図書 「ゆとり教育が国を滅ぼす」      本の内容の画像(735KB)


著   者  小堀桂一郎(著者紹介へのリンク

出 版 社  株式会社 小学館文庫            

初版発行  2002年3月1日

電話販売  03−3230−5739(小学館)
        興味のある方は買って読んでください。
        (¥552+税)

ぜひ読んでほしい内容の、ほんの一部  
  
        

67ページ 第二章 ゆとり教育が出現するまで

筆者が直接経験した教育の中で信じられないほどの効果をあげる例に「そろばん塾」がある。
ここへ通うと、半年か一年でそれまで学校で身につけていた力の百倍の力をつけてくれるの
である。学校の成績にはほとんど関係なく、程度の差はあっても全員が学校で習った力の
百倍は身につけられる。

それどころか、暗算などという魔術のようなものまでできるようになるには驚嘆したものである。
それに近い原理が、算数の計算力でも成り立つことをこの実践例から確認し、落ちこぼれ問題
は教え方の問題である
、と確信したわけである。


176ページ 第五章 教科別にみる問題点

「数感覚」が養われなくなる

ではここで次頁の新学習指導要領における算数・数学の変更点を見てもらいたい。
私たち算数・数学の教育を現場でやっている者から見ると、今回の指導要領の改訂ほど
「どうなっているのか?」と首をかしげざるを得ないものはない。
 その改訂のコンセプトのひとつは見ても分かる通り、「計算の負担の軽減・電卓の活用」で
ある。まず、「桁数の大きい計算は足し算でも、かけ算でも、割り算でもやめる」ということ。
今でさえ、「がまんして根気よくやる力」が日常から抜け落ちてしまい、社会でのその価値観
自体が危うくなってきているなか、それに合わせる形で「楽なほう」に流していいものだろうか。
 新学力観を立ち上げた教育課程審議会のある委員が、「このIT時代に、手計算でやる必要
はない。どんどん電卓を使えばいい。それを使いこなせるほうが大事で、あまった時間をもっと
生産的なことに回すようにしなければ・・・」といったそうである。これは正論だろうか?
 小学校に限って言えば、否である。子どもたちに計算をさせていて感じることは「単なる
アルゴリズム(あるタイプの一般的な問題が与えられたとき、その解を求める計算の手順の
こと)の反復練習ではない」ということである。集中力の訓練であり、ある意味での、自分にも
分かる達成感の確認なのである。また、そこには日常では得られない「辛抱して行うスキル」も
含まれている。

 では、小学校で行われなくなった桁数の多い計算はどこで行うのだろうか。
中学校でやるのか?答えは否である。
では、その結果どんなことが生まれてくる可能性があるかというと、計算をしていて
まだ計算は終わっていないのに途中の段階で終えて、「答え」としてしまう子どもが増える
だろう。それを指摘すると、「学校ではここまででいいと書いてある」と、正解だと主張する
だろう。アルゴリズムの意味分かったり、習熟する以前に電卓を使用することで楽にやれることが
強化され、おそらく間違っていても楽なほうを選ぶようになり、たとえな間違えたとしても
「僕が間違えたんじゃない。電卓のせいだ。」となりはしないか。
 ところで、今回の指導要領の改訂で電卓のこれほどの積極的導入を考えざるを得なくなった
のは、「時間数の一律削減」が原因にある。ちなみに、イギリスでは何年か前に小学校に
電卓を導入した結果、大幅な計算力低下を招いたことからすぐに小学校段階での電卓の導入を
取りやめた。

この話を文部科学者はどう受け止めるのだろうか。フィールズ賞受賞者の数学者、
小平邦彦先生は著書の「数学の学び方」(岩波新書)の中で、「計算練習によって数学の
感覚も磨かれる
」と述べている。
中学・高校でそういった「数感覚」が培われていない悪影響が出るのは必至ではないか。

この頁のトップに戻る     育英トップに戻る    図書一覧に戻る

























著者紹介

小堀桂一郎 
    昭和8年生まれ

    東京大学文学部独文科卒業
    昭和43年博士課程終了、文学博士。
    東京大学教授を経て、現在、明星大学教授。

    「宰相すずき貫太郎」(文春文庫)
    「再検証 東京裁判」(PHP研究所)
        など著書多数

この頁のトップに戻る     育英トップに戻る










図書 「ゆとり教育が国を滅ぼす」      本の内容の画像(735KB)


著   者  小堀桂一郎(著者紹介へのリンク

出 版 社  株式会社 小学館文庫            

初版発行  2002年3月1日

電話販売  03−3230−5739(小学館)
        興味のある方は買って読んでください。
        (¥552+税)