twelve leaves
leaf#4

★回を重ねるごとにどんどん加速してきた(素敵にとっ散らかってきた!)寅蔵プロ ジェクト。今回の『leaf♯4』は、バリトンサックス&ベース&ドラムスというシンプルな3人編成による初のジャム・バンドだ。ちなみにこのジャムという言葉、ここ数年でけっこう微妙なアヤを含むようになってしまった気がする。もちろん本来は「最低限のお約束のもとプレイヤー同士が自由にせめぎ合うセッション形式」を指すわだけど、なかには反射的に「長ったらしい フリー・インプロヴィゼーション(即興演奏)が延々と続く難解音楽」をイメージしてしまう人もいるじゃないだろうか。たしかに最近、アシッド系ジャズ〜ロック周 辺で“ジャム復権”の流れが強まるなかで、「演ってる人はメチャメチャ気持ちよさそうだけど聴いてる側はちょっとシンドイ」というバンドがけっこう少なくなかったりもする。そういうスノビッシュでインテリジェンス過剰なスタイルを崩し、いかにポップなジャムを料理できるか。今回の『秀峰乃寅』ライブから伝わってくるのは、まずそのストレートな意識だろう。 最初に大まかな構成とテーマだけを決めておき、後はプレイヤー3人のインタープレイで音楽を生成させていくという方法論においては、実は今回の寅蔵はかなりきっ ちりジャム・バンドの基本を踏襲している。ただそのいっぽうで、ダラダラしたインプロヴィゼーションには決して流れていないところがミソ。要所ごとにきっちりキャッチーなリフを浮上させて、聴き手をぐいぐいジャムの中に引きずり込んでしまう。その手際というか兼ねあいが、絶妙に刺激的なのだ。たとえば、オープニング。まずバリトンサックスの太い破裂音が静寂を破り、ゆっくりと低音域をさまよいながら、ゆっくりとフレーズの形をとりはじめるところもそうだ。その様子をうかがっていたベースとドラムスが、黒光りするリフとタイトなビー トを刻み出す。まるで『ウルトラQ』のオープニングロールみたいに(!)、カオスのなかから次第に浮上してきた楽曲の輪郭が、いつのまにか再び混沌へと潜りこんでいくイメージ。大きく6つのパートで構成された約30分のセッションで繰りかえし提示される風景をあえて言葉にすると、こんな感じだろうか。ヴォーカル用のエフェクターを駆使してパートごとにさまざまな音色で吹き分けられたバリトンサックスが、その混沌に独特の色彩感を加えている。おなじみの「はぐれ雲」から引用したフレーズなどを挟んで、駆り立てられるようにアッパーなフレー ズを吹きまくるエンディングまで。そこで展開されているのは、まさにジャム・セッションが本来持っているはずのスリリングさだ。
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