よわってしまうお客さん〜枝豆編


 木枯らしが吹くこの時期に 初めて来たお客さんから
 「枝豆はありませんか」
と尋ねられると ちょっぴりがっかりする。

チェーン系の飲み屋や、ポリシーのない料理屋では、年中メニューに枝豆が載っているから、うちにもあると思って聞いてくるのだろう。
悪気があって言っているのではない。それはわかっている。
よもや、枝豆が年中採れるものだとは思ってやしまい。
最近は 冷凍素材もうまくできているので、そういうものを買ってくればよいのだろうけど、季節外れの食材を置くのはどうかと思う。
そもそも その手の冷凍ものは なるべく使いたくないのだ。
すべての冷凍素材を否定するつもりはないけれど。

「今」美味いものを、こころを込めて調理する
 ━それが基本姿勢である。
百歩ゆずって、冷凍室に枝豆をいれておいたとしよう。
注文があってから茹ではじめるわけだけれど、そもそも 枝豆のステイタスって、おおくは「とりあえず」のものだから、してみればすぐに提供されなければならないわけで、茹でるために10分以上待たせることは、彼らの潜在欲求に反することになりはしないか?
(湯が沸くのに5分かかるとして)
ビール一杯飲み終わりました、枝豆はまだ出て来ません、
じゃいけないのだ。
こういうところ、ほんと、神経使っちゃいます。
レンジでチン、などは言語道断、いたってまずい。
どのみち うまくはいかないのである。
この時期、「茹でたて枝豆」
などとメニューに大書して、いい気になっている飲み屋があるが、笑止千万。

いま 思いついた。
だから、どうしても枝豆、という御仁、
冷凍の枝豆があったら、茹でてくれ。時間かかってもいいから」
そんなふうに、こっそり注文してみてください。

冷凍庫が いまこの世から消えたら、
サービス業の何割がつぶれていくだろう?
いっそのこと、冷凍食品ばかりを盗み出しては、片っ端から溶かしてあるく凄い泥棒が現れればいいのに。
「解凍ルパン」って名前で・・