不安の癒し方(2)
[淳(じゅん)×弘一(こういち)]
早目に仕事を切り上げ、広田を待つ。
行きたいという気持ちはなかったが、何となくぱーっとしたくはあった。
思い切り飲み倒してやる、と半ば以上自棄な気持ちだった。
「お待たせー、じゃ行くか」
「はい」
薄手の背広を羽織り、広田の後に続く。
連れて行かれたのは店ではなく、広田のマンションだった。
「‥先輩、ここ・・・」
「店じゃ高いだろ。酒ならたくさん買い置きあるし、こっちの方が落ち着くからな。遠慮なんか要らねーから、適当に座れよ」
何度か勧められ、仕方なく近場のソファに腰を下ろす。
ぽん、と投げられた冷たいビールを、礼と一緒に開け一気に煽った。
「お?いい呑みっぷりじゃん。ビール好きなのかぁ?」
「・・・今日は飲みたい気分なんです」
「ああ、あの喧嘩したって彼女の事か?そんなの忘れちまえよ。ほら、もっと飲め飲め」
軽く煽られ、次々とあけていった。
「‥ぁ・・・?」
気が付いた時に、弘一は多少大きめのパジャマ姿でベッドに入り込んでいた。
内装に見覚えがない。
頭がぼんやりとしていて、何故自分がこんな所に寝ているのか、しばらく解らなかった。
「‥起きたのか」
不意に聞こえた声にそちらを見ると、ガウン姿の広田が穏やかな笑みを浮かべて立っているのが見えた。
「ぁれ・・・せん、ぱ・・・何で、ここ・・・」
「何だ、お前全然覚えてねーのか?」
「・・・すみません」
「無茶な飲み方すっからだよ。つぶれたんだ」
「え・・・あ・・・そ、か‥」
言われて、やっと記憶がよみがえる。
広田に誘われて飲みに来てたんだ・・・ちょっと気分が悪いのも、飲み過ぎたからなんだ・・・。
そんな事をぼんやり考えていた弘一の上に、ふわ、と広田が乗って来た。
「‥寝てる時にしてもよかったんだけど、あとで寝覚めが悪そうだからな。
いつ起きるかと思って待ってたんだ」
「え、ちょっせん・・・んっ」
キスと同時に、パジャマの中に手が入り込んで来る。
胸に触れられてぞくりとした。
摘んで擦られ、たったそれだけなのに頭の先まで痺れて来る。
声は、広田の口の中に消えた。
「・・・言っただろ?彼女の事なんて、忘れちまえよ」
「・・・・・・」
「俺が、忘れさせてやる」
「っはっ・・・!」
ぎゅっと前を掴まれた。
目を大きく見開いて息を呑む。
パジャマのボタンを器用に外され、胸に顔が近付いたかと思うと突起が唇に包まれた。
ちろっと舌が動いて、甘い感覚がそこから生まれる。
何度も繰り返し舐められ、体が揺れるのが止められない。
まだ残っている酔いのせいか、声が止められなかった。
少し乱暴に服を剥ぎ取られ、あっという間に裸にされる。
「‥もう出そう?」
「ん・・・んっあっああっ」
足を軽く開かせ、ぱんぱんになっているソレを含む。
淳の愛撫とは違った感覚に、我慢出来よう筈もない。
「せっせんぱ、先輩っや‥あっ」
「‥意外と可愛い声、出すんだな」
「やっそこ・・・そこ、駄目っやだ・・・!」
掴まれ、舐められる感じだけが全てになる。
それだけしか、考えられなかった。
「ぅっ、うっんっ・・・っ」
歯を食いしばって時折逆らおうとしたけれどうまく行かず、結局そのまま達してしまった。
何度も高められ気が遠くなる。
淳しか経験がなかった弘一は、後ろにいれられた時に感じた痛みのあとは、すっかり記憶が抜け落ちた。
気が付けばもう夜明けに近く、初夏の街は早くも白み始めている。