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生物多様性、生態系および外来魚について (パネラー討論・前半) 瀬能 前半のコーディネーターをつとめさせていただく、神奈川県立生命の星地球博物館の瀬能宏で す。魚類の分類学が専門です。 昨日の朝日新聞ほか一連の報道でご存知と思いますが、昨年11月、水産庁からオオクチバスの部 分的容認案、ゾーニング案というものが出ました。それを受けて(2001年)2月9日、日本魚類学界、日 本鞘翅(しょうし)学会、日本蜻蛉(とんぼ)学会の3学会が農水大臣、水産庁長官、沖縄と北海道を除く 都道府県の知事、各都道府県の漁場管理委員会あてに、合同でブラックバス政策に関する水産庁の 方針をただす要望書を提出しました。また、2月20日には自然誌学会連--日本を代表する35の自然誌 系学会・協会からなり、日本魚類学会もふくまれていますが、農林水産大臣と水産庁長官にあてて同 様の要望書を提出しました。 また、その後、2月20日に自然誌学会連合--これは日本を代表する35の自然誌系学会・ 協会からなり、日本魚類学会もふくまれているんですが、農林水産大臣と水産庁長官に あてて同様の内容の要望書を提出しました。生物多様性研究会の資料に一部その内容が 紹介されていますので、見ていただければと思います。 これら一連の動きのキーワードは、いうまでもなく生物多様性の保全です。オオクチバスが人為的に 放流され、在来生物--鞘翅学会、蜻蛉学会の動きからもわかるように、魚に限らずゲンゴロウやトンボ などの水生昆虫、エビなどの甲殻類もふくまれます--への大きな影響があるわけです。この「影響があ る」という認識は、自然誌科学の専門家にほぼ共通した認識と私は理解しています。 その一方、オオクチバスは在来生物に影響を与えないという主張があります。この主張は主に釣りの 関係者からではないか、と理解しています。そこで、前半は生物多様性と、オオクチバスが水域生態系 あるいは生物多様性にどんな影響を与えるのか。この2点のみ議論、討論していただきたいと考えます。 まず、共通の土台を作るため、生物多様性の保全というものがどう理解されているか、確認をとる必要 があります。これについてご意見を。 水口 言葉を巡って混乱があるので、生物多様性、生態系および外来魚について双方で確認する必要 があると思います。まず、瀬尾さんが言われた昨日の朝日新聞夕刊の科学欄の記事について、中井さん や生物多様性研究会の方々にうかがいたい。 「生態系こわすと学会反論」と書いてありますが、生態系のこういう使い方は適切であると思いますか。 中井さん。 中井 生態系の構造が変わるという言い方はできますが、生態系を壊すというと、あったものがなくなる ような印象を受けるかもしれません。十分適切ではないと思います。 水口 学会としては、生態系を壊すなどという言葉は使っていません。1990年代のはじめに「ブラックバス を放流すると琵琶湖の生態系を壊す」とさかんにいわれましたが、私は間違っていると言ってきました。生 態系とは生物とそれを取り巻く環境全体を指しますから、ブラックバスを放して環境を破壊したり大きく変え ることは考えられない。この場合の環境とは、非生物的な環境です。そういうことでよろしいですか。 中井 ……まず、進めてください。 水口 いや、それを確認しないと。岩波書店の生物学事典にも、朝日新聞から出している現代用語辞典に も、エコシステム、生態系とは地域の生物と環境を機能的まとまりととらえた呼称、呼び方とあり、あくまで 生物と環境の両方です。にもかかわらず、生態系を破壊するなどと使われ、みんな地球温暖化と同じよう にすぐ「たいへんだ」だと思う。このあたりが大きな混乱を起こしていると思いま す。生態系とは地域の生物と環境をひとまとまりにとらえた呼称で、あくまで物理的環境とセットで見ると。 次に、生物多様性について、生物多様性研究会のひとりひとりにどう定義するかお聞きしたいと思います。 かくま すみませんが、われわれは専門家ではないので、ちょっと考えをまとめてから話をさせていただき ます。 秋月 ぼくが生物多様性とはこういうものと考えているのは、「なぜ日本にライオンがいないのか。なぜライ オンはアフリカなど一部の地域にしかいないのか。なぜ日本にいるイワナやヤマメという魚は、アメリカにい ないのか」ということです。これがいちばんわかりやすい言葉だと思います。 なぜ、日本の中に動物園や水族館は隔離された形であるのでしょうか。生物多様性ということで考えると、 水族館や動物園なんかいらない、日本の山野に外国の動物を放してもかまわないということになりますね。 