Commencement(10)
[瀬川竜巳(せがわ・たつみ)×秋本悠介(あきもと・ゆうすけ)]



初めての、悠介とのキス。
緊張で体を固くしている悠介に、そうっと唇で触れて行く。

最初は額。
次に目・・・頬。

触れる度に、ぴくん、と震える悠介が愛しくて、何度も、好きだよ、と囁いた。
そして最後に唇へ。
本当に軽く触れ合う。
想像していた通りの、温かくて柔らかい悠介の感触が、唇の上に残った。
何度かついばむ。
キスだけで気持ちがよくなるなんて、想像もしていなかった。
舌をそっと入れると、はっきりと悠介の体が震える。
焦る気持ちを抑え、ゆっくりと口内をくすぐって行く。


「・・・ん・・・」


悠介の小さな声が漏れる。
顔を離すと、うっすらと頬を染めた悠介が、ほうっと息を吐いた。


「・・・やだ?」
「・・・・・・ううん」


小声で否定する悠介に、確かめるかのようにもう1度唇を重ねた。
今度は、最初から悠介の舌を探し始める。
あっという間に見付かったそれに自分の舌を絡めた瞬間、ぞくり、と背中に何かが這った。
耐えて、あくまで優しく絡め取る。
濡れた音が聴覚を刺激する。
我慢出来ない・・・そのまま、ゆっくりとソファに悠介を押し倒した。


「た・・・つ、み・・・?」


自分の上に乗っている竜巳を、不安そうな顔で見上げている悠介に、真剣な顔で問いかける。


「悠介。やだ?」
「・・・何、が・・・?」
「今、俺とするの」
「なに・・・」
「嫌なら、そう言って。でないと止まらない。はっきり拒否してくれないと、もう止められないんだ。悠介、どう?」
「・・・・・・」
「悠介。嫌なら、今言って?今なら、まだ大丈夫。あと少しでも進めたら、途中じゃ絶対止められない。頼むから、本当の事、言って?」

「・・・・・・いいよ、竜巳」


少しの沈黙の後で悠介が言った言葉に、竜巳自身驚いた。


「え?」
「俺なら、平気。本当は覚悟して来たんだ。嫌だなんて言わないよ。お前の気持ち受け止めた時に、覚悟はした。だから、すぐに返事が出来なかったんだ。いいよ・・・しても」


その言葉を聞いた刹那、竜巳の中で、今までの想いが弾けた。

すぐにでも仕掛けたかったけれど、シャワーだけ貸して、と懇願する悠介に強制は出来なかった。
シャワーを終えるまでの30分が、永劫にも感じた。
僅かに濡れ髪のまま服を着て戻って来た悠介は、落ち着いて見えた。


「・・・いいよ」



小さいけれど、きっぱりと言い切った悠介を連れて自室に入る。
ベッドに一緒に座ったが、落ち着いて見えてもやはり緊張しているのか、竜巳との距離が1人分はあいている。
両手を握り締めて膝の上に置いたまま硬直してしまっている悠介の肩に手を回して、抱き寄せた。


「本当に平気?」
「・・・うん」


内心はどうあれ、はっきり頷いた悠介の上にそっと乗る。
キスを落としながら、体に手を滑らせた。


「・・・っん」


思わず漏れた声に、悠介が真っ赤になる。
はっと口を押さえて、竜巳から視線を逸らせた。


「・・・悠介?」
「・・・・・・」


答えられない悠介に、竜巳が笑顔を見せる。


「大丈夫だから。悠介の声が聞きたいんだから、聞かせて?感じてるって証拠だから、俺は、出してくれたほうがずっと嬉しい」
「・・・・・・ん」


確認して、動きを再開させた。

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