車載無線機の回り込み対策顛末記

ことの発端は平成10年の12月末、1エリアのAMコンテストに出掛けた際にAMモードで送信するとハウリングというか自分の話す声がスピーカーから聞こえてくるという次第で、車の電源を切ると無くなるという状態。

それ以来、AM/SSBをやると回り込みが酷くて使い物にならずAM/SSBをやる際には車の電源を切ってバッテリー等の別電源を使わないとダメという状況だった。そのため、原因は絶対にオーデイオ周りだと思っていた。

過去の障害対策事例から見て、スピーカーコードに電波が乗って回り込んでいるものと思っていたが、’99年の4月から5月8日に掛けて重い腰を上げて調査・対策を実施。

調査としてスピーカーコードに電波が乗って回り込んでいるものと推測し、スピーカーコードを1本ずつスピーカーから外してみたが判らず。対策としてスピーカーコードにパソコンで使っているフェライトコアを付けてみたが効果無し。
フェライトコアは近所のパソコン屋で買ったものでパソコン用。周波数特性等は不明。分割で線の上から挟む物。

5月7日に秋葉原に行った際にトロイダルコアを購入し、8日に調査を実施した。
前のスピーカーはコードの先端がコネクターのためトロイダルコアを巻くのは難しそうと思って、取り敢えず後ろのドアのスピーカーコードにトロイダ ルコアを入れてみたが、同様に効果無し。トロイダルコアは#43という物で周波数は50MHz程度まではOKと言われて買ったもの。
CQ誌の広告によると10〜200MHzまでとのことで秋葉原の東京ラジオデパートの3Fで購入。

ダメか? と失望しながらも、念のため後ろのスピーカーから確認していくと音が出ていない。前のスピーカーも問題無し。
しかし相変わらず音は聞こえている。

音のする方を見ると某M社の無線用スピーカー(HSP-DR1という、スピーカー二個内蔵、ボリューム付き、アンプ内蔵で12V電源使用)だった。『幽霊の正体見たり枯れ尾花』である。まさに『灯台下暗し』...

何故、こんなことになったかというと以前乗っていたランサーのころから兆候が有ったのだが、丁度トランク基台にアースを取ったのと、当該ス ピーカーを使い始めた時期が同じ頃のため、基台にアースを取ったのが原因だろう程度に考え、回り込みも今ほど酷く無かったので気にもしていなかったせいで ある。しかも、それ以前はAM/SSBを 車でやったことが無かったので判らなかったという訳。
(当時は10W機でAMも4W程度だったが、現在は50W機 でAMでも12〜3Wは出せるので被害が大きい)

このスピーカーを使用したのは山形に行っていた’95年頃、車載のFM機を変えたのだが、これのスピーカーの音が悪く(スピーカーだけの問題でも無かったようだが...)聞き疲れするので、音の良いスピーカーを探していた頃に発売されたのがこれで、結構気に入って使っていたのだが、まさかこれが原因とは微塵も疑わなかった。

もともと、このスピーカーはデユアルバンド機のどちらのバンドが聞こえているのかを容易に見分けるための物で入力(出力?)の有った方のLEDが光るという仕掛付きで、ボリュームの有るものと無い物が有り前者を購入した。

原因が判明して対策? としてスピーカーの入力コードというか、無線機のスピーカー端子に接続されるコードにフェライトコアを挟んでみたが効果なし。試しにトロイダルコアに巻いてみたが効果無し。どうやらアンプで拾っているようであり、ボリュームを絞ると消える。

電源コード(シガーライター)の長さに原因が有るのかと思って短くしてみたが効果なし。別電源にしてみるという手も有ったが、たぶん効果は期待できないであろう。スピーカー端子に接続されるコードも伸ばしたり、丸めてみたりしてみたが変わり無し。たぶん入力系統かと思うが調べるのも億劫というか、スピーカーに対する怒りが先に立ってそこまで考えが回らなかった。

という訳で、スピーカーはアンプ無しの通常の物と交換してしまった。
しかし、これが判るまではオーデイオ(S社のMDデッキにAM/FM付き1DINサイズ)とスピーカー(前後のドア)あるいは、ラジオのアンテナ が後ろサイドのガラスにプリントされていてアンプが入っているとか聞いたので、それが影響しているのか?等と真剣に悩んでしまった。

失敗の原因は一人で確認したのと無線機から離れずにやっていたため、回り込みを起こしているスピーカーを特定出来なかったことと、オーデイオが原因との先入観が有ったためかと思われる。
何にしても一件落着で、これで安心してモービルハムが出来るというもの。

それにしても腹の虫が収まらないのは、このスピーカーのメーカー。
無線に関係の無いオーデイオメーカーであれば納得出来るが、アンテナを作っている無線関係のメーカーである。
所謂『シロート』では無いだけに、『こんな物を売りやがって!!』という思いが強い。早速、苦情を言った。