でも、(そうはならない)。日本になぜライオンがいないのか、なぜブラックバスはいなかったのか。こういうこ とが生物多様性なのだと思います。 水口 まったくわかりません。いくらなんでもひどいんじゃないですか。生物多様性をそういうとらえ方では。 瀬能 中井さんのほうからもうちょっと補足的発言をいただきましょう。 中井 生物多様性はたいへん新しい言葉です。80年代後半に出て来て、日本ではごく最近に知られるよう になりました。1992年に地球サミットがあり、国際政治の舞台でかなり使われるようになりましたが、「生き 物のにぎわい」ととらえたらいいかと思います。ただし、生き物がどんどん変わっても、新しい生態系、新しい 生物多様性ができるという印象がありますが、今、生物多様性や生態系という言葉は、もともとあったものを 残すべきかどうかを考えるときに使われるようになっているんですね。 生物の多様性や生態系には、いわゆる環境レベルでの多様性もあるし、ある地域にどんな種がどのくらい いるという多様性もある。最近は淡水魚でも問題になっていますが、同じ種類でも地域的に違っているという 多様性もあるし、さらには、ひとつの集団の中でも個体差があるといった多様性もある。4段階くらいの多様性 があるといわれています。が、バスに関して問題とされるのは、ある地域 の種の多様性がどうなっているかである、と理解しています。 水口 生物多様性にはいろいろあるということですね。そして、生物多様性とはあくまで生態系の一部、生態 系の持つひとつの性質、特徴です。90年代はじめ、バスフィッシングやブラックバスは生態系を破壊するとか 撹乱するという批判があったときに、私などから「生態系破壊という言葉は間違っている」と言われた人たちが、 生態系のかわりに生物多様性という言葉を使うようになったんで す。 しかし、(秋月さんのように)、生物多様性をいちばん言っている人がどうもよくわからない。日本にライオンが いないことなんていっても始まらないんで、基本的には生態系における種構成の多様性を(考えるということで す)。その場合、大事なのは(引用)「単に生物の種類の多少が重要なのではなく、類似の程度が一様でない数 多くの種が進化の歴史をへて作られてきたものであり、現に進化を行 なっている主体だからである」、ここで在来種という問題が出てきます。琵琶湖なら琵琶湖生態系という中にお ける、何万年前からいる在来の生物。その組成のことを、琵琶湖生態系というときは問題にしなければいけない んです。「外来種が入って種類が増えたから多様性が増えた」。そんなのは間違いです。 次に外来種の定義を(しましょう)。 瀬能 生物多様性とは、生態系の中で種の多様性があるような状態、もともといたいろいろなものがそこにいる 状態。パネラーの皆さん、そういう理解でよろしいですね。 では、その多様性は維持されていくべきなのかどうか。意見のある方は。 中井 生物多様性は守るべきものとして概念化されてきたと思います。「守るべき自然」とは具体的にどんなも のなのかを考えたとき、生き物をはかるひとつの物差しとして使われるようになってきたと理解しています。 今、地球全体で非常に多くの生き物が、さまざまな開発行為や環境を破壊する行為で追い詰められている。そ れを私たちは知識としては知っていて、どういうことを続ければ(絶滅に近い)特定の生き物が危なくなるかも、 だいぶわかってきている。その中で、滅びようとしている生き物をこのまま滅びさせてまで、私たちはそうした行 為を続ける必要があるのか。それが今、問われていると思うんです。生物多様性に関しては、よく「将来、何かの 役に立つかもしれないから」という言い方がされます。でも、もう少し謙虚に「生き物は滅ぼしてしまうと取り返しの つかな い。取り返しのつかないことはやめよう」と考えたいと思うんです。 水口 しかし、自然保護も環境破壊も汚染も、全部ふくめて生物多様性(の問題)にしてしまうと、混乱してしまいます。 中井さんがいわれたように、生物多様性はリオ・デ・ジャネイロの環境サミットで出て来たキーワードです。日本 の研究者で生物多様性をやっている人はほとんどいません。私は野生生物保護学会という、ある意味でそういう ことにいちばん関心のある学会の第1回大会で、水生生物の放流による生物多様性の変化について報告をしてい ます。そして、まもなく出る野生生物保護学会の学会誌には、沖縄県本島北部の国頭村(くにがみそん)の山原(や んばる)の森の沿岸でおこなわれている漁業について、生物多様性の観点から検討した論文を投稿しています。 