一番のプレゼント(1)
[小林冬樹(こばやし・ふゆき)×忍和希(しのぶ・かずき)]
ずっと思っていた事だけど、忍は可愛い。
この前、俺が打ったちょっとした芝居にあっさりと騙されて
教室から姿を消した俺を校舎内中捜し回り、
息を切らした真っ赤な顔で屋上に辿り着いた時の、本当に安心した顔。
たった一言を言わせたかった為に、尚も短時間の芝居を続けたけど
本当はあの顔を見た瞬間に、思い切り抱きしめたかった。
それを我慢して言わせた一言。
俺にとったらかなり貴重だ。
その後、どうにも我慢出来ずに学校で・・・しかも屋外にコトに及んでしまったが
忍には本当に悪い事をした・・・。
冷静になって考えてみれば、忍はあの日病み上がりで
しかも嫌がっていた体位を無理矢理取らせた。
必死に謝ったけど、泣かせてしまったし・・・。
大事な奴を泣かせるなんて、俺って最低。
だから、此処でちょっと面子を挽回しておかなければならない。
折りしも、もうじき忍の誕生日がやって来る。
俺達が付き合い始めてからの初めてのでかいイベントだ。
俺のは、忍が返事をくれたクリスマス前に終わってしまっていたから。
忍は三月生まれで、学校は確りと春休み中ではあるけれど、そんなものは関係ないだろ?
あと一週間で忍の誕生日。
何か、忍の気に入るプレゼントを探し出して、ちょっと男を上げておこう、と決意している。
でもプレゼント‥友達にあげたことはあるけど、恋人にあげる、というのは今回が当たり前だけど初めて。
友達には結構ウケ狙いで妙なプレゼントでも構わないけど、忍にはまさかそういう訳にはいかない。
当然だ、どうしよう・・・。
ずっと一人で悶々と悩んでいたら、頭を抱えて唸っている俺の所に、山下という忍の親友がやって来た。
「よぉ、小林。何難しい顔してんだよ。悩み事?あっ、まさかまた和希と喧嘩でもしたのかよ?
ったくしょうがねーなぁ、お前らって‥」
「ち、違うよ。そんなんじゃなくてさぁ、ちょっと・・・」
「何だよ。悩みなら和希に相談すりゃいいじゃん」
和希、というのは、忍の名前だ。
中学の時からの親友の山下は、忍をこう呼ぶ。
「忍に相談なんて出来ないよ・・・あ、そうだっ。山下ちょっと・・・」
山下の腕を引っ張って、教室の隅っこの方に連れて行った。
訳が解らないながらも、山下も俺について来る。