Although・・・(9)
[瀬川竜巳(せがわ・たつみ)×秋本悠介(あきもと・ゆうすけ)]
翌日。
昨夜のうちに竜巳が泊まったのは分かっていたのだろう、悠介の母親が、驚くでもなく普通の顔で2人を起こしに来た。
「悠介。竜巳君、学校遅れるわよ?」
「・・・あ、おはよーございます・・・」
目を擦りながら挨拶をする。
大きく伸びをして、まだ夢の中にいる悠介を揺り起こした。
「おいこら悠介。起きろっ」
「んー・・・もう朝ぁ?」
「もう。学校行こうぜ」
「えー・・・まだ眠いぃ・・・」
竜巳の呼びかけに体は起こしたものの、すぐ隣で座っている竜巳の背に、こつん、と頭をつけてしまった。
朝に弱い悠介をこのまま放っておくと、再び眠りに入ってしまうのは必定である。
ちょっと考えて、竜巳は、強硬手段に出る事にした。
「ほぉら悠介っ。起きろって。起きないとー・・・」
「・・・っんんっ」
「・・・目ぇ覚めた?」
悠介の意識を覚醒させるためだけに、朝から情熱的なキスをした竜巳に、悠介が真っ赤になる。
「・・・っ前なぁ・・・朝からするやつじゃないだろっ」
「だーって全然起きないから。学校遅れるって言ってんのによ」
「うー・・・」
釈然としない顔で、不機嫌に唸ってはいるが、その実ただ単に照れているだけ、というのは竜巳には解っている。
先に制服を着込み悠介を急かす。
朝食も済ませ、揃って登校した。
今日は一緒にいる2人を見て、健一がほっとした顔になる。
「・・・うまく行ったみたいだな」
「片山。ごめんね何か・・・色々迷惑かけて」
すまなそうな顔で謝る悠介に、手を振ってみせる。
「いーって。これで俺も、竜巳の鬱陶しいしょげ顔見なくて済むんだし。こいつがしょげてもちっとも可愛くねーんだもん。ただ邪魔なだけ」
「な・・・おいこらっ!てめぇんな言い方ねーだろ?ったく友達甲斐のねー奴だな」
「だって本当の事だもん。何だよお前昨日は秋本に捨てられたとか言って泣いてたくせして」
「うっ」
竜巳と健一が軽い応酬を交わしている間、悠介は律儀にも、昨日の態度の悪さを友達に謝って歩いていた。
その姿を幸せそうに眺めていた竜巳に気が付いて、これも笑顔で悠介が竜巳の所に戻って来る。
「・・・何だよ?」
「んーん、何でもないよ」
まだ主が来ていない椅子に座り、竜巳の机に頬杖をついて竜巳を見つめる。
学校でこういう空気を作るのは珍しい。
特に態度には出していないのに、何となく空気がいちゃいちゃしている。
そのうち、悠介が借りている席の主が登校して来たが、割って入れず途方に暮れた。
その彼に、そっと席を立った健一が耳打ちする。
「・・・なぁ。今日だけ秋本の席にしない?あてられそうだけど、今日1日、あの笑顔見てたくないか?」
「え、でも・・・」
「いいじゃん。あの笑顔見てられるんだから、文句言うなよ」
押し通す形で、半ば無理矢理承諾させてしまった。
健一の思惑通り、その日1日はクラスの雰囲気までもがよかった事は、想像に難くないだろう。
「喧嘩」を書いてみたかったのです。
描写がある話で、ユリさんに読んでもらった一番最初の品でした。
悠介が勝手に動いたので、仲直りする場所が変更に・・・。
でも、自分の中では悠介は穏やかなやつなんです。
2001年11月11日にあげ、2002年2月23日に直し上がりでした。