Top of the World(3)
[高橋耀一(たかはし・よういち)x中河京(なかがわ・みやこ)]



だから、受験校で一緒になった時は、本当にびっくりした。
公立も含め3校受験したのだが、そのどれにも耀一に姿があった。
結局、中でも一番偏差値が高かった学校に入学届を出したのだが、オリエンテーション当日に同じ教室で耀一と顔を合わせた時の驚きは、受験日のそれを凌いだ。


「…何で…?」
「何がだよ?」


いつも通りの喧嘩腰で、京の次の言葉が封じられてしまう。
仕方なく小さく首を振って、空いている席に座る。


「…何だよ」
「え…ううん、何でも…」


他にも席は空いている。
なのに、自分を嫌いみたいな耀一は、隣に腰を下ろしたのだ。
嫌いだと直接言われた事はないけれど、今も、京側の手で頬杖をついて、思い切り明後日の方を向いている。
態度がここまであからさまなのだ、判らないはずはない。
京は小さく溜息をついた。

高校に入ってからも、京の赤面症と緊張しやすい性格は変わることはなく、早速に目を付けられた。
揶揄されても言い返せずに涙をため、真っ赤になって下を向くしかない。


「…よせよ」


いつものようにからかわれていた時、割って入った声があった。


「嫌がってんじゃねーか」


その声に顔を上げると、目に入ったのは、両手を学ランのポケットに入れた耀一だった。


「子供みてーなことやってんじゃねーよ。もう止せって」


そう言って自分を庇った耀一にびっくりする。
さっき、ちょっぴり出てしまった涙目で下から耀一を見上げると、耀一は存外優しい口調で口を開いた。


「中河。大丈夫か?」
「え…う、ん…」
「お前もな、何か言い返すとかした方がいいんじゃねーの?」
「……」


口調とは裏腹な、突き放したような言葉に、京は再び下を向いてしまった。


「…泣くなよな」


ふわ、と乗せられた手に、くしゃくしゃと頭を撫でられる。


「そんなだと、いつまでもやられるぜ?お前も少し強く出られるようになれよな」
「あのっ…」


去ろうとする耀一を、咄嗟に呼び止めた。


「あのっ…高橋君っ」
「何だよ」
「あの…ありがと…」
「…ああ」


耀一が初めて見せた笑みに、どきん、とした。
嬉しくなって、真っ赤な顔のまま京も耀一に、一生懸命に作った小さな笑顔を見せる。

その時、京は耀一に恋をしたのだ。

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