2001年6月24日 11:00開演
星組東京特別公演『イーハトーヴ 夢 −宮沢賢治「銀河鉄道の夜」−』
於 日本青年館大ホール

「やっぱりミュージカルって脚本だよね」
――宝塚と外部のお芝居を見比べて
しょっちゅう嘆きつぶやいていたこの言葉を、
宝塚に向かっていい意味で使うことができようとは…!(笑)
こんな演出家がいれば、宝塚の将来も暗くはないと思いました(*^ ^*)
ありがとう、藤井大介先生!

ストーリーは宮沢賢治の、妹トシとのつながりを主とした生涯と
彼の名作「銀河鉄道の夜」をうまく重ね合わせて描いた世界です。
「永訣の朝」「雨ニモ負ケズ」も朗読されたりして、
賢治好きとしてはけっこう嬉しい。
狂言回しとして
銀河鉄道の車掌さん(雪路歌帆)とその助手(陽月華)が大活躍してるのも、
ちょっと素敵な作り方です☆
(そうそう、これから観に行く方に一言アドバイス。
必ず開演5分前には席に着いていてくださ〜い! 
二幕の開演前も同じく5分前には着席のこと。)
全体的に、歌える人には歌ってもらい、
踊れる人には踊ってもらう、という分別(?)がしっかりしているため、
「が、がんばれ!」とドキドキするシーンが少なかった(笑)。
とても素直に作品世界に入り、笑ったり泣いたりすることができました。

演出的にほとんど文句ないんだけど
(「少しも早く」とか言わないしね(笑))、 一箇所だけ。

「ケンタウルス祭の夜」のシーン、祭りの踊りが…
…なぜ、なぜサンバなの!?(笑)
「銀河鉄道の夜」の持つ、とても透き通った世界でずっと来ているのに、
どうしてここで、サンバ?
よりによって、サンバ?
突然オレンジ色の羽根をつけたいかにもサンバなお衣装が目に入ったときには、
ちょっと唖然としてしまいました(笑)。

しかも、そのシーンだけショーとして見せるんならまだいい。
カンパネルラ役のろかちゃん(椿火呂花…この呼び名については後ほど)、
ザネリ役のレオンくん(柚希礼音)、ジョバンニ役のねったん(夢輝のあ)が
熱く歌い踊ってババーンとポーズを決め、 暗転か? と思いきや、
ザネリ、いきなりジョバンニをこづき始めます(笑)
「カンパネルラは俺たちと一緒にからすうりを流しに行くんだ」
みたいなこと言って。
そしてそれまで堂々としていたねったん、
いきなりジョバンニに戻り、おどおどと…(笑)
――つまり、さっきまで踊ってたのは、ジョバンニであり、
ザネリであり、カンパネルラだったのか!!!
ねったん、とても朗々と歌っていたのに!!!!!(笑)

ああそういえば、もう一箇所そんなところが。
鳥捕りのくじょらさん(九城彬)が鳥捕りをしているシーン。
こんど卒業してしまうくじょらさんの最後(?)の見せ場なんだろうなあ、と
とても素敵なんですが、
そのデネブ達とのダンスが妙に官能的。
それはそれでとても素敵なんですが、
全体のバランスの中で、なぜ…? と思う気持ちは隠せなかったです(笑)。

ここさえ違っていれば、
今年前半期最高のお話になったこと間違いなしなのに…と、
雅壱氏と私は非常に悔しがりました(爆)

ところで。
今回の作品を観て、私たちは『銀河鉄道の夜』に対するイメージが
ちょっと変わりました(笑)。

最初はジョバンニがカンパネルラを想って歌う歌。
「それって…友情の範囲を超えるんでは…?」
と思わせてしまう曲だったの(笑)。
「いや、そこまでカンパネルラカンパネルラ言わなくても…」
と思っちゃうほど熱く歌われていて。

それに対するカンパネルラ、
品良くもの静かに微笑みつつ、
ザネリ達とからすうりを流しに行くかと思えば、
一人残ってジョバンニに「天気輪の塔で待ってて」と誘惑(笑)。
実は案外計算高いのではないかと思えます(笑)。

