I xxxx you.(4)
[椎南(しいな)x薫(かおる)]
「頭・・いた・・・」
前夜、風呂上りにも関わらず真冬の夜の中、いつまでも部屋に戻らなかったせいか、俺の朝は頭痛から始まった。
頭痛だけじゃない。
体中がだるい。
声も変だし・・・ふわふわしてて、熱っぽい気がする。
随分久しぶりに感じる、こんな感覚。
ぼうっとする頭で、ゆっくりと階段を下りる。
眩暈がする感じが強くて、手すりに掴まりながらでないと危なくて歩けない。
「・・・母さん?」
何だか、家の中が妙に閑散としている。
居間のテーブルに書置きがあって、それには、夕方まで父さんと出かけて来る、って書いてあった。
普段、2人して一緒に出かけたりするから今日も気軽に出てったんだろうけど、今の俺にはショックだった。
大して広くもない家だけど、1人きりというのが、今はキツい。
誰かに、そばにいて欲しかったのに・・・。
・・・ううん。
誰かに、じゃない。
そばにいて欲しいのは、誰でもいいわけじゃない。
薬も飲まずに部屋に戻って、そのままベッドに潜り込む。
何も、考えたくない。
確実に上がった気がする熱の中、どんよりとした眠りに入った。
「・・う・・・ん・・・」
呼吸が苦しい。
体中が熱をもってて・・・鬱陶しい。
そのうち悪寒が始まった。
「椎、南・・・?」
激しい震えが治まった後は、熱病みたいな熱さが戻って来た。
おぼろげに感じた人の気配に、夢うつつで呼びかける。
ふわ、と額に乗せられた、ひんやりとした手の感触に、ほんの一瞬だけ意識がはっきりしたけれど、それもすぐに曖昧になった。
ぼんやりとした中で、たった一言。
そばにいるから、っていう誰かの声が聞こえた気がした。
夜遅くになって、ようやく少し落ち着いた。
まだ熱は高いみたいで、体にこもるような暑苦しさは消えてなかったけど、ずっと感じてた混沌さは消えてる。
「・・・気が付いた?」
少し身動きをした俺に、ずっとついててくれたらしい母さんが声をかけて来た。
「・・・今何時?」
「夜の11時半。少しは楽になって来た?」
「ん・・いつ帰って来たの?」
「夕方暗くなる少し前くらいかしら。お昼に電話したのに出ないから、椎南君に、様子見てって頼んだのよ。鍵、預けておいてよかったわ」
「え・・・椎南?」
「まだ下にいてくれてるのよ。もう遅いからって言ったんだけど、心配なんですって」
聞こえた声・・・椎南だったんだ・・・。
「目が覚めた事、知らせて来るわね。やきもきしてたから」
「あ・・・母さん」
「何?来てもらう?」
「・・・うん」
額に冷たいタオルを乗せてくれてから、母さんは下に降りて行った。