泉の精ぱーと9


トーマスとミッシェル、ルカ、アイーダは、
ロゼット工房の近くの泉にピクニックに来ていた。

ジャンケンに負けて3人分の荷物を運ぶ羽目になったトーマスは
泉のほとりでぐったりしていた。

「トーマス、水を汲んでくるからちょっと待っててね」
立ちかけたアイーダをトーマスは制する。
「いいよ、自分でやるから。この泉は見かけより深いんだ。
おまえが落ちたりしたら大変だからな」
トーマスは疲労感いっぱいの体を無理やり起こした。

「っとと」

どぼん!
足元がよろけてトーマスが泉に落ちた。

「あっ、トーマス!」
「キャプテン!」
「おや・・・落ちてしまいましたね」

ざざざざ〜
泉の精が現れた。後ろには3人の人影があった

「あなたが落としたのは金のトーマスですか? それとも銀のトーマスですか?」

3人のトーマスを前に、アイーダ、ルカ、ミッシェルは一瞬呆然とした。

「そんなきれいなもんじゃないわね」
「もっと○×□ですよね」
「ということですので、その方は違います」
泉の精は苦笑混じりの表情をしている。

「正直な人たちですね。
ごほうびにみんなあげましょう」

「えっ!」

3人のトーマスを残して泉の精は姿を消した。

「さて・・・これ、どうしましょうか?」
「そうね・・・」
ルカが提案する。
「せっかく3人いるんですから、1人に1つずつではどうですか?」
「あ、いいね、それって」
「私に異存はありませんよ。
では、どれを誰に分配するかですが・・・おや?」

「じゃーんけんほいっ!」
「あーいこーでしょっ!」
「しょっ!」

「・・・なにをやっているんですか?トーマス」

その声に3つのトーマスがミッシェルのほうを振り向く。
まるで手ブレを起こした写真のような光景にルカとアイーダは引いた。
そんな中でまったく動じる様子のないミッシェルは天晴れである。

「見りゃわかるだろ?じゃんけんだよ」
「ジャンケンはわかるわよ。何のためにってきいてんの」

「何のためって」
「そりゃおまえ・・・」
「誰がラップのところに行くかってことに決まってるじゃねえか」

3つの声がそれぞれ答え、
再びジャンケンをはじめる3種類のトーマスたち。
それを呆れ顔でみているルカとアイーダ。

「もとは同じ人間なんですから決着がつくとは思えないんですけど・・・」
「バカよね・・・」
「ほおおぉぉ〜〜〜」
ミッシェルの声に極上の笑みが浮かぶ。

ミッシェルのの声に冷たいものを感じたトーマスたち。

「やべぇ!」
トーマスたちは泉に飛び込んだ。

ざばざばざば!!

「あっ!しまった!」
めったに大声を上げないミッシェルに、ルカとアイーダは少々驚く。

「どうしたんですか?」
「あ・・沈んでしまいましたね」
「ねね、なにがしまった、なの?」

ミッシェルは、はぁ〜っとため息をついた。

「トーマスが落ちた・・・ということで、再び泉の精が現れるでしょう」
「だから?」
「1人のトーマスが落ちたとき、3人に増えました。」
「ということは・・・」
「そうです。トーマスの数が3倍になるんですよ。
今回落ちたのは3人なので・・・」
「ええっ、じゃあトーマスが9人になっちゃうってこと!?」

ミッシェルは諦観の表情である。
「残念ながらそういうことです」
「ええ〜〜〜!!」

「あたし、そんなにいらない・・・」
「正義の海賊がそんなにいても、ぜんぜんありがたみがありませんしね・・・」
「そんなにたくさん船の中でうろちょろされても迷惑ですよ」

3人がそろってため息をついたとき、泉の精が現れた。
「あなたが落としたのは・・・」

「あっ!」
「でてきちゃった!」
「ではこの場はとりあえず・・・」

ミッシェルは手のロッドを高く掲げる。
「テレポート!」
ひゅんっ!


「あら・・・残念。」




教訓:最も満ち足りた友情にも、卵と同じように、いつもちょっとした隙間がある(ルナール)




なしえさまのリクエストです。
リクエストにしてはめずらしくストーリーがすっと出てきてしまいました。
うーん、しかし、はじめてネタがかぶったか・・(汗)
そのうち別パターンが思いついたらこれは削除ですね。



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