そうしたことから、生物多様性の保全に関しては、まったく批判したり否定するものではありません。 ただし、生物多様性といえばすべてが片づくとか、まるで錦の御旗のように生物多様性、生物多様性というのは 混乱を起こすだけです。 高宮 中井さんのほうから業界とかビジネスという話がちょっとありましたので、それについて。在来種が減少した 要因にはさまざまあると思いますが、私ども日釣振では順番的に第一は国土開発、2番目は水質汚濁、3番目は 乱獲と(いうように、順位をつけています)。もちろん、外来種の影響はあると考えているので、財団としても放流事 業を30年で10数億円、ここ直近の13年間では8億2000万円やって……。 瀬能 (発言をさえぎり)すみません。ちょっと論点がそれそうなので。 高宮 業界がというお話があったんで、きちんとお答えしたほうがいいかなと思いましたが。 瀬能 それは、これからのメインの話になってくると思います。 高宮 それでは、次のほうに回させていただきます。 瀬能 今、始まってから20分ほど経過して、残り時間があと30分ほどです。生物多様性の定義とその必要性につ いては、おそらくこれで共通の理解が得られたと思います。そこで次に、オオクチバスが在来の生物に影響をおよ ぼすとかおよぼさないとか、それが生物多様性の減少につながるとかつながらないとか、そういった具体的な議 論を行なっていただきます。 水口 つまり、やっぱり外来魚、在来魚という定義をしておかないと(パネラーと会場からざわめきと苦笑)。だから、 聞きたいんです。秋月さん、琵琶湖の在来種と外来種をリストアップできますか。 秋月 (直接水口氏に答える形で)できないですよ。 水口 できない。じゃ、琵琶湖の何々は在来種ですかといったら、わかる。 秋月 (直接水口氏に)わかるものもありますが。(少しやりとり続く) 水口 在来か外来かで大事なことは、進化の歴史の中で見るということです。そこにもう何万年もいたものは在来 種。それに対して、たとえば、琵琶湖に九州の川のアユを放せば、これもまた外来種であると。 中井 まさにその通りです。「外来種」に関して気をつけなければならないのは、外来という言葉です。日本は島国 なので、外来といえば外国から来たと思われがちです。もちろん、外国から来たものは外来種ですが、国内の移殖 の問題も外来魚問題をふくみうるということを、ご指摘なさりたいのだと思います(水口氏、うなづく)。 われわれ専門家の間でも、外来種とか移入種とかいろいろな言葉があります。あえて 外来種という言葉を使う場合でも、国外外来種と国内外来種という言葉を使うこともあ ります。バスをふくむ外来種の問題は、実は移殖の問題をふくんでいるということは、 これはもう皆さんご理解いただけると思います。 瀬能 では、オオクチバスがある場所に入れられたとき、多様性は低下するのかしないのか。これが両者の意見の 食い違う部分だと思いますが、まずは「害がある」「影響がある」と主張するほうから具体例などを紹介して、議論の きっかけを作ってください。 中井 外来種の食害による影響を見るとき、どこまで少なければ「影響がない」になるのか、どこまで多ければ「影響 がある」になるのか。実はむずかしいところですが、いくつか具体的例をご紹介します。まず、(生物多様性研究会の 資料の)67ページのシナイモツゴの例です。実際に調査にかかわった人に話を聞くと、物理的環境には手を加えられ ていない放置されたため池にシナイモツゴという小魚が非常にたくさんいたのが、バスを確認した直後、ほとんど捕れ なくなってしまった。この魚は青森県の文化財にも指定されている魚ですが、非常に数が減っているし、実際に捕獲 した魚のおなかをあけて、オオクチバスが食っていることも確認されています。 同じく、この資料で新潟県の例です(21ページ)。柏崎市の池でブラックバスのおなかをあけたみたら、トンボの成虫 がいっぱい出てきた。なぜトンボなどと思ったら、この池には魚がいない。ブラックバスが食っている魚はブラックバス の幼魚だけ、つまり共食いしているわけです。地元の聴き取り調査によると、かつてはいろいろ魚がいたそうです。 ところが今は、水草などが残って一見非常に自然度の高い水域なのに、魚はほぼバスだけになってしまった。もしか したら細々と残っているかもしれないが、確認できない状況になっている。こういう事例が出ています。 同じように、バスだけになってしまった事例は研究論文でも(いろいろあります)。たとえば、アフリカのマダガスカル などでも、バスだけになって共食いで魚類群集が成り立っているというのが報告されています。とにかく、バスの影響 があるとする事例は、いっぱいあるということです。 