Although・・・(1)
[瀬川竜巳(せがわ・たつみ)×秋本悠介(あきもと・ゆうすけ)]
「こ、んなとこで‥止めろよっ!」
瀬川竜巳の下でもがいているのは、竜巳と付き合い始めてもうすぐ半年目の、秋本悠介だ。
「竜巳!やだって言って・・・」
いくら周りに人がいないからといって、戸外でコトに及ぼうとしている竜巳に、悠介の目に涙が溜まっている。
「泣くなよな。悪い事してるみたいな気になって来るじゃんか」
「してるだろっ!」
全く聞く耳を持たない竜巳に、自然と口調が荒くなる。
「・・・なぁ、悠介?」
「んだよっ!」
「お前、俺の事嫌いなの?」
「・・・・・・」
手の動きは止めたものの、上から押さえつけられていて身動きが取れない。
「なぁ?」
「‥嫌いじゃ・・・」
「じゃ、いいじゃん。今したいの、俺は」
「それとこれは別!こんなとこで、やだよっ!!」
「‥ったく、そんなでかい声出してたら余計に目立つだろ?」
そう言うなり、押さえつけた悠介にキスを仕掛けた。
きつく閉じた唇をそっと舐めると、悠介の体が小さく震えた。
同時に、僅かに開かれた口内に、すかさず竜巳の舌が進入する。
何度も絡み取られて、不覚にもぼうっとしてしまう。
抵抗を止めた悠介の前に、竜巳は手を滑らせた。
撫でられ、反射的に腰を引く。
その刺激に我に返る前にと、逃げた腰を追って竜巳の右手が動く。
きゅ、と握られて、思わず小さく悲鳴を上げた悠介には構わずに、竜巳は手を蠢かし続けた。
「ぁ‥はっん‥や、竜巳‥」
次第に波に飲まれていく悠介に気をよくした竜巳が、にっこりと笑顔になった。
「やっぱ可愛いな、悠介」
「あん‥や、だっ‥」
いつの間にかファスナーが下ろされ、少し反応しかかっているソレが竜巳の手に握られる。
あっという間に硬度を増した。
「あっあ‥だ、めだっ‥て・・・あぁ、あんっ」
まだ少し余裕がある所で、竜巳は手を離してしまった。
「‥た、つ・・・み‥?」
「舐めて」
「・・・え‥?」
「俺の。今、何も持って来てないから、悠介が舐めて自分で濡らして。ほら、起きてこっち」
ぐい、と腕を引かれて起こされる。
自分の波が収まっていない悠介が、辛そうに眉をひそめているのに、自分の前に跪かせた。
「ファスナーも開けて」
ぼんやりとしてしまっている悠介は、言われた事をそのまま実行に移す。
「ふ‥」
ぺろ、と舐められて吐息が漏れる。
上目遣いに竜巳を伺うその目つきが、さっき迄嫌がっていた人物とは思えないくらいだ。
滅多に見られない瞳にぞくりとする。
「悠‥ちゃんと、濡らせよ‥」
言われて殊更に唾液を塗り付ける。
すぐに、濡れた音が二人を包んだ。
「たつ‥俺、も‥我慢‥出来‥」
攻めていた筈の悠介がそんな事を言い出す。
誘い文句だ。
さっき迄、少しは残っていた余裕も、今はない。
「竜巳・・・」
「‥何?」
「入れ‥竜巳で‥イキたい・・・」
潤んだ瞳で言われて、竜巳も一気に限界になった。
「‥解った。イカせてやるよ、俺で」
少し乱暴に押し倒し、ジーンズを剥ぐ。
悠介がたっぷりと濡らしたソレを、いきなり後ろに突き立てた。
「あっあぐ・・・!」
辛かったのは最初だけで、後はすぅっと入り込む。
ゆっくりと腰を前後に使った。
広げられてもいなかった場所が、竜巳に擦れて熱くなる。
「あ、あ、あ‥はんっ」
戸外だという事も忘れて、竜巳の動きに合わせて声を出す。
「‥いい?」
「ん・・・いい、もっとぉ・・・」
つい、と零れた涙を竜見の指が拭う。
「竜巳‥もっと、いっぱい‥して・・・ぇ、あぁ、んっ」
ゆっくりと引いた腰を一気に入れた。
「あっあっ・・・あ、イッちゃ‥」
「ぅ、く・・・」
イキそうになるのを堪えて、尚も悠介を突いた。
ぴん、と体を硬直させた悠介が、次の瞬間力を抜く。
耐え切れなかった竜巳も、悠介の中に出した。
すっかり汗ばんだ体で、呼吸を荒くしている悠介の服を直す。
「悠介。どうだった?よかっただろ」
「・・・・・・」
「悠?悠介?」
荒い息遣いだけで、悠介は竜巳の方は見ない。
ベルト迄しめてやってから、竜巳は悠介の上に乗り顔を覗き込んだ。
「悠介ってば。おい、大丈夫か?」
いくら呼んでも自分の方を向いてくれない恋人に心配になり頬に手を伸ばした時、悠介がその手を払いのけた。
「悠・・・」
「馬鹿!」
自分に向けられたその言葉に、瞬間的にカチンと来た。
「馬鹿たぁ何だよっ。お前、それが俺に対する言葉か?」
「馬鹿っ!」
もう一度繰り返した悠介の目には、はっきりと涙が溜まっている。
それに気付いた。
「悠介?何泣いてんだよ、お前?」
「・・・帰る」
「え?おいちょっと待てって・・・・」
「どいてよ!帰るんだからっ!!!」
剣幕に押されて悠介の上から退く。
間髪を入れずに起き上がった悠介は、竜巳の方を見ないまま歩き出した。
「おい、悠・・・」
その呼びかけに、ぴた、と足をとめた悠介が、振り返らずに何事かを呟いた。
「え?」
「・・・みなんか、大嫌いだっ。竜巳の馬鹿っ!!」
そう捨て台詞を残したかと思うと、そのまま走って行ってしまった。
「・・・何だよ、あいつ‥」
追う事も忘れ呆気に取られている竜巳が、悠介の走って行った方向を眺めて呟く。
「いい、って言ってたじゃんかよ」
そういう問題じゃない事に気が付いていない竜巳は、明日になればきっと機嫌も直っているさ、と軽い気持ちでカバンを背に帰宅した。