twelve leaves
leaf#1

★あえてテーマを抽出するなら、「アコースティック・グルーヴ」だろうか。1年で12通りのライブ表現を展開する寅蔵の連続プロジェクト『twelve leaves』。共演者にサックス/クラリネット、ウッドベース、パーカッションの3人を迎えた『leaf#1』は、サックス奏者・寅蔵の“肉声”がストレートに伝わってくる、レアなセッションになっている。今回の特長は、すべての楽曲がアンプラグドで演奏されていることだ。エフェクターもまったく使われていない。収録4曲はどれもJUPITER'S POP BAND(JPB) のライブでお馴染みの定番ナンバーだが、電子的な装飾を削ぎ落とされて、まるで違 うイメージに生まれかわっている。とりわけ刺激的なのは、寅蔵の吹くサックスが3人の楽器が紡ぎ出す“裸の音”と響き合いながら、よりリアルな息づかいで迫ってくることだろう。楽器どうしの親密 な会話から、繊細でオーガニックな緊張感が浮かび上がる、そんな空気に溢れているのだ。全力で疾走でブロウする寅蔵の歌心も、ぐいぐいオーディエンスの耳に飛び込 んでくる。ラウドでアッパーなJPBアレンジとはまた違った、プレーンな“音”の魅力を、きっと感じとれるはずだ。
★曲目解説 01『SLOW BOAT TO JAMAICA』 2本のテナー・サックスが怪しくうねるように絡み合うオープニング曲。寅蔵が低く 太く空気を震わせるようなブロウでまずソロをとり、乾いたテイストの安藤がそれを追いかける。そのせめぎ合いが何ともスリリングだ。JPBではレゲエ・アレンジで演 奏されている。 02『正月はキューバ』で Marc Ribot『The Prosthetic Cubans』からインスピレーションを得たという、寅蔵 流のフェイク・キューバン。ダンス・ミュージックのイディオムを手当たり次第に引用しながら、しっかり独自のグルーヴ感を成立させる楽曲センスが存分に発揮されて いる。 03『はぐれ雲』 空間恐怖症を自称する寅蔵の、すべてを塗りつぶすかのようなアドリブ・ソロが何と言っても白眉。導入部およびエンディングで展開されるフルート(寅蔵)とクラリネッ ト(アンドウ)の絶妙な木管アンサンブルも、アコースティック編成バンドならではの聴きどころだ。 04『MAHORABA』 ペンタトニック(5音音階)を用いたこの楽曲は、JPBのライブでも定番中の定番。パーカッションソロからアシッド風のテーマに続き、サックス(アンドウ)〜ベース〜サックス(寅蔵)が自在にアドリブを繰り広げる。時にせめぎ合い、時に合流するソロ演奏の緊張感が 圧巻だ。
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