不安の癒し方(5)
[淳(じゅん)×弘一(こういち)]



「・・・ぁ、く‥あ、あっ」


返事をしてから、何度もキスを受け止めた。
だんだんと激しくなるそれに、体の力が抜ける。
 そのまま寝室に連れ込まれ、ベッドに押し倒された。
抵抗もせず、広田の愛撫に溺れて行く。


「‥好きだよ、弘一・・・」
「あん・・・あぁん、んっ」


前と同じ、すぐに服が脱がされ、体中に広田のキスが降って来る。
触れない場所なんてない。
激しいのに性急じゃないそれに、弘一の方が我慢出来なくなった。


「せんぱっ‥入れ、て‥下さ・・・っ」


自分のモノを咥えている広田に懇願する。
この行為に全てを忘れたい。
早く、広田でいっぱいにして欲しかった。
もう余裕がなさそうな広田に手を伸ばし、慣れた仕草でソレをしごく。


「ふ・・・っ、い、ちっ」


淳にいつもやっていた事・・先端に爪を立てると、痙攣した広田の目の色が変わる。
 脚を大きく広げさせられ、今の刺激に溢れた先走りに濡れた自身を、弘一の後ろに当てた。


「・・行くぜ」
「ん・・・んぅあっあああ!」


まだ広田によく慣れていない狭い場所に無遠慮に入って来る。
だが、前はその衝撃に意識は飛んだけれど、今度は、入って来る間も、広田が動いている間も記憶はあった。


「あんっ・・・あ、ああっ、んっ」


もっと奥迄入れて欲しくて、自分の最奥が燻っているのが辛くて半分泣きながら広田にねだる。
早さを増す度に、ぎゅっと目を瞑りそれに耐えた。


「く‥こ・・・いちっ、俺、も・・・っ」
「イクっ・・・せ‥ぱっ・・・っイっんんん‥!」


直前に伸びた手にキツくしごかれ力が抜けた。
自分の上で体を震わせている広田を引き寄せ、自分からキスを求める。
その夜、広田は弘一を1度では解放せず、弘一が抱かれ疲れて朦朧とする迄攻め続けた。
限界がないかのように自分を求めて来る広田を、初めて愛しいと思った。
揃ってくたくたになって、シャワーも浴びずにベッドに転がる。
息を弾ませている広田にすかさず抱き締められ、優しく髪を梳かれた。


「御免な‥疲れただろ?」
「・・・いえ‥平気、です・・・」


淳からの電話は、あれからも鳴り続けていた。
途中、電池を抜いてしまったくらい、今更の連絡は邪魔だった。


「‥さっきの電話‥お前の彼女?」
「いえ、もう違いま‥」
「無理すんなよ」
「‥無理なんて・・・」
「お前、今でもそいつの事、好きなんだろ」
「・・・・・・」
「・・・戻れよ」
「え?」
「そいつのとこに。上手く行かなくなったのって、此処1ヶ月くらいだろ?それ迄はお前ってやったら元気でさ。
 俺はそういうとこに惚れたんだ。俺と一緒にいても、お前無理して笑ってて・・・俺の好きな、前のお前じゃない。
やっぱ俺じゃ無理だわ。戻れよ。そいつにあの笑顔、引き出してもらいな」
「先輩・・・」
「今日のは、ふられる俺の為。最後に目茶苦茶抱いてみたかった」


体を起こして、くしゃくしゃ、と弘一の髪を撫でる。


「な?ちゃんとふられてやるから。安心してそいつのとこ戻れよ。別に追っかけたりしねーから」


 口調は元気でも、泣き出しそうな声が弘一の耳に届く。


「‥ごめ・・・なさ・・・」
「いいって。ほら、携帯。電話してやれよ。俺ちょっとシャワー浴びてくっから」


無理に作った笑顔を見せた広田が部屋を出て行った後、すぐ側に放られたままになっている携帯の電池を入れた。
途端に鳴り始める。
着信なんて、見なくても解る。


『弘一っ』


ぴっ、とスイッチを押した携帯から、淳の声が飛び込んで来た。


『弘一、いるんだろっ?なぁ、何とか言えよっ。何で俺と別れるとか言い出してんだ?今何処にいるんだよっ?』
「‥せ‥んぱいの・・・」
『なぁ、今すぐ逢って?お前の行きたいとこでいいから。どんな遠くでも行くから、俺と逢って?』


必死な口調。
今迄、聞いた事がない。
こいつの、こんな切羽詰まった声なんて。
付き合い始めてからは、ずっと自分が追いかけていたから。


『何処がいい?何処でもいいから。お前が好きなとこなら何処でも』

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