You're My World(1)
[椎南(しいな)x薫(かおる)]
「悪いけど、俺、他に好きな奴いるから」
「・・・・・・そ、か・・・わかった。急にごめんね。じゃ明日また学校で・・・」
わざわざ家にまで来ての告白だったけど、嬉しいとは思わない。
それは例えば「世界一可愛い」と評判の子からのものでも同じ。
嬉しい、というよりは・・・面倒くさい。
だって俺にだって、ちゃんと「好きな奴」ってのがいるんだからな。
でもこれでまた色々言われるんだろうなぁ・・・あー・・・たりぃ。
「椎南ぁ」
そんな事を考えてたら、隣の家から声がかかった。
心臓がはねる。
「椎南ってば、いるの?」
「あ、ああ、薫、何?」
窓を開けてベランダに出る。
俺の部屋は、幼馴染の薫の部屋に面しているんだ。
「さっきの子、何の用事だったのさ?」
にやにやしながら薫が訊いて来る。
「何でもねーよ」
「へぇ?何でもないのに、女の子って泣くのかなぁ?」
「泣くんだろ」
「・・・」
「何だよ」
急に黙り込んだ薫に訊く・・・ま、答えはわかってっけど。
「お前さぁ、もうちょっとこう・・・」
「・・・もうちょっとどうなんだよ?」
「断り方とかさぁ・・・泣かしちゃ駄目だよー、相手は女の子なんだから。一体どんな酷い事言って泣かしてんの?」
「別に?普通に、ごめんなさい、だぜ?泣くのは向こうの勝手だよ、俺のせいじゃねぇ」
「・・・こんな冷たい男が、よくあんなにモテてるよな。女の子達も見る目ない」
「だって俺ってかっこいいもん。そう思わねぇ?」
こいつの反応が知りたくて、普段はまず言わない事を言ってみた。
表面上は穏やかに、内心は、自分の言った事に半分動揺して薫の言葉を待つ。
「・・・まーね。冷たい中に、気まぐれにふっと出て来る優しいとこが来るのかもね」
「・・・・・・何だよ、その、気まぐれにふっと出て来る優しいとこって・・・俺はいっつも優しいだろうがよ」
「その優しいとこに勘違いするんだ。もうちょっと考えた方がいいよ、うん」
「・・・・・・」
薫にどうこき下ろされても何も言えない俺って・・・やっぱ本気で惚れてんだよなぁ・・・。
「あ、そんな事どうでもいいんだ」
「・・・どうでもいいんだ・・・」
「うん。それより今日の夜はずっと起きてられそう?」
「何で」
「一緒に映画のビデオ観ない?観たいって言ってたの、色々録ってあるからさ」
薫のとこはケーブルに入ってるから、しょっちゅう頼んでは録画してもらってるんだ。
入ればいいのに、とよく言われるけど、薫と接触出来るチャンスをみすみす逃せるもんか。
「いいよ。んじゃ夕飯食ってから来いよ」
「うん、そだな・・・9時くらいでいい?」
「ああ」
じゃね、って手を振る薫を見送って、幸せな気持ちで部屋に戻った。