泉の精ぱーと13


幼い日のアヴィンとマイルの2人は泉の岸辺で遊んでいた。

ふとマイルは足もとの小石を拾い上げて言った。
「ね、アヴィン、この小石、向こう岸まで飛ばせる?
こんなふうにさ・・・えいっ!」

マイルは小石を水面すれすれに投げる。
ピシッ・・・ピッ・・・ピッ・・ぽと

小石は3回水面を跳ね、向こう岸に落ちた。
水面にはきれいな波紋が広がっていく。

「やったぁ!」
「うまいうまい!」
アヴィンも賞賛の声をあげた。

アヴィンも小石を握る。
「僕だって!」

ひゅっ・・・

アヴィンの投げた小石もきれいに水面を切って向こう岸に落ちた。
マイルの石よりも僅かに遠くに落ちていた。

「どんなもんだ!」
「あ〜・・惜しかったなぁ」
「へへっ」

得意になるアヴィンにマイルが負けじ魂を見せる。
「よ〜し、もういちどだ!」
「おっ、やるか?また負けても知らないぞ」
「そんなことないさ。今度はアヴィンよりもっと遠くに飛ばしてやるから」
「じゃ、僕はもっと遠くに飛ばすさ」

2人は、どちらが遠くまで小石を飛ばせるかの競争に夢中になっていた。
そのとき。

ざざざざ〜〜〜

「わわっ!」
「なになに?」

何の脈絡もなく泉の精が出現した。

「あなたたち・・
何か落としてくれないと話が進まないじゃないですか」

2人は顔を見合わせる。
「え?あ、あの・・・」
「僕たち、落とそうと思ってやってるんじゃないんですが」

泉の精は微笑んではいるが、こめかみにはかすかに青筋が浮かんだ。
「じゃ、どっか別のとこでやってくれません?
あなた達がここで遊んでいると商売の邪魔なんです」
「・・・ごめんなさい」
ぺこんと頭を下げる2人。
「じゃ、よろしくね」

アヴィンとマイルは水中に没していく泉の精を見送る。

「・・・あれって商売だったのかな・・・」
「さぁ・・・」






教訓:友とは2つの肉体に宿れる1つの魂である(アリストテレス)




泉の広場に戻る