twelve leaves
leaf#3

──寅蔵君、JUPITER'S POP BAND(JPB)はライフワークだってずっと言ってるじゃない。ほかのメンバー2人とはどうやって出会ったの?
寅蔵 話すとけっこう長いんだけどさ。もともと俺、学生時代にバイトしながらパラ ディアムっていうホーンバンドにいたじゃない。一時期そこのホーンセクションで、 元有頂天のケラさんがやってたロングバケーションっていうバンドも手伝ってたん だよね。そこでベースを弾いてたのがムーさん(ナカムラテツオ)で。
──じゃあ、最初の出会いはロンバケだったんだ。
寅蔵 そう。で、その後パラディアムは解散して、俺を含めてホーンセクション数人 がそのままビンゴボンゴっていう、ラテンロックバンドに参加したでしょ。そこに三 上(武志)さんがいたんだよね。
──なるほど。ビンゴボンゴでは、どのぐらい活動してたんだっけ?
寅蔵 3年ぐらいかな。真心ブラザーズにも関わりはじめてた95年の暮れ頃には、いろいろあってビンゴボンゴを脱退して。それで一人になっていろいろ考えたわけさ。 これから俺どうしようかなって。そのとき頭をよぎったのが、高校で習った「鶏口となるも牛後となるなかれ」って言葉で(笑)。やっぱり男はそうやって生きていかな きゃイカンだろうと。それじゃあサックスメインのインストバンドを作ろうと。
──分かりやすいなあ(笑)。
寅蔵 分かりやすいんだよ。それでまずムーさんと三上さんに声をかけて。もちろん プレイヤーとして一緒にやりたかったのもあるけど、とにかく人間的に好きだったんだよね。2人ともアニキみたいな感じで、俺みたいな生意気でワガママな奴でもけっこう好きに遊ばせてくれてたし。何より、俺がライブでいちばん出したい部分、何だろう、思いきりエネルギー放出してる感じ?そういう部分でもすごく波長が合った んだよね。最初は「俺、歌いますから」とかテキトーに嘘もつきつつ(笑)、1年ぐらいかけてゆっくりセッションを重ねて、デモテープも作ったんだよ。
──初ライブは97年7月だよね。ラウド・ラウンジ・ミュージックっていうコンセプトはその頃から頭にあったの?
寅蔵 コンセプトっていうほどの理屈じゃないけど、何か新しいジャンルを作りたいって気持ちはすごく強かった。当時、ラウンジとかモンドみたいなカテゴリーがけっこう言われてたじゃない。でも俺としては、もっと破壊的な要素がバリバリ入ったインストがやりたかったんだよね。思いきりブッ壊れたB級サントラバンドっていうか。じゃあ、とりあえず勝手にラウドなラウンジ・ミュージックって言っとけと。
──JPBのそういう部分は、現在までずっと一貫してるよね。
寅蔵 変わってないと思うし、まだまだって気もする。もっと言っちゃえばさ、俺の中ではレッド・ツェッペリンみたいなバンドを作りたかったのよ。ほら、ツェッペリ ンって、究極のインストバンドって言うかさ。リフとかリズムがとにかくカッコよくて、歌なんか歌詞の意味わかんないからメロディー楽器として聴いてたし(笑)。
──たしかに、すごい“カタマリ感”あるよね。
寅蔵 そうでしょ。誰かがカッコいいんじゃなくて、全体としてのバンド感でカッコいいっていうね。そういうスタンスは、オリジナルメンバー3人には共通してる。ま あ実際には、なかなか実現しきれてない部分もあるんだけど。
──ちなみに寅蔵君は、その中ではロバート・プラント的なポジションなわけ?それともジミー・ペイジなの?
寅蔵 やっぱりロバート・プラントでしょ。JPBの中では。とりあえずシャウトする だけでもカッコイイっていう意味では(笑)。
──裏を返せば、それだけムーさん&三上さんが作る“土台”を信頼してると。
寅蔵 うん。特にライブが始まっちゃうとそうだね。2人とも、俺がどんな方向に走っちゃっても、とにかく成立させてやろうって意識がある人たちだから。だから俺は、その手の平の上で好きなように吹ける。暴れすぎて落っこちそうになったら、手の平ごとスッと移動させてくれるし。
──今回、『leaf♯3』のライブをJPBでやってみてどうだった?
寅蔵 とりあえず、JPBの最新メニューを出しきれた満足感はあるかな。2部構成で12曲、セカンドアルバム用に録音してある楽曲はほとんど演奏したしね。これを聴いて もらえれば、今のJPBがどういうものかはかなり分かる。ムーさんが書いた「バビロンの男」と「MOKKORI GONG」っていう人気ナンバーも入ってるし。「REFLECTING SKIN」もそうだけどムーさんの曲って、俺には書けない大人っぽさみたいなものがあるんだよね。言葉ではうまく説明できないんだけど。
──新曲の「DO YOU REMEMBER DISCO?」もすごく受けてたね。この曲は、三上さんの ギターが素晴らしかった。
寅蔵 あのカッティングは鋭かったでしょ。彼、もろディスコ世代だし(笑)。ギター のかっこいいところが分かってる人だからね。ヘンな話、ほかのバンドを見に行っても三上さんぐらい俺をグッとさせるギタリストっていない。あの人のギターは、泣きもするし吠えもするし、とにかくエモーショナルで人間的なんだよ。ソロを聴くたびに、この人と一緒にできてホントによかったと思うしさ。
──でも、同じことは、寅蔵のサックスにも感じるけどね。とにかく隙間という隙間を自分の音で埋めつくしてやろうという、そういう衝動がつねにあって。
寅蔵 それはほら、空間恐怖症だから、俺。ていうか、単なる貧乏性かも。どうせ時間は限られてるんだから、なるべくたくさん音出しとけみたいなさ。貧乏性のシーツ・オブ・サウンド(笑)。何だろう、あんまり整理されてる感じは嫌なんだよね。
──それもまた、JPBの個性になってる。
寅蔵 うん。今回はドラマーの山際君がサポートだったけど、この3人さえ揃ってれば、どうやったってJPBの音楽になるんだよね。逆に言えば、3人のうち一人でもいな くなった時点で、JPBは終わり。みんなが生きてる間は何があっても続くと。
──そうか。バンドって、いいよね(笑)。
寅蔵 さっきのフレーズ、太文字で書いといてね(笑)。
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