池田理代子大先生は偉大ですね。
私を含む日本人の多くは
フランス革命を「ベルサイユのばら」で覚えているわけですよ。
いやそれはもう別に宝塚ファンでなくとも。
(そういえば学生の頃、「ベルばら」で歴史ファンになって
西洋史を勉強していた後輩の男の子がいたなあ。元気かしらん)
「首飾り事件」も知っていれば、
「バスティーユ牢獄襲撃」も
「ヴァレンヌ逃亡事件」も知っているし、
あるいはアントワネットの髪が一晩で真っ白になってしまったことも
ベルばらによって知っているわけです。
そんな私たちが新作ミュージカル「M.A.」を観る。
キャストは誰? とまず思うわけですね。
マリー・アントワネットは、まあ! かなめさん(涼風真世)!
フェルゼンは、おお! バンビちゃん(井上芳雄)!
しかもなになに、ルイ16世は石川禅さんだし、
なんと高嶋兄がオルレアン公なんだ!!
山祐さん(山口祐一郎)も出てるし、なんて豪華キャスト!!
とすると、次。
オスカルは誰? と思いませんでしたか、そこのアナタ!
…いないから! オスカル架空のヒトだから!!
(爆)
いやあ、一瞬本気で考えた自分にまいりました。
ていうか、それだけ生きた人として描いた池田理代子大先生や
生きた人として演じてきたさまざまな皆さま
(あらあら、それこそかなめさんオスカルだったじゃないすか)が
すごかったということよね。
でも本当にこの時代といえば「ベルばら」というのが
私の脳内にインプットされているらしく、
帝劇に向かう道すがらは
ずっと「♪シャンシャン鈴の音 軽やかに〜」と歌い続け、
観ている間も
「ああ、ジャンヌがいない」とか「ロザリーじゃないんだ」とか
思ったりしておりました。
でも絶対そう思ったのは私だけじゃないハズ(*>_<*)。
さてさて、そんなこんなで
ある意味「ベルばら」と戦わなければならない「M.A.」。
でもこちらも天下の遠藤周作原作
(てか、昔読んだことあるはず。持ってるはず…)、
そしてミヒャエル・クンツェ&シルベスタ・リーヴァイコンビ。
さすがでした〜!
(ふとリーヴァイさんと撮った写真のことを思い出した(笑)。
あれは05年4月8日のこと…あれからもう1年半か…遠い…)
東宝エリザでもそうなんだけど、
タイトルロールだからといって容赦ないのよね、この作品も。
シシィもエゴイストだのなんだの言われてましたが、
この冒頭のアントワネット様もかなりのヒドイ人。
私の知ってるアントワネット様(inベルばら)は
ただ無知で無邪気なだけであって、
決して人にシャンパンを頭からかけたりなぞしなかったのですが(爆)、
これって史実なの…?
「パンがなければお菓子を食べればいい」の台詞は
周りの皆さまが一斉に歌ってたので、
ああそういうことにしたのか、と思ったものですが。
ていうか、そんな酷い人でもフェルゼンは愛していたのか…とね、
実際ちょっと思ってしまったですね。
できればちょっとでいいからアントワネットとフェルゼンが
お互いを想い合うまでのくだりを描いてほしかったなあ。
登場からまるで若いツバ…ごほんごほん、えーと、
アントワネット様をね、エスコートしててね、
ハンス・アクセル・フォン・フェルゼンくん
(そういえば「フォン」とつけられてなかったね)がね、
でもアントワネット様の行状に一人眉をひそめてるわけですよ。
この人は普通に女王様の行状を快く思っていないだけではないかとも
とれるかなと。
私たちはフェルゼンはアントワネットの愛人であることを
知っているから大丈夫だけど。
そして1幕は描き方としてもテンションとしても
もう一人のM.A.(ミュージカルアカデミーに非ズ)、
マルグリット・アルノー(新妻聖子)こそが主役でございました。
民衆の代表としての位置づけ、自由と平等と友愛を旗印につっ走る彼女。
いやもう彼女の歌とテンションでぐいぐい引っ張る引っ張る。
あれー、「マリー・アントワネット」だよねえ、タイトル、
と思い直すくらい。
でも2幕になって、フランス革命が進行してくると、