メーカーに状況を連絡して見解を聞いてみたが「ノイズが乗りやすい」ということと、「コンデンサーを入れてみては?」という回答だけだった。なお、このスピーカーシリーズにはボリウムの無い機種も有るので、そちらはどうなのかも聞いてみたが「確認したことは無い」という回答だった。しかし、これまでの調査結果から推測するとボリウムの有無は全く関係無いもようである。  

5月10日にスピーカー単体で調査をしてみたが、その結果は処置無しだった。
まず安定化電源で13.8Vを供給し、回り込みを確認するため手持ちのCBトランシーバー(ケンウッドのCBZ−11という技術基準適合機=合法CB機。AM電波で0.5W、8チャンネル、アンテナは短縮型のホイップ、電源は単三電池6本の9V)を使用。

ボリウムを最大にしてトランシーバーを送信状態にして近づけると回り込みが再現。
(ボリウムを絞ると低減し、絞り切った状態では何も聞こえなくなり問題無いがスピーカーとして使えないので無意味)次に入力側のケーブルにフエライトコア(パソコンで使っている分割型)を入れてみるが効果無し。

入力側のケーブルを基板から取り外したが変化無し。
(入力側のケーブルに電波が乗っているのではないことは先日の調査の際に長さを変えても変化が無いことからケーブルで無い事は見当が付いていたが...)

トランシーバーのアンテナを基板やケーブルに接近させて確認した結果、ボリウム周りでの回り込みが最大。
電源ケーブルには乗ってないようで変化無し。

以上のことから入力・出力ともケーブルに電波が乗っていることは考えにくい。ボリウムを下げると低減し、絞り切ると消える。ボリウム周りからの回り込みが最も酷い。5/15日にボリウム周りの配線を外して確認したが変化は無く原因は私には分からず。メーカーの話だとアンプのICに回り込んでいるのでは?とのことだったが、どうやらそうらしい気もする。
ICの近くで送信すると回り込みが最大となるからである。『コンデンサを入れて見ては』とのことで手持ちのコンデンサーを入れて確認している最中に誤ってパターン間をショートさせてしまいオシャカにしてしまった。
もう手の施しようが無いのと、修理に出す気力も無くなったのでゴミ箱行きと相成った。

上記のコンデンサ云々の件でメーカーに返信のメールを書いて、何処に入れれば良いのか聞いてみたが、それ以降無しのつぶてである。メールが届かなかったのか無視されたのか真相は不明だが、もう二度とこのメーカーの製品を買う気は無くなったので、あえて再確認のメールも書かなかった。(後にこのメーカーは倒産)

参考までにアンプを通さずにスピーカーだけで聞いてみたが能率が悪く実用にはならなかった。
結局、このスピーカーを使うのは諦め同じメーカーの外付けのスピーカー(77Φ)の端子に高音カット用のコンデンサを並列に接続してガマンした。(考えてみたら高い周波数をカットするのはコイルで、コンデンサーは低音のカットか?)

それにしても腹の立つのはメーカーの対応。カタログや説明書にはSSBやAMでは使えないとも、ノイズが乗りやすいとも書いてない。それなのに実際は障害が発生するのである。対策として、シールドをするとかコンデンサを入れる等の対応をするでもなく、注意書きも無い。製造物責任法で問題にされないものだろうか?? 欧米であれば訴訟になりかねないかもしれないというのに...

素人(無線に縁の無いメーカー)なら許しもするがアンテナを作っているメーカーである。
当然、その程度のノウハウを活かした製品を作ってくれているものと思っていただけに不信感は拭えない。
それでなくとも、このスピーカーが原因によって起きていた回り込みの原因調査や対策に多くの時間を割かねばならなかったのと、原因が判らずに悩んだことは思い出しても腹立たしい限りである。今後、このような製品が売られることが無いようにメーカーには願いたいものである。

その後、別のアンテナメーカーのスピーカーにコンデンサを追加してみたりしたが納得のいく結果は得られず、結局無線機メーカーのスピーカーに交換して満足のいく音質が得られた。考えてみれば随分と高い授業料を払ってしまったものである。
今でも思い出すと腹の虫が治まらず不機嫌になってしまう。


問題のM社のスピーカー(HSP−DR1)

蓋を外した状態で、右側のスピーカーケーブルには調査のため1本に1個のフエライトコアを入れている。
入力ケーブル(スピーカー端子に接続するもの)は調査のため取り外している。
画面上部に二つ見えるのがボリウムで、この付近で回り込みが最大となる。
(増幅用のICからの回り込みと思われるが断定は出来ず)


確認に使用したCBトランシーバー(ケンウッドCBZ−11)

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