瀬能 「(ブラックバスが生息していても)影響がない」という言葉をよく聞きますが、具体的にものが食われているとか、 影響があるとする学術論文が実際にあるということですね。では、「影響がない」と主張される根拠があれば(テープ 反転で聴き取れず)。 水口 青森県のシナイモツゴの例はそのとおりだと思います。ため池という人間が管理する場所なので、環境に何も 手を加えていないというのは疑問なしとしませんが、ブラックバスが食べたことによってシナイモツゴが減ったというの は十分ありうる。柏崎もそうです。そのほか、長崎大学の東さんの研究など、例はたくさんあります。生物多様性にブ ラックバスが影響しないと言うつもりは、まったくありません。 琵琶湖における漁獲物の多様性について影響があるどうかについては、ブラックバスの影響は見ることがなかなか できないと考えています。しかし、小さい池や沼でははっきりとブラックバスの影響はあります。ブラックバス・フィッシン グをやっている人たちは、雄蛇ガ池(おじゃがいけ)を一回つぶしてまた作ってつぶして、ということをやっていますから、 ご存じだと思います。ため池なんてのは、ブラックバスを入れたら、食べ物がなくなってすぐ自滅してしまいます。 私は大きな湖だけれど、琵琶湖でも(ブラックバスの影響は)あると思います。ただし、それはブラックバスと一緒の生 活空間をもっている、漁獲統計などには載っていない、「その他の魚」という小型で数の少ない魚です。そういうものへ の影響はあると思います。しかし、そういうことを明らかにしないで、ただ漁獲物統計をもとにブラックバスの影響があ るというから、私は批判するんです。 瀬能 水口さんの意見に対して、中井さんの意見ではブラックバスの影響をどの程度評価されるのか、お聞きしたい と思います。 中井 私は琵琶湖から来たので、これは答えなければいけないでしょう。データの問題だと思いますが、残念ながら 漁獲量しかないわけです。しかも、漁獲量は漁獲努力の問題まで考慮しなければいけないので、実際に生き物の 数がどのくらい動いているかを正確に反影しているかというと疑問があることは間違いありません。 琵琶湖でここ20〜30年の間にどんなことがおこったかというと、ものすごい環境破壊がありました。そして、最後の 数年間には、漁獲量の対象になる魚--例外がいくつかありますが、沿岸域で産卵する魚のほとんどすべてが激減 しています。 一方、水産試験場が琵琶湖の沿岸域で20何カ所調査した結果を見ると、ばらつきはありますがオオクチバスとブ ルーギルが捕れた魚の第2位と第4位に来ます。ほかの魚や小動物を食う魚がこれほどいるというのは、どういうこ となのか。捕獲したバスのおなかをあけると、当然魚を食べていたりエビを食べていたりするわけです。そうしたこと から、バスと在来種減少の間にはかなり高い因果関係があると推測することは、十分できると思います。データがな いために直接結びつけるのがむずかしいことは認めますが、だからといって影響がないということにはならないし、か なり影響を与えていることは間違いないと思います。 瀬能 水口さんも中井さんも、影響の大きい小さいはなかなか測れないが琵琶湖でも影響はあるだろうとおっしゃる わけですね。あと、ため池とか小さな水域でも影響はあると。影響があるという点では共通の理解が得られたと、私 は理解しました。現実には「バスの影響はない」と書かれた文言もよく目にするんですが、そのあたりについてのご 意見は。 水口 中井さんに反論したいと思います。論点を変えて行って、最後に琵琶湖のアユ、マス、ウナギ以外のものにも ブラックバスの影響がかなり大きい、という結論になるように話されましたね、今。 中井 はい、そうです。 水口 そのことを私は問題にしているんです。中井さんは「エイシャント・レイクス」(という雑誌)の中に、非常にわかり にくいブラックバス叩きの論文を載せていますが、そこに引用した資料(滋賀県の農林水産統計の魚種別の漁獲量) をもとに、私もひとつ見方を明らかにして行きたいと思います。 この問題はこれまでほとんど研究されてきませんでした。1960年代に京都大学の中井さんの先輩たちが、建設省 からのお金で琵琶湖総合開発のための環境影響調査をしました。そのときに膨大な生態がわかりました。中井さん も「これだけいた」と種類をあげています。しかし、琵琶湖総合開発がはじまって琵琶湖が護岸工事され、埋め立て や汚染が進行する中で、琵琶湖の魚が増えたり減ったりの研究はゼロです。今回調べて驚きました。ですから、中 井さんが唯一「エインシャント・レイクス」に書いたのはダムで、何も引用できない。 中井 (席から何ごとか発言) 水口 そうですよね。