Top of the World(2)
[高橋耀一(たかはし・よういち)x中河京(なかがわ・みやこ)]
そんな調子で半年が過ぎた。
少しずつではあるけれど、京も徐々にクラスメイトと話が出来るようになった。
それを横目で眺めながら、でも、耀一だけはまだ挨拶すらも交わせていない。
彼の頭にあるのは、1つの疑問。
(どこ受けるんだろう…)
そろそろたけなわになって来た受験。
京の受ける高校が知りたいのだ。
普通に喋れもしないくせに、京と同じ高校に行きたい。
京は京で、あれから何度か、耀一に話しかける努力はして来た。
なのに、いつも耀一が避けるようにするから…だんだんとその努力を諦めるようになっていた。
(きっと、僕のこと嫌いなんだ)
何もしていないのに嫌われるなんて悲しいけれど、自分に言い聞かせて無理に納得させた。
「…はい、中河ですけど?」
ある日、留守番をしていた京が、不意にかかってきた電話に出ると。
『あの、俺、高橋といいますけど』
「た、高橋、君?」
『…中河?』
その電話は耀一からで、慌てて受話器を握り直した。
「う、うん…あの…何?」
『…ちょっと訊きたいことあって』
名乗った時とは違う、ぶすっとした声が、京の耳に届く。
そのつっけんどんな口調に、何となく涙が出そうになった。
「…」
『中河?」
「ぁ、うん…何?」
『お前、どこの高校受けんの?』
「え?」
『高校。行くんだろ?』
「…何でそんなこと…」
『いーから。どこ受けんだよ?』
黙って答えろと言わんばかりに、その事だけを執拗に訊いて来る。
「えーと…まだ、決めてない、けど…」
『…ふぅん』
「あの…何で、そんな事訊く…』
「別に。決まったら教えろよな。じゃ』
「あっ高橋…」
言いたい事だけ言って切れた電話に、京が思った事がある。
きっと耀一は、自分とは違う高校に行きたいんだ。
耀一の事は吹っ切ったはずなのに、改めてそう解ると、新たに悲しくなって来る。
目を擦りながら自室に戻った。
「…よぉ」