Although・・・(6)
[瀬川竜巳(せがわ・たつみ)×秋本悠介(あきもと・ゆうすけ)]
言葉を交わさないまま1日が過ぎた。
ショートホームルームが終わる。
いつもなら、真っ先に悠介の席に来る竜巳は、自分の席に座ったまま動きもしない。
目が、赤くなっていた。
代わりに健一が悠介の所に行く。
行けよ、と目で促すと、悠介は硬い表情のままカバンを手に竜巳の席に向かった。
「・・・竜巳」
「・・・・・・何?」
「話が、ある、んだ。今日、俺のとこ寄って」
「・・・うん」
帰宅途中、全く口を利かなかった。
悠介の両親は、いつも夜中にならないと帰宅しない。
それ迄は、悠介は完全に1人だ。
差し向かいに座った悠介が黙っているので、竜巳が先に口を開いた。
「・・・悠介。話って・・・?」
「・・・・・・今日は、ごめん」
「え?」
てっきり別れ話かと思っていたのに、思いもかけない謝罪の言葉に不意をつかれた。
「・・・昨日から今日にかけて‥俺、態度悪かったよ。ごめんね」
「悠・・・」
「・・・大嫌い、なんて・・・嘘だよ。いないと、どうしていいのか解らなくなるくらい、好き、なんだ」
「悠介・・・」
「‥片山に聞いた。片思い歴10年だった、って。ずっと好きだった、とは言われたけど、時間の長さなんて知らなかったから・・本当にごめん」
「・・・」
黙ったまま、悠介の隣に移動する。
座った途端、隣で俯いている最愛の人を、そっと抱き寄せた。
声を殺している悠介の背を、優しくさする。
「‥泣かしてばっかりだな、俺」
「・・・っ」
「悪いのは俺なんだから、謝んなよ。御免悠介。好きだよ。本当に、ずっとずっと好きだった。お前しか、俺にはいない。お前だけが欲しかったんだ。泣くなよ。悠介は、笑った顔の方が可愛いんだから」
「たつ・・・」
顔を上向かせて、零れた涙の後に唇を付けた。
「俺は、お前だけが好きだよ。今迄もこれからも。許してくれるかどうか判らないけど、これだけは本当。ごめんな」
「・・・ううん。俺にだけ。俺にだけ我がまま言って。俺だけにしかしない事、して。それが本当に俺だけにだったら、俺はそれだけで幸せになれる。竜巳・・・好きだよ」
「ゆ、うすけ‥」
「ここ迄好きになるなんて、思ってなかった。行為が、嫌なんじゃない。竜巳がしたいなら、いつでも相手になる。おかしくなるまで、相手するよ」
「・・・・・・」
「・・・して?」