それはお認めになると思います。そんな中、東京水産大学育成学科の大学院生のモリタくんが、 琵琶湖における漁獲変動、環境要因、種間関係に関する統計的検討ということで、同じ資料を用いてやっています。 結論としては、この論文の中にブラックバスのブもありません。はっきり言ってこれはお粗末な論文です。環境要因 として水位の問題も扱っていないし、放流量がどうだというのも書いてありません。あまり迫力はないんですが、残念 ながらこれがこれまで行なわれた唯一の検証です。 そこで、私はもう少し手を加えて、グループ分けしてやってみました。まず最初にグループゼロ。初期の段階に変動 した生き物です。シジミと他の貝類とウナギ。いちばん最初に、セタシジミが死んで琵琶湖では大きな問題になりまし た。が、何の手も打てずに事態が進行した、これは中井さんも認めるところだと思います。原因はまだはっきりわかっ ていません。それに対して、ウナギは単に放流量が減っただけです。放流をやめたから(減った)。こういうふうに、ひ とつひとつの魚種の原因は異なるわけです。 次に、グループ1。かなり早い時期に減りはじめて、現在非常に減っているものです。イサザだけがハゼで、あとは オイカワの仲間です。私はオイカワを大学院のときに研究しているので、1960年代琵琶湖をいっばい見ています。そ のときはよかったのに、1990年頃にはオイカワ釣りに行くたびにブラックバスとブルーギルしかいないということは、よ く知っています。 そして、さらにもう少し頑張ったけれども減っているグループとして、ホンモロコとハスと他の魚類、スジエビ、テナガ エビがあります。ホンモロコとハスは食う食われるの一群。漁師はよく知っています。ハスはホンモロコを非常によく 食べます。こういう食う食われるものがセットで変化することは、十分に考えられます。相互依存していますから。エ ビについてはのちほどお話しします。 そしてグループ3。どんどん増えていて、つい数年前から減りはじめた魚で、小アユとマスとアユナエです。これは中 井さんも指摘しているとおりです。小アユとマスとアユナエがどんどん増えたのは、琵琶湖総合開発で水位が変動して アユが産卵できなくなったために、ものすごいお金をかけて人工河川を作ったのですが、この人工産卵床でどうにか もたせながらやってきた結果です。マスも同じ ことです。ところが、1994年に大渇水があり、それ以降、アユやマスは自然に産卵もできなくなって非常にきびしくな りました。そういうこともあって、94〜95年から今まで、人工で維持しているから影響がないと思われていたものまで、 水が下がったことによってどうしようもなくなった。これは琵琶湖総合開発のツケです。ですから、水資源開発公団は 藻場の調査などいろいろなことをあわててやっています。 瀬能 ちょっと時間がおし迫って来まして。琵琶湖の場合、ブラックバス以外の原因で魚類の減少があったとおっしゃ りたいのでしょうか。 水口 というか、ブラックバスの影響を明らかにすることはできないと。ないとはいえませんから、はっきり。 中井 琵琶湖の環境破壊、湖岸の破壊にものすごいものがあったことは、みんなが認めています。行政も認めはじ めていて、今度は琵琶湖の総合保全だと。これまた批判があるでしょうが、とにかく場[環境]がつぶれていった。そ れでも、バスとギルは相変わらずものすごい数がいるというのも、間違いない事実です。彼らはいて、食べる。どの程 度影響を与えているかを調べるのはむずかしいが、 それでも環境破壊で追い詰められている中に、さらにとどめを刺そうとしているのが外来魚だという認識を私はしてお ります。それくらい、外来魚の数はまだまだ多いというのが私の見方です。 水口 (挙手)ちょっと。 瀬能 えーと、時間がですね。 水口 いやいや。一方的にまだブラックバスが問題だみたいなことに対して、きちっと 事実を見ておかなければならないんで(会場一部より大きな拍手)。 瀬能 今のが一方的な見解とは思いませんが。影響としては、琵琶湖総合開発と環境の改変による影響が大きいと。 これは中井さんも認めるところですし、私も今説明を聞いて非常に納得させられました。 水口 ただ、今現在、ブラックバスが琵琶湖で増えているかどうか、事実を見なければいけないということです(会場 一部より拍手)。 バス釣りをする方はご存じのように、今から10年くらい前は琵琶湖にブラックバスが非常にたくさんいました。漁業 組合が河口湖などに売るために一生懸命とったので、統計が出ているんです。補助金が出ているから(捕獲)量を出 さないといけないんです。バス釣りをする人たちは、その何十倍もキャッチ&