18. 50MHzHB9CVアンテナの検討          de JA1CPA   2014/7/26
         (同軸ケーブル方式)                     写真追加等    2016/10/30

                 目次に戻る     随時追加変更が有ります

 50MHz 2ele HB9CVアンテナの最適な位相角を検討しました。   RaとRefの間隔0.7m,0.8mを追加
                                            3eleも掲載、5eleYagiも掲載、
勝手にアンテナの5要素?
1.運用周波数で共振している(jX=0)
2.インピーダンスは50Ω(R=50)
3.ゲインとF/B比は多く
4.SWRが低い帯域幅は広く(狭いと雨でSWRが変化する)
5.打ち上げ角は低く(特にHF帯、地上高が関係する)

検討結果
 1.エレメントを多くすると八木と変わらなくなるので、一番効率(ゲイン/大きさ)の良いのは、
   やはり2エレメント。

 2.ラジエーターとリフレクターの位相角は、135°~270°の範囲なら大きな違いは無い。
 3.エレメント間隔は0.7mぐらいが最適。(ただし大きさ優先なら0.6m)
  下記で同軸ケーブル(給電ケーブル)と書いているのは、ラジエーターとリフレクターをつないでいる
  同軸ケーブルのことです。
  無線機からアンテナに来ている同軸ケーブルのことでは有りません。  

 下表はHB9CVをMMANAで位相角を変えてシミュレーションした結果です。(自由空間)
   ここでは、位相角135°で共振するようにした。  SWRは調整前の値

  このシミュレーション結果によると、135~270°の間でゲイン、F/Bが良い感じです。
  225°を最適値として、さらに共振(jX=0)するべくエレメントを可変してシミュレーションしました。

 結果は下表の通りです。(自由空間と10mH)  SWRは調整前の値 


 この結果により、作図したのが下図です。給電とマッチングは同軸ケーブル方式です。
 エレメント寸法はシミュレーションによる。給電ケーブル(5D-FB)は過去の資料による。
  
↓↓ 寸法図 ↓↓

 225°の位相角は、次の様にしました。
1.給電点がRa(ラジエーター)が、上部の左側、 Ref(リフレクター)が右側なので、これで180°。
2.Raと Refの間隔が0.6mなので36°。(Refから出た電波がRaに届くまで)
  注)300/50.25MHz=5.97015mが1波長で360°なので、1°当たりの長さは、5.97015/360=0.016584m
    となり、RaとRefの間隔0.6mは、0.6m/
×0.016584m=36.18°となる。
3.225-180-36=9°で、まだ9°不足なので、Ref側の給電線をRa側より9°分長くすれば良い。
4.1°が0.016584mなので、9°×0.016584m=0.149254mとなるが、同軸ケーブル(5D-FB)の短縮率が
  0.8なので、0.149254×0.8 =0.119mとなる。
5.給電ケーブル(5D-FB)は、Ra側は0.7mとしたので、Refは、0.7+0.119=0.819mとした。
  注)Ra側の0.7mは、Ra上を移動させてマッチングする距離が有れば良い。
6.共振周波数は、Raの長さにより調整する。
7.インピーダンスを50Ωにするためには、Ra及びRef上の給電ケーブルの接続点をスライドして調整する。

一般のHB9CVはラジエーター(Ra)中心付近が給電点なので、このポイントでの位相角を計算する。
1.給電点がRa(ラジエーター)が、上部の左側、 Ref(リフレクター)が右側なので、これで180°。
2.Raと Refの間隔が0.6mなので36°。(Refから出た電波がRaに届くまで)
  注)300/50.25MHz=5.97015mが1波長で360°なので、1°当たりの長さは、5.97015/360=0.016584m
    となり、RaとRefの間隔0.6mは、0.6m/
0.016584m=36.18°となる。
3.給電線がRaのところなので、高周波電力がRefに届くのに0.6m=36.18°
4.これで、180+36+36=252°となる。
5.さらに、ガンマーマッチ部分が、RaよりRefが0.1m程度長いとすれば、0.1/0.016584=6.03°
6.合計の位相角は、252+6=258°となる。(上記の135°~270°の範囲)

 製作
1.エレメント、ブーム等
   
  手持ちに有った材料を切り出して、マーキングした。  
   
             ブームの中心部分の表と裏
(M-Rのフランジはブームに接続する)
2.給電ケーブル(5D-FBを使用するが、同軸ケーブルとしては使わないので接続方法に注意)
    
                
両端は、芯線と編組を接続して圧着端子に半田付けする。
    中心部は、編組だけ細線を巻いてハンダ上げする。
↑↑
  
   給電ケーブル(同軸ケーブル)の詳細断面図
↑↑
上図のM-Rフランジ(アース側)はブーム及びエレメント中心に最短で接続されています。
   
(図では省略している)

