バースデープレゼント(1)
[椎南(しいな)x薫(かおる)]



明日って、椎南の誕生日。
どうしよっかなぁ・・・ってずっと考えてる。
やっぱり何かあげた方がいいのかなぁ、とか。
幼馴染で、ずっと一緒に過ごして来たけど、そんなのあげた事ないし・・・俺だって貰った事ないもん。
今更なんだよな・・・。

でも、その「今更」な誕生日プレゼントについて悩んでる理由・・・あるんだ。
16年間、ただの「お隣さん同士」だったのが、ほんの2週間前に「恋人同士」になったから。


椎南って、俺から見たってカッコよくって優しくて・・・すごくモテる。
現にやたら告白もされていた。
なのに、一度だって承諾した事なかったんだ。
学年一可愛い子からの告白も、マドンナって呼ばれてる子からの告白も、たった一言「ごめん」で済ませてた。
何でだよ、と訊かれても、勿体ねぇ、とか贅沢もんっ、とか言われても、ただ黙って笑ってた。
俺でさえ不思議だったから、だから訊いてみたんだ。


「・・・なぁ、何で断っちゃったんだよ?」
「何を」
「告白。それにさ、今迄だってOKした事なかったじゃんか。何で?」
「あぁ・・・別に理由は・・・」
「なくて断ってんの?」
「・・・ない、訳じゃ、ない、と思う・・・けど・・・?」
「あるの?あっ、他に好きな子いるんだっ?誰誰誰?俺の知ってる人?」


そうだよな、じゃなかったら断る理由ないもん。
急に興味が出て来て、椎南に詰め寄った。


「うー・・・ん・・・」
「何だよ。今更隠す事ないじゃんか、俺とお前の仲だろ?なーなー教えて?」
「言ったら、協力でもしてくれんの?」
「するする。ってかお前だったら一発じゃん。断れる奴なんていないよ。してみれば?」
「‥断れる奴いない?」
「うんうん。いないよきっと」


他人事だから、いとも簡単に、かなり無責任に頷いた。
そしたら、ちょっとの間の後、いきなり俺が告白されたんだ。


「薫。俺と付き合え」



一瞬、気が遠くなった。


「・・・・・・・・・はぁ?」


長い沈黙の後、かなり間抜けた返答をしてしまった。


「何言ってんの、お前?からかうのもいい加減に・・・」
「誰がからかってんだよ?」
「・・・・・・じゃ本気で・・・」
「好きだよ、薫」


そう言った椎南が、完全に唖然としている俺の体を軽く引き寄せ、そのままキスを仕掛けて来た。
軽く掠った所で我に返る。
慌てて顔を逸らせた。


「・・・薫?」
「・・・」
「薫。俺の事、嫌い?」
「・・・」
「・・・嫌いならしょうがないけど・・・・・・でも、だったら俺・・・」
「・・・だったら、何?」
「・・・だったら、もう一緒には・・・」
「え?!」


慌てて聞き返す。
何だよそれっ?
そんなの、勝手に決めんなっ!!


「ちょっと待ってよ。何それ?何でもう一緒にいらんないとか言い出してんの?ふざけんなよっ」
「ふざけてねーよ。ふられた相手と、そうそう一緒にはいらんねーって言ってんだ。お前はそんなの出来んのかよ?」
「う・・」


言葉に詰まった。
俺だったら・・・俺でも、そんなの出来ない。
でも俺は椎南と離れるつもりなんて・・・。


「・・・じゃ・・・」
「お前がいい、って言ってくれたら、一緒にいるよ、当然?」
「・・・解ったよ」


それしかないみたいだった。
付き合うとかじゃなくって、一応承諾、という形で、俺は椎南の告白を受けた。



それが、2週間前。


それからの椎南は、以前に増して俺に対する態度が優しくなった。
前から、優しかった事は優しかったんだけど、今の態度は、完全に女の子に対する物で・・・彼女、と言うか・・・。
言葉遣いは今迄通り乱暴だけど、目が違う。
まともに見てしまうと、こっちが固まるくらい、俺の事を愛しそうに、包み込むような瞳で見つめている。
こんな目は今迄見た事がなかったから、多分に本命用なんだろう。

その目に、近頃ほだされて来ちゃってるっぽい。
知らない内に、椎南の姿を捜している事に、よく気が付くんだ。
目に入ると、自分で気が付く迄ぽーっと眺めていたりする。


「・・・なったかも・・・」


椎南の顔がまともに見られなくなって3日目・・・つまり今日だけど・・・何となく自覚した。


好きに、なっちゃったっぽい。


友達、とかそう言うんじゃなくって・・・椎南が好き、になった。

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