恋人は猫(2)
[暁(あきら)×羽月(はづき)]
すぐに限界、ってとこで、羽月が体を離してしまった。
「は、づ‥っ」
「僕ねぇ、暁。暁にも同じ格好、して欲しいな」
「・・・え?」
「して?」
すっと立ち上がってクローゼットの方に歩いていった羽月が、真っ黒な衣装を手に戻って来た。
羽月のがタンクトップと短いパンツなのに対して、俺のは真っ黒なハイネックノースリーブに細身のパンツ。
真っ黒な猫耳としっぽもちゃんとある。
すぐにでもイキたいのに、羽月は許してくれなかった。
じゃ、せめて、その煽るような瞳を止めて欲しいんだけど‥精神力を思い切り総動員させて服を着る。
「カッコいいね、暁」
「‥羽月‥頼む、から、一回だけ‥イカせて‥?」
満足そうに俺を見ている羽月に、本当に辛い、って何度か懇願する。
「だーめ」
なのに、恋人の返事は、これ以上はないくらいのつれない物だった。
「なん、で‥?」
「暁の、イクの我慢してる顔、もっと見てたい」
やっぱり今日の羽月‥いつもと違う。
でも俺もどっか変なのかも‥そんな事言われて、もっと感じちゃってるっぽい。
「それじゃ暁。僕んとこ来て?」
「・・・」
黙ったまま言う通りにすると、すかさず俺の膝の上に乗って来た。
抱きしめようとしたら、羽月に全身で拒否されてしまう。
「駄目だってば」
「何でだよっ」
「エッチになっちゃうじゃん」
駄目なんだよ?って可愛く首を傾げて言った羽月の手が下に伸びた。
恋人の目から顔を離せないでいた俺は全くそれに気が付かず、いきなりの刺激に息を呑んだ。
「‥まだ硬いね。ちょっと時間経ってるのに。そんなにイキたいんだぁ?」
「・・・っ」
「その顔。いいよ」
「‥ぅ‥んんっ」
「ふみゃあ‥」
もう駄目だ!
「は、羽月っ、羽月も、駄目‥ごめん、許して‥?」
「んー‥」
「本当‥頼む、から‥イカせて、苦し‥」
「んー、しょうがないなぁ‥じゃいいよ。一回だけね」
「羽月‥!」
「ん、く‥んぐっ‥」
「あ‥あ!」
初めて経験する舌の動きに、我慢なんて出来る筈がない。
何を考える暇もなく、羽月の口の中に出してしまった。
少しの間、体を投げ出していたけれど、呼吸が落ち着くのを待って体を起こす。
羽月はずっと俺の側に座って‥俺を煽る瞳をして‥いる。
襲ってくれ、と言わんばかりの、目。
「なぁ‥ん」
悪戯っぽい光を湛えている羽月‥こんな姿は今迄見た事がない。
やらずに我慢してろ、なんて・・・拷問に等しい。
「‥羽月。こっち来て?」
「ふみゃあんっ」
呼ぶと、嬉しそうに体をすり寄せて来た。
「にゃあ‥ふなぁあ‥ん‥」
「‥羽月‥」
また、全身で拒否されるのも構わずに、愛しい恋人をぎゅっと抱き締めた。
「なぁんっ」
「駄目」
「ふみゃあんっ」
「駄目だってば」
「や‥ちょっ暁っ」
「お前な、そんな目して俺を煽っといて、するな、なんて言うなよな」
「あ!」
「お前のだって硬くなってるっぽいじゃんか。ほら此処」
後ろから抱き締めた羽月を、半ば強引に後ろ向きに膝の上に座らせる。
脚を開かせ、パンツの裾から手を滑らせた。
「ぁ‥あぁん‥っや、まっ待って‥っ!」
「言ったろ?もう待てない」
「エッチ‥しないっ‥て・・・っや、くそく‥ったじゃっ‥」
「知らねーな。ほら、ないてみろよ、さっきみたいに?」
「‥ふ‥みぃ‥」
「もっと」
「あっ‥みゃあ・・・にゃあっ!」
ぴくんっと体をのけぞらせ、殆ど悲鳴に近い声を上げた。
下で蠢かしている手はそのままに、もう片方の手をタンクトップの下から滑り込ませる。
「あ‥っ」
「硬くなってんじゃん」
摘まんで、押し込むように弄ぶ。
体をひねろうとした羽月を、乱暴にその場に押し倒した。
「いや!」
「逃げんなよ。気持ちよくさせてやるって」
「や、やぁんっ‥」
「違うだろ?ほら、気持ちいい猫はどうやってなくんだっけ?」
「にゃ‥ふ、にゃあんっ」
最初の内は嫌がっていたみたいだった羽月も、この普通じゃない状況に飲まれて来たらしい。
顔がだんだんとエッチっぽくなって来た。
目が潤んで来たし、何より声が違う。
「羽月。四つん這いになって」
「みぃ・・・ああん‥」
初めてかも知れない体勢でも、羽月は素直に従った。
さっきみたいに、裾から手を入れる。
「なぁ‥ふなあ‥ああん‥」
「本当の猫みたいじゃん」
発情期の猫と、同じ声出してる。
今日はこのまましよう、と思い立った。
倒錯っぽくていいかも知れない。