ヤエスFT−100雑感

DX−70を手放して以来、TS−570を移動用に使っていたが大きさの関係等で不満が有り、98年のハムフェアで見て以来、欲しいと思っていたヤエスのFT−100を99年の4月末に購入した。使ってみて気がついた所を書いてみたい。これから購入を考えている人の参考になれば幸いである。

長所
パネルが分離できる。パネル部を完全に取り外すことも可能。
別売のセパレートキットYK−100=7,800円が必要)

小型・軽量。(3Kg)

音が良い。受信音は聞きやすく疲れにくい気がする。

周波数のピッチが細かく可変出来る。10,25,50,100Hz等のようにSTEPスイッチで簡単に変えられる。
早送りしたい場合、セレクトツマミで10KHzのピッチで早送りでき、これはFMモード時はチャンネル切り換えとして使え便利。

DSP内蔵。ゼネラルカバー受信機でFM放送も聞ける。感度が良い。

NBのレベルを可変出来る。ノイズブランカの効くレベルを変えられる。

オールモード対応。SSB/CW/FM/AM/RTTY/パケット対応。

CWのブレークインで、フルブレークインが可能。(通常のセミブレークインも有り)

エレキー内蔵で50字までのメッセージを記憶できるメッセージキーヤーの機能が有る。

送信出力がモード・バンド毎に設定可能。(バンドはHF、50、144、430 モードはSSB/CWとFM/AM)

マイクが標準で付属。メーカーや機種によってはマイクが別売だが、最初から付いているので買い足す必要が無い。

セパレートキットを付けても反応が変わらない。(以前、DX−70でセパレートキットを付けたら電源のOFF時に押し続けないと切れないという、反応の鈍さが有ったが、これは問題無し)
 

短所
消費電流が多い。10W時でも9A程度も消費する。(50MHzのFMモードで確認時・定格は10Wタイプで12A)モービル機と考えた場合、一寸電気を食いすぎる。バッテリーの負担が大きい。これは他社(TS−570やIC−706も同じでは有るが..)
この件についてヤエスの説明は変調回路をAB級でも、Aに近い感じで使っており余裕を持たせた設計をしているので理解してほしいとのこと。
そう言われると、車なら燃費は良いけどトロい車と燃費はイマイチだけど加速の良い車を比べるようなものか? そうなると後者の方が私は好きだけど...
セパレートキットが6mの長さの物しか無く、車内に設置の場合は持て余す。もっと短いのも用意して欲しい。

設定での切り換えが多く、間違って違うモードの設定を押してしまうことが有る。頻繁に使う機能は独立したキーを割り当てて欲しい。(アンテナのチューン)逆に周波数のステップ切り換えなんて、そんなに頻繁に使う必要は無いと思うが...

バンドのアップ・ダウン、モード切り換え、ファンクション切り換えのスイッチが近接しており押し間違えやすい。
IC−706のように離す等の工夫が欲しい。

アンテナがHF〜50と144〜430の2系統のため、HFはホイップにして6mは八木等を使う等の使い分けが出来ない。
(これは他社も同様だが、TS−570はアンテナを切り換えられる...)

アンテナチューナーが無く、専用のアンテナ(ATAS−100)はバンドを大幅に変える場合にチューニングに時間が掛かり、壊れたのでは?と心配になるくらい遅い。オマケにメモリー機能が無いため毎回チューンを取りに行くので時間がムダ。
別売のアンテナチューナーも有り、こちらは普通に使えるそうだが..

送信していると、すぐにファンが運転する。ハイパワー機を10W運用でも関係無しのため、温度を感知して運転するような工夫が有っても良いと思う。はっきり言って何も考えていない設計。

電源ケーブルは太いがヒューズボックスが大きく、バッテリーから直接電源を取ろうとする場合にヒューズボックスが邪魔になって引き込むのに苦労しそう。(ヒューズがガラス管ではなくブレード型でTS−570も同様だが、もっと小型のタイプのヒューズが有るので考慮して欲しかった)

プリアンプのON機能が無い。(IPOといってプリアンプの動作を止めて感度を下げる機能は有るが..)

IFシフトがツマミで簡単に出来ない? (IC−706やDX−70のように独立したツマミで簡単に調整出来ない。)

SWR警告表示が点きやすい。(HF〜50MHzを運用時に専用アンテナでない場合、SWR警告表示が点きやすく6mで実際にSWRを測定してみて1.5程度にも関わらず表示された。回り込み等が影響しているのか?)

アンテナケーブルやチューナー接続用のケーブルが邪魔。(設置場所によっては有効と思うが、見える場所に置いた場合にケーブルが見苦しい)  

本体とアンテナ・電源ケーブル
上からチューナー用、電源、HF〜50 MHz用、144/430MHz用のケーブルで、M型コネクターを使用
セパレートキット取り付けの様子
上はパネル側(未接続時)、下は本体側で各々ネジ止めする
電源ケーブル・左側がヒューズ部分で25Aのブレード型。上は初期は半田付けの線のみだがコネクターを付けた。中は本体の電源ケーブルと接続


これはパネルを取り付ける台? これを使うと、使わない時に完全にパネルを取り外しておける。 
 
結論
沢山の機能を小型な筐体に詰め込み、パネルも小さいため無理が有るのかもしれないが、モービルで使うには使い勝手が良くない。もう少し機能を減らしてでも使いやすさを優先して欲しかった気がする。どちらかというと長所よりも短所の方が目についてロクに使いもしないうちにガマンが出来なくなってしまった。個人的にはDX−70の使い勝手が気に入っていたのだが、あれはAMの変調が浅くて使い物にならなかったのがネックだった。IC−706に比べて、後発のワリには煮詰めが甘い気がする。FT−847と入れ換えた。使ってみて気がついたのだが、やはり無線機は面倒なメニュー設定よりもスイッチ一発の方が私の性格に合っているようだ。

なお、この機種は新スプリアス規格でJARDによる保証はされないので、令和4年以降は送信機としては、そのままでは使えなくなるので注意が必要。

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