twelve leaves
leaf#12

★1年で12通りのライブ表現を展開する宇田川寅蔵プロジェクト“12 LEAVES”。その最後を飾る「leaf#12」のタイトルは、ずばり『宇田川 寅蔵』だった。 ★インプロヴィゼーション主体のジャム・セッションからコンピュータを駆使した人工音との共演、ピアノとのメロウで優雅なデュオから多重録音による“一人サック ス 楽団”まで。2004年の1年間を通じて、さまざまな共演者と新しい可能性を模索してきた寅蔵だが、ラストはやはり直球勝負。あくまでも一介のサックス奏者として、自分自身をそのままオーディエンスに差し出すような生々しいソロ・パフォーマンスを持ってきたのだろう。★ライブにあたっては、あらかじめコンピュータにプログラムされたシーケンス・ サウンドも導入されている。だが、それはあくまで演奏を成立させる最低限のサポート。電子音によるミニマル・ミュージックと生演奏の共存を試みた『leaf#2/ELECTORALOPITHECUS』や『leaf#6/NEW ELECTORALOPITHECUS』などの過去プロジェクトとは違って、むしろ今回はプレイヤーとしての“肉体性”に主眼が置かれている印象が強い。★これはミュージシャンにとっては、実はかなり思い切りのいる企画だと言るだろう。と言うのも、ソロ演奏というのは演奏者としての基礎体力レベルだけでなく、 音楽的イマジネーションの豊富さ/貧困さまではっきりと示してしまうからだ。それをあえてやってしまうところに、寅蔵らしい潔さ/無鉄砲さを感じる。★オープニングの「SASURAI」から「IMPROVISATION」へと至る前半では、無機質な リフレインを大胆に取り入れつつ、フリージャズ的な即興演奏を存分に披露。「MAHORABA」〜「はぐれ雲」と続く後半パートでは、バリ島のガムラン音楽や80年代テクノなど多様なサンプリング・サウンドを織り込みつつ、ファンキーでメロディアスな定番ナンバーを緻密に構成された演奏できっちりポップに聴かせてみせる。どこまで奔放なアドリブ・フレージングができるのか、一つの楽曲をどれぐらい多様な音色で染め分けられるのか、いかに自在なリズム展開ができるのか。ここには、6曲およそ30分のパフォーマンスを通じてあらかたの手札をさらし、いわば裸一貫で勝負を仕掛けてくる宇田川寅蔵がいる。★であれば、ことさら難しく考える必要はない。演奏にそっと耳を澄ませていれば、やがてサックス・プレイヤー寅蔵の存在そのものが、各リスナーの中でゆっくり結像してくるはずだ。その意味で、寅蔵の年間プロジェクト“12 LEAVES”のラストとして、これ以上ふさわしい試みはちょっと思い付かない。
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