぞ!」の視線で、注射器構えてる。他にもちゃんと白衣を着た看護婦さんがいるのに、そのおばちゃんだけは、病院の青い服を着てる。

ダメダメ!まじで。僕はまだ、靴を脱ぎかけの不安定な姿勢で、ベッドに横になる前なのに、こんな状態でおしりに注射打たれたら、めちゃ動くはめになるよ。それをゼスチャーして言ったら、掃除のおばちゃん「怖がるな、大丈夫だ」って言って。

でも、「怖いよ、まじで、ホントに」。とても痛かった・・・。精神的に。

というわけで、しばらく、このおばちゃんや他の看護婦さんにも打ってもらってから、マンスーラでも注射を続けるということで、地元のマンスーラに帰りました。

今日も、打ちました。今週いっぱいは少なくとも、続けなさいということです。単なる「にきび」かと、思ったものが、こんな面倒くさいことになるとは、思いませんでした。今もまだ、僕のおしりには、彫刻刀で2センチちかく、彫ったような感じになっています。これで、痛くないのが、自分でも不思議なくらいです。

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ちょっと長くなりましたが、読んでくださってありがとうございます。

 

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