   
重要注)同軸ケーブルを給電線として使って居るので同軸ケーブルとしては機能していない。
     特に、このケーブル中心部分の芯線は、M-Rには接続されていない。
     従って、送信機から来た高周波電力は、M-R芯線から、この給電ケーブルの編組を通して、
     両端からRa及びRefに供給される。
     一方、送信機から来た同軸ケーブルの編組は、M-Rのフランジ(アース側)からブームを通してRa
     及びRefのエレメント中心部に接続される。(通常の八木アンテナ等と同じ)
     従って、M-Rのフランジ部分は金属的なブームからエレメント中心に接続されている必要が有る。
     この部分は、上図では省略している。(M-Rの芯線しか接続されていない図になっているので要注意)
     以前のアンテナ記事で「送信機から来た同軸ケーブルは、芯線しか接続されていないので電力は供
     給できない」とクレームをもらってしまったので、丁寧に説明したつもりです。
     こんな使い方をしているのは、当局だけでしょう!から、しかたないです

     ここを読んで頂けると少し分かって頂けるかも?給電とマッチンは同軸ケーブル方式です。
     
        ↑ 銅板の代わりにアルミ板でも良い ↑   エレメント上をスライドしてSWRを調整する
  コネクター部分はKE-45T等を塗布する。

ホームセンター等で売っているアルミパイプは外側
が絶縁物でコーティングしているので、差し込む部分
をヤスリ等ではがすこと。
コネクター接触部分も絶縁物をはがすこと。





3.組立  
  
エレメントがブームを貫通
↑↑

 
↑↑給電ケーブルとM-R芯線の半田付け
                                     
同軸ケーブルの編組のみをコネクター芯線
                                  側に半田付けすること。

   
↑↑ 給電ケーブルは、ブームから10mm程度離れるように適度にスペーサーを入れる。
      市販の電線クリップ等が使えるかも?

                      
↑↑ 全景 ↑↑
  注)ホームセンター等で売っているアルミパイプは、外側が透明塗料で絶縁されているので、電気的に
    接触する部分は、ヤスリ等で十分に削り取る必要が有る。

4.(仮)調整
  
①調整の基本は、SWRの調整は同軸ケーブルとエレメント接続点を移動して行う。
  ②SWR最低点の移動はエレメント長を調整する。周波数を低い方にする時はエレメントを長く、高い
   方にする時は短くする。
  ③できるだけ周囲が開けている場所で行う。周囲3~4m以上空間がほしい。
   もしベランダなどで使う場合は、その使う状態で調整すれば良いが、調整出来ない場合も有る。


  ベランダから約1.5m出して仮調整した。
  トップの寸法図通りでの測定 SWR最低周波数:50.65MHz、SWR:1.35
  Raの寸法を左右各20mm長くしたら、下図のようになった。(測定器:AA-1000)
  
  SWR最低周波数がシミュレーション(50.250MHz)より高く50.65MHzになったのは、ブームにエレメントを
  貫通させたのでエレメントが電気的に短くなったと思われる。
  50.65MHzは、コンテストにはピッタリです。
  20+20=40mm長くしたらシミュレーション値50.250MHzでSWR最低となった。
  給電ケーブルとエレメントの接続点を調整すれば、インピーダンスは50Ωに出来るが、仮調整なので
  このままとした。
  注)この接続点は、中心から外側にするとインピーダンスは高くなりますが、その変化は緩やかです。
    調整は、Ra側とRef側を同じ寸法を変化させると良いでしょう。
  設置高さ(たとえば10mH)にした時に確認して、必要なら調整すると良い。
  なお、SWR1.5以下の範囲が狭く、別途検討の必要が有る?。(下記、おまけ)
 
夏場のアンテナ製作は、0500~0600、1730~1830(JST)だけです。(屋外、それでも汗汗)
 このアンテナは、8月のフィールドデーコンテスト(クラブで移動)で使う予定で急遽作りました。
 移動は、φ10の先端エレメントを外して行う。中央のH型分部はそのまま固定している。(幅が0.6mなので)
 チョット、作りが軽いので移動で使うと、1回限りで壊れるかも。
 
・2016/8/7のフィールドデーコンテストで活躍しました。(また来年も使えます)
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おまけ   SWRは調整前の値                                  2014/7/27
 RaとRefの間隔を変えた時のシミュレーションです。(0.7m、 0.8mを追加)

 ゲインは僅かに低下しますが(L=0.7mはF/B比はアップする)、SWR<1.5以下の範囲が広がります。
 また、インピーダンスは高くなるので、調整はしやすくなると思います。
 L = 0.7mにすると、50.0~51.0MHzまでSWRが1.5以下にできそうです。
このあたりが最適かな!