ジョバンニをいじめまくるザネリは、
もうこれは「好きな子をいじめちゃう」タイプの典型ですね。
実はジョバンニが好きなカンパネルラに対して
ものすごい嫉妬の炎を燃やしている(笑)。
そして二人を引き離すためにいろいろといじわるを(爆)。
それが故に、あの事故を巻き起こしてしまうわけです。たいへん。

とても楽しい(?)三角関係ですが、
最後はやはりカンパネルラが勝利者だ、ということで落ちつきました(笑)。
カンパネルラは最後死んでしまいますが、
そのラストのモノローグで(もう、ちゃんとした台詞忘れた)
「これから君が会う人はみんなカンパネルラだ」みたいな意識を
植え付けていってしまいます。
その後ジョバンニは悔恨にくずおれているザネリの手を取り、
ザネリはジョバンニにすがりつくけれども、
互いの心からはカンパネルラが消えることはないでしょう(笑)。

…おかしいなあ、原作を読んだときには(しかも何度か読んでるけれど)、
一度もそんな風に思ったことないのに(^ ^;;

原作、といえば。原作と同じで嬉しかったりしたシーンをいくつか。

1) 妹トシの永訣のシーン、
それまでずっと共通語バリバリで話してるのに
「あめゆじゅとてちてけんじゃ」はどうするのかしら?
と思っていたら、そこだけはイキママでした(笑)。
そりゃあ、そのまま言わなきゃ意味ないものね。

2)ジョバンニがお母さんにパンと角砂糖を買って帰ったけれど
ミルクが届いていなかったためにまた家を出ようとしたシーン、
お母さんから「トマトでなにか作っていったから、おまえ先にお上がり」と
言われたあとのジョバンニの台詞、
「ではぼく食べよう」
――原作でのこの台詞が私のツボに入ってとても好きだったのですが、
ちゃんと使われていて自分一人感激!
もっと淡々と言ってもよかったけど(笑)

ああ、なんだか長くなってきたので、あとはキャストの感想を。

宮沢賢治/ジョバンニ:ねったん
テノールどころかハイバリトン的な深い声をしている彼女が、
ジョバンニとして、あんな高い声で喋るなんて!
ねったんも女の子だったのね(笑)
ジョバンニの時に手を下げたまま、とてとて走る姿がとても素敵でした(*^ ^*)

宮沢トシ/少女(タイタニックに乗り沈没して銀河鉄道に乗ってきた少女)
:えみくらちゃん(映美くらら)
役柄的にはとても合っていたし、可愛かった(*^ ^*)
でも「ヒロイン」としては
(しかも濃さが売りのリカちゃん(紫吹淳)の相手役としては)、どうだろう?
まだ分からない――というのも、 今回のはヒロインと言っても妹だし。
ダンスもほとんどなかったので「ダンスの月組」といわれても。
でもでも、とても可愛かったので、応援しま〜す(*^ ^*)

カンパネルラ:ろかちゃん
一般的に「ゆうかちゃん」と呼ばれている椿火呂花さん。
今回のパンフレットで、「椿火 呂花」と書かれていたんですね。
しかもご丁寧に訂正の紙が挟まれている。
…こんなこと言われたら、もう愛称は「ろかちゃん」で決定でしょう(笑)
可哀相に。ろかちゃん(笑)。
――実は今回初めてちゃんと認識したろかちゃん。
ちょっとオサちゃん(春野寿美礼)に顔立ちが似てるかしら。
品のある端正なお顔だちに、物静かな微笑み。
そりゃあジョバンニ、惹かれちゃうでしょう(笑)
私も惹かれて、その後日比谷に行ったとき、思わずポートを買っちゃいました。
これから宙組に来るんだよね。楽しみです〜(*^ ^*)

ザネリ:レオンくん
背が高いだけでなくガタイもいいのでとても目立つ(*^ ^*)
そしてあのダンス。
ザネリらしい、ちょっとすねた感じもグッド☆
今後が本当に楽しみな研3?生。

ケンタウルス祭のシーンで踊ってる娘役さんに一人、とても可愛い子が
いたのですが、お名前が分からない…。

凄く長くなりましたが、もっと書きたいこともあった気がする…。

チケットも、平日はあるっぽいです。今週金曜までやってるからオススメ。
私は暇がないから行けないけど(お金もないけど)。
でもビデオは買っちゃうかも(*^ ^*)


fin