You're My World(2)
[椎南(しいな)x薫(かおる)]
約束通り、夜の9時過ぎに薫が来た。
真っ直ぐに俺の部屋に来て、しばらくビデオ観てたのはいいけど・・・。
「・・・何で寝るかなぁ・・・」
パジャマ姿で、クッションを枕にして2人してごろごろしながら観てたんだけど、ついさっきまでは普通に会話してた薫の返事がなくなったのに気が付いて、呼びかけながらこっちに顔を向けさせてみると、完全に寝入っていた。
「電気ついてるし、それよりまだ12時前だぜ・・・?」
何本ものビデオ持って来たくせに、まだ1本しか観てないじゃんかよ・・・。
そもそも、誘って来たのはこいつの方だ。
言い出しっぺが寝るなよなぁ・・・。
「・・・おーい、薫ぅ?」
「・・・・・・」
「かおるちゃーん、此処で寝てたら風邪引くってばよー」
「・・・んー・・・」
揺すった時に聞こえた小さな声に、かあっと顔が熱くなる。
(や、やべぇ・・・)
こいつの寝顔見るのなんて初めてじゃないのに・・・・あ、でも、惚れてるって自覚してからは初めてかも・・・。
安らかに眠ってる薫・・・吸い寄せられるみたいに、薫の顔に覆いかぶさる。
「・・・う、んー・・・」
身じろぎした薫に、慌てて起き上がり、触らなくても判るくらい熱をもった顔をそらせた。
幸い目は覚める事なく、ちょっと寝返りを打っただけでまだ夢の中。
・・・何やってんだ、俺・・・。
薫の方を見ないようにして部屋を出て顔を洗いに行った。
でもあんまり効果なかった。
滅茶苦茶どきどきしてて・・・全然熱が引かない。
ヤケになって、頭から冷水をかぶった。
「・・・椎南ぁ?」
「ぅ、わっ」
不意に聞こえた声に慌てて振り返ると、俺の部屋のドアの前に、目を擦りながら薫が立っていた。
「何やってんの・・・風邪引くよぉ・・・?」
「引かねーよ。それよかもう寝るか?布団敷くけど」
「んー・・・寝る・・・」
とろとろしてる薫をそのままに、転がってたクッションをどかし、予備の布団を敷いた。
「薫、ふと・・・」
「・・・・・・」
俺の方に顔を向けて、もう寝入ってる。
あー・・・やっぱ駄目だ、俺・・・。
「・・・」
深くすると目が覚めるかもしれない・・・ただ、軽く触れた。
俺の、ファーストキス・・・薫はどうかわかんないけど。
でも、今まで誰かと付き合った事はないはずだから、もしかしたら、こいつもそうかも。
顔を離した後で、好きだよ、と、まだ面と向かっては言えない言葉を口にした。
でも、当たり前だけど返事は返っては来ない。
いつか・・・いつか、こいつにちゃんと言える時が来るかな。
・・・受け入れてくれるかどうかは判らないけど。
小さく溜息をついて、薫を起こす。
「薫。薫、ほら布団。敷けたからこっち」
「・・・ぅー・・・」
少しだけ起きた薫が、そのまま布団の方にはって行く。
「おやすみぃしーなぁ・・・」
「・・・お休み」
すぐに寝入った薫の寝息をしばらく聞いてから電気を消した。
自分のベッドに潜り込み、上から寝顔を眺める。
いつか、こいつに好きだとちゃんと告白出来て、この寝顔も笑顔も・・・こいつの存在全てを自分のものに出来たらいい。
そんな事を考えつつ、もう一度薫にお休み、と告げ目を閉じた。
例の如くタイトル適当。
30分で書いたし、SSは無理なのかも、と思ったのでした。
2002年5月20日上がり。