俺が冬樹を受け入れた理由(わけ)(6)
[小林冬樹(こばやし・ふゆき)×忍和希(しのぶ・かずき)]



何で、俺が泣かないといけないんだ?

意識の片隅で何度も思ったのに、涙が止まらない。
家に帰って来てから、夕飯も食べずに部屋に閉じこもり、ずっと泣いてる。
たまに母さんが心配して部屋に上がって来たけれど、具合が悪いとだけ告げてドアは開けずにいた。


「・・も、駄目なのかなぁ・・・」


友達っていう枠も、駄目なのかな・・・。
何で?
何で、あんな・・・


「・・・ぅ、っく・・・」


冬樹の、怒ったみたいな横顔と、冷たい口調を思い出す度に、新たに泣けて来る・・・。


初めて逢ってから、あんな冬樹は見た事なかった。
だって、ずっと優しかったんだ。
俺は怒ってばかりいたけど、冬樹が俺にああいう態度、取る事なんて全然なかった。

・・・俺が、引き出したんだ・・・。


夜遅く、泣き疲れて眠りに入った。


「・・・頭‥いて・・・」


泥のような眠りから目覚めると、頭が重くて痛い。
学校・・・行きたくない。
これを利用して休んじゃおうか・・・。

冬樹に会うのが、怖い。
昨日と同じ態度を取られたら‥また泣くかもしれない。
そんな自分をクラスメイトに見られるのは嫌だった。


「和希、朝よ。具合どう?」
「え、熱があるのかしら。計った?」
「え、いや、まだ・・・」


促され計ってみると、ほんの微熱程度の熱がある。


「起きられそう?」
「んー・・・」
「無理なら、一日くらい休んじゃってもいいわよ?」


今迄休んだ事がないから、母さんも結構甘い。
行きたくなかったし、頭痛は続いているから思い切って休む事にした。

頭痛の原因は判ってる。
これから、どう、しよう。
どうしたいのかな、俺・・・。


「・・・受ける・・・?」


ふと呟いてみる。
そんな事考えてもいなかったけど・・・冬樹の告白・・・受ける‥?
受けたら、元に戻れる・・・?


‥俺、やっぱり冬樹と離れたくない。
友達とか恋人とか・・・そういうんじゃなくて、離れたく、ないんだ。
折角楽しくなって来てたのに、勉強だって、ずっと見て来てて・・・あの時間だって、俺には大事になって来てた。
捨てられない。
壊したく、ない。

抜け道のない自問の中、これだけははっきりしていた。
これだけでも冬樹に伝えたい。


「・・・学校、行こう」


昼過ぎだったけど、まだ体はだるかったけど今からでも登校して、冬樹に直接、今日、伝えよう。
そう決めてベッドから起き出した。

制服を着ている途中で、母さんが顔を出した。


「和希、何してるの?」
「具合良くなったから、今からでも学校行こうと思って‥何?」
「お客様よ」
「え、客?誰?」
「・・・よぉ」


母さんの後ろから顔を出したのは、冬樹だった。

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