落語と女子大生


 
 廓を舞台にした落語「錦の袈裟」
 別名、「ちん輪」。 
活きのいい江戸っ子連中が吉原に繰り出し、見栄を張った趣向で女の子にもてまくらんと珍騒動を巻き起こす。
バレ話(下がかった噺)の傑作だと俺は思っている。
三遊亭圓楽でこれを聞き、その華麗で艶っぽい演出に魅了され、
何とか自分でも演ってみたいと、覚えた噺だ。

先日、店がはねたあと、スタッフを座らせて無理やり聞いてもらった。
ただ、14分間我慢させるだけではつまらないので、メモ用紙を渡して、
「もしもわからない言葉があったら、聞きながら書きとめてくれ」るように頼んでおいた。
20歳そこそこの女子大生が、仕事の疲れをひたかくし、神妙なおももちで見つめている。
気の毒に思いつつも、ここはひとつ熱演を と 枕をふりはじめた。
一席終えて、感想を聞く。
メモを見ると、まあ、書いてあるは書いてあるは・・
これじゃ、うける訳ないよなーと、芸のつたなさを棚に上げて、考えこんだ。
以下、2人の、メモ。

《判らなかったことば》
A子ちゃん
  • くるわ
  • よしわら
  • ひじりめん ながじゅばん
  • うこんもめん
  • しちぼつ(質物の間違い)
  • おじょろーかい
  • かじ きとう
  • けさ(袈裟の意らしい)
  • ろーかとんび
B子ちゃん
  • ばいしゅんぼうしほう
  • よしわら
  • ひじりめん
  • 「なかにいくんだ」
  • どじあつかい
  • うこんもめん
  • しちもつ
  • おじょろーかい
  • わっぱ
  • すもうじんく
  • おこしばん
  • よいのうち
  • つぎのま
  • わ  (輪の意か)

 あえて、ひらがな表記のままにしておきます。
 落ちにつながるキーワードが、ことごとく理解されていない!
俺の口調の未熟さが痛切にあらわれている!
最後に笑って見せたのは、ぼくへの思いやりだったみたい。

そんなわけで、今の噺家さん、大変だな。
だけど、江戸情緒たっぷりの落語、
なんとかこれからも、生きつづけてほしいと、心から念じます。
                      合掌
PS・スタッフの皆さん、また聞いてくださいませませ<m(__)m>