2006年1月8日 13:30開演
『 グランドホテル 』
於 東京国際フォーラム ホールC

  
むかしむかし、まだ私がタカラヅカを知らなかった頃、
月組で『グランドホテル』という作品があったそうです。
当時の公演を観た知り合いの方が、
「一番印象の残ってる作品」と話していたのがずっと心に残ってました。

その『グランドホテル』を、宝塚ではないけれども、上演すると聞いては、
やっぱりいても立ってもいられません。
とりあえず、チケットを取りました。
そして「リカちゃん(紫吹淳)の舞台を観たい」と言った母を連れて、
今日国際フォーラムに行ってきました。

果たして、…いい作品でした。
一つの高級ホテルに、たった一晩、たまたま集った人々の出会いと人生。
きっとトップスター制度のある宝塚とは
キャストの扱いなども違うだろうと思うのですが、
何人かいる主要キャスト一人一人が
しっかりとバックグラウンドを持って人生を生きている、
そんな群衆劇でした。

1928年のベルリン。
1929年に世界恐慌が起き、1933年にヒトラー政権が誕生する、
その直前の、一般市民には不満や不安が溜まりつつも、
まだ表向きは平和を享受している華やかな時代。
ある日のグランドホテルには、
何度も引退公演を行っているプリマ・バレリーナの
グルーシンスカヤ(前田美波里)、
彼女の付き人であり親友であるラファエラ(諏訪マリー)、
ハリウッドスターを夢見るタイピストの女の子・フレムシェン(紫吹淳)、
倒産寸前の会社社長・プライジング(田中健)が訪れ、
またグランドホテルに暮らすドクター・オッテルンシュラーグ(藤木孝)や
借金を重ねている名ばかりの貴族・ガイゲルン男爵(大澄賢也)、
そして妻の出産を控えて心配しているが仕事から手が離せない
フロント係のエリック(パク・トンハ)らがいる。
さらにそこに一人の男が来た。
その貧しそうな身なりを見て
支配人が宿泊拒否しようとしていたところを男爵が救う。
そのユダヤ人のオットー(小堺一機)は会計士だったが、
自分が余命幾ばくもないことを知って会社を辞め、
第二の人生を見つけるべくこのグランドホテルに来たという。
こうして縁もゆかりもない人々が、
この一晩このホテルで出会い、それぞれの人生を変えていくーー。

キャスト一人一人の感想を書きつつ、
この作品を振りかえってみたいと思います。

グルーシンスカヤの前田美波里。
彼女の舞台姿を見るのは私、実は初めてなのです。
いやもう何がびっくりしたって、…若さ!(爆)
しかも、バレエの基礎がしっかりできていたこと!
足こそ高く上げてはいなかったものの、
ポジションもちゃんと取ってるし、なによりトゥで立ちましたよ!
ていうか、デカい!(爆)
リカちゃんより高いんじゃないかしら。
それでもって、さらにトゥで立つもんだから本当に迫力が…(*>_<*)。
でも、大澄賢也相手に甘いラブシーンを繰り広げられるくらい
色気も乙女らしさも持っていて、さすが、と思いました。

ラファエラの諏訪マリーさん。
いやもう何がびっくりしたって、
「実はグルーシンスカヤを愛していた」という設定(爆)。
「彼女が私を頼ってくるのを待っていた…」という22年間。
そう来るか!

フレムシェンのリカちゃん。
本当に彼女の売りは「美脚」なんだなあと再認識(爆)しつつ、
でも「19歳」(爆)の女の子らしい可愛らしさがあふれていて
可愛いなあと(*^ ^*)。
でもスミマセン、ストッキングを脱ぎ捨てるシーンでは
さ、さすがにオペラを上げて見られませんでした…(*>_<*)。
(本当は見たかったけど、ちょっと周りの目を気にしてしまった(爆))

プライジングの田中健さん。
分かりやすくイヤなセクハラ社長を熱演。
もちろん共感できる役回りではないのですが、
でも本当に人生を感じさせました。

ドクター・オッテルンシュラーグの藤木孝さん。
作品の狂言回し的な立場なのですが彼もちょい狂気入って上手かったです。
ちょっと「ジキルとハイド」の加賀丈史のような印象。

ガイゲルン男爵の大澄賢也。
いやもう何がびっくりしたって、
彼はこんなに歌える人だったんだ…! ということ。
上手かったですよ。もちろん踊れるし。
どうしても彼って昔のイメージが強かったりしたのですが、
いいように年を取っていると感じたことが、
実は今回一番強い印象だったかも(*^ ^*)。
ただ、彼のイメージ的に、
当初前田美波里相手に
本心から愛を語っているとは思えなかったことが残念(爆)。
次のシーンになってようやく、
あ、あれは本当に愛しちゃってたんだ、と気づきました。ゴメンね。

エリックのパク・トンハ。
実は彼が一番美味しい役だったかもですね(*^ ^*)。
私は彼が奥さんから子供が無事生まれたと電話で聞いたときに
涙しました(*T_T*)。
ちょっとネタバレになってしまうのですが、
なくなる命があれば生まれる命もあって、
本当に人生はそれぞれにそれぞれなんだと感じられて。
東宝エリザのときなどにも見ているはずなのですが、
彼が二枚目さんなんだということをようやく認識いたしました。

オットーの小堺一機。
そうなんですよね、彼は本当は役者さんなんですよね。
思いも寄らなかった体の動きの敏捷さに、
そして芝居の間のうまさに感服しました(*^ ^*)。
実は一番のキーパーソンは彼なんだろうな〜と思っていたら、
やっぱり宝塚ではこの役を、
当時トップさんだった涼風真世さんがやってたそうですね☆

そのほかのアンサンブルの皆さんもめっちゃ上手かった
(とくにタンゴを踊ったお二人!)し、
とっても良質の舞台でございました。
やっぱりお芝居は脚本だね、演出だね(くどい?)。

fin