Part1


ビバップとは?
 
客観的な事実は、1940年代初期にアメリカのニューヨークのハーレムにおいてチャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピー、セロニアス・モンクらによって確立されたブルースやスタンダードを演奏するためのスタイル、といったところであろうか。

ビバップの演奏スタイルは様式として確立されたものでなく、ビバップ期に活躍したプレーヤーの中でも個々人でそれぞれ方法論が異なっている。また、50年代でビバップが終わったという年表的な見解もあるが、実体は一部のプレーヤーが別のスタイルに移行したとみるのが妥当だろう。

ビバップで演奏される曲目はブルース、ジャズのスタンダードといわれる曲(もしくはそのコード進行を使ってテーマのみ作曲したバップオリジナル曲)である。プラットフォームを考慮すればモード系のオリジナル曲が多くなるモダンジャズという括りよりも、スイングジャズ期との連続性が高い。


 

チャーリー・パーカー 
  本来、音楽におけるジャンルとは、理想や価値観をある程度共有しているミュージシャンたちの音楽を総称したものといえるのではないか。そして、ビバップの規範はチャーリー・パーカーが発端になり、中心となって形作られたといえよう。

1940年代の前半、ハーレムの店でアフターアワーズのジャムセッションが行なわれていた時期にパーカーが現れ、当時のミュージシャン各々が持っていた音楽の理想をはるかに上回る次元で演奏した。これによりサックス以外の全ての楽器まで巻き込んでスタイルの変革が始まることになる。

パーカー1人がビバップを創ったというわけではないにしろ、即興におけるフレージングがあまりにも先進的であったため、それを学ぶためにサックスに限らず多くのパーカーフォロワーを生むこととなった。誰かがやっていることの中に自分の理想を凌駕している部分が含まれると、まずはそれを部分的にであっても制覇しないと次には進めない。このことがパーカーの音楽が受身である聴衆より、ミュージシャンに大きな影響を与えた所以であろう。

 

ビバップを演奏する 
 
私の知る限り有効なビバップを習得法というのは教えられていない。自分で残された録音から発見するしかないのだ。発見したものを効率良く習得しないと見えてこない世界があるので、正しく修練を積み上げないと次のステージへは到達できない。 しかし、残された録音に十分な情報があるので、準備さえ整っていれば耳でその意味を解読できるはずである。

ジャズは浮かんだフレーズを瞬時に音にする能力を求められる。何かフレーズが頭に浮かんだ瞬間に楽器を通じて音にすることとは、まさしく聴いた瞬間に音にできることと同じである。構造の理解と演奏は一体で、どちらか一方では成立しない。

創造力演奏の一体化というのは、クラシックが譜面どおり演奏することによって放棄した音楽本来の姿を取り戻しているといえる。作曲と演奏が分業ではなく、ブルースやスタンダードのコード進行において演奏者が自分の世界を表現する手段をビバップは獲得した。それを引き継ぐということは、録音を聴くことや語ることではなく、ビバップスタイルをマスターして自由に演奏し続けることに他ならない。


 


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