おまけ2 下図、給電ケーブル(5D-FB)の長さは800+900=1700mmにする2014/7/27
  
3eleです。下図はシミュレーション結果です


             ↑↑SWRは調整前の値
余談
エレメントがブームを貫通すると、エレメントがブームの太さの分だけショート(短縮?)された状態になります。
今回の場合は、ブーム幅(径)が、30mmなのでエレメントが30mm短くなったようになります。
しかし、当局の
経験では、ショート(短縮?)されるのは、もう少し少なくて、ブーム幅(径)の70%ぐらいです。
従ってこのアンテナの場合は、エレメント全長は30×0.7=20mm短くなった状態なので、20mm長くすれは良
いと思います。
片側では、10mm長くすれば良いはずです。(すべてのエレメントを長くする)
なお、ブームを絶縁物にしたり、金属のブームからエレメントを絶縁した場合は、このような短縮は考える
必要は有りません。 
ただし、M-Rコネクターのフランジ側(アース側)は、各エレメントの中心と電気的に接続する必要が有ります。
特にRa、Refとの接続は、最短距離で十分低い抵抗値(高周波的に)で接続する必要が有ります。

おまけ  下図、給電ケーブル(5D-FB)の長さは800+900=1700mmにする
 
3eleでφ12を1mに統一しました。下図はシミュレーション結果です。

             ↑↑SWRは調整前の値
・エレメントを多くすると八木と変わらなくなるので、一番効率(ゲイン/大きさ)の良いのは、
 やはり2エレメント
です。

さらに おまけ4                               2014/7/28
  ラジエーター(Ra)をフォールデットダイポールにした5ele Yagi です。
 ゲイン、F/B比等はHB9CVタイプと変わりません。SWRの帯域が少し狭い感じです。
 HB9CVタイプより作りやすいでしょう。
インピーダンスが50Ωなので同軸ケーブル直接接続できます。

                                      SWR<1.5=50.300MHz±0.2MHz

Ra=2782,H=50,Ref=2960,D1=2740,D2=2620,D3=2640(mm)、D2よりD3が長い、X1(X2)がRaからの距離(m)

 注)HB9CVは2エレメントが、エレメント当たりのゲインが一番多く、多エレメントになるに従い、八木アン
   テナと変わらなくなるようです。
余談
アンテナについて、メーカー製と自作の主な違い
①メーカー製はゲインを多少低くしても、アマチュアバンド全体でSWR1.5以下にしている。
  従って雨によって共振周波数が低くなってもSWRはほとんど変化しない。
②自作はゲイン、F/B比を最大にしている。(当局の場合)
  従ってSWR1.5以下の範囲が狭くなり、雨によって共振周波数が低くなった時にSWRが変化する。
一般的に、エレメントを太くすると共振周波数は低くなる。
エレメントに雨が付着するとエレメントが太くなって共振周波数は低くなる。
エレメントが水平だと水滴の付着が多く、エレメントが垂直だと水滴の付着は少ない。
 

  人口雨(降雨水滴の大きさ、強さによって
    付着水滴の大きさが違う)

左 スイスクワッドに付着した雨(天然)
    垂直部はほとんど付着していない

エレメント表面の程度(油、汚れ等)によっても付着
状態は変わってくる
自然が相手なので深入りしても意味が無いのでは!



  ↓↓SWRの帯域が狭いと、雨が降るとSWRが悪くなるのは?(435MHz帯で説明)  2014/7/29

1.送信周波数 435.0MHz
2.雨が降っていない時のアンテナがSWR1(青)のグラフとする(SWR帯域が広いアンテナ)
3.その状態で435.0MHzで送信した時は、SWR1.0
4.雨が降って、共振周波数が435.0MHzから433.0MHzに低くなった。その時はSWR11のようになる。
5.送信周波数435.0MHzのSWRは、1.08となり、悪化は僅かである
次に
6. 雨が降っていない時のアンテナがSWR2(茶)のグラフとする(SWR帯域が狭いアンテナ)
7.その状態で435.0MHzで送信した時は、SWR1.0
8.雨が降って、共振周波数が435.0MHzから433.0MHzに低くなった。その時はSWR22のようなる。
9.送信周波数435.0MHzのSWRは、1.40となり、大きく悪化する
雨が降ったのでSWRが悪くなったのではなく、共振周波数が低くなったので悪くなった。
低い周波数では、SWRが悪かったのが雨が降って共振周波数が低くなったのでSWRが良くなる。
アンテナと雨の状態によって、低くなる共振周波数は違ってくる。

                           
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    おわり