まさしくフランスの女王(とは言っていない。なぜなら王妃だから)
マリー・アントワネットの真骨頂。
あの気品と強さは、宝塚出身だからこそ、と思うのですがいかがでしょう。
素晴らしい王妃様でございました(*T_T*)。
ときどき
「フェルゼンは返しません。たとえ太陽が、西から昇ったとしても」とか、
「ワタクシは、フランスの女王なのですから」とか、
言ってほしくなっちゃったりもしたけど(>_<)。
でも、ベルサイユに主婦たちが押し寄せたときに
「国王のおそばにおります」(だったかな)と毅然と言い放つ姿とか、
息子のルイ・シャルルを革命軍に
取られそうになって
必死で抱き寄せる姿とか、
泣きましたよ。ええ。
なんか微妙にキャストの話になったので、
キャストごとの感想を行きましょうか。
マルグリット・アルノーの新妻聖子さん。
本当に1幕は彼女のテンションで引っ張ってましたね。
そしてけっこう背が低いのかな。
最初、少女役かと思っちゃった。
娼婦になったのでびっくりしたけど。
フェルゼンのバンビちゃん。
だいぶ声が柔らかくなったねえ(*^ ^*)。
そして何より、やっぱり王子様が似合う…(*>_<*)。
アントワネットの牢獄にやってきた瞬間の、
肩掛けマント姿があまりにもかっこよすぎて
思わず笑ってしまいましたよ、私(間違い)。
いやあでも本当に、その後ひざまづいたりしていても
そんな姿が似合う日本人男子なんてそうそういないでしょう。
カリオストロの山祐さん。
エリザで言ってみればルキーニのような狂言回し役。
冒頭、マントに包まれた腕を広げたとき、
「誰だ、このでかい人は!」と思ったら山祐さんでした(*>_<*)。
そして相変わらずイイ声でオールマルカート☆
さらにけっこう彼の動きはツボに入るのです。
あの必要以上に自信満々な動きが大好き(爆)。
ルイ16世の石川禅さん。
ホントーに「ベルばら」に出てくる人の良いルイそのものでしたね。
あの、腰の落ちっぷりというか、膝の曲がりっぷりというか、から。
でもそれこそベルサイユに主婦たちが押し寄せてきたとき、
逃げようとするアントワネットたちに対して
「私は残る!」と宣言したときなどは
国王としての毅然とした男らしさに震えました。
オルレアン公の高嶋政宏。
前情報として知っていたはずなのに、
あまりにも前衛的なお化粧をされていたので、
一瞬分かりませんでした。
そしていい感じに場を締めていくねえ。
前衛的と言えば、舞台装置。
前衛的な部分とクラシカルな部分がうまくミックスされていて
ものすごく面白かったです。
たぶん帝国劇場特有だと思われる二重の盆を逆回しにすることで
上手い効果を上げていたり、
ずーっとクラシカルななかに突然どこかのショーのような
きんきんな電飾をつけて
アントワネットの豪奢なパーティーを表してみたり。
最後のギロチンの扱いも、そう来るかー、という感じでした。
ちょっと話を戻して、キャストの話をもう少し。
なにげに上手いなと思ったのが、
ローアン大司教役の林アキラさん。
こちらも本当に「ベルばら」原作に出てくるローアン大司教にそっくり!
なので、あれ? ジャンヌは? って思っちゃうのよね(笑)。
なにげに人選や役作りでは
「ベルばら」を基準にしてたんじゃないかしら☆
期待していた音楽は、エリザ初見時ほどの衝撃はなかった、かな、正直。
日本語歌詞の付け方なのか、それとも音型のほうなのか、
歌の中に話されてる内容を追うだけで、
頭の中に残っていかなかった。
ちょっと素敵なメロディラインや
同じフレーズの上手い使い方とかはそこかしこに見られたのだけどね。
…年を取ったからだけだったらどうしよう(^ ^;;。
でも、全体的に重厚で、とても素晴らしい舞台でした。
ところどころ狂言回しをしているボーマルシェ(山路和弘)のお遊びや
カリオストロの客席いじりなどもあって笑いも取りつつ。
ーー再演では、
こっそりオスカルも出してくれると嬉しいなあ(爆)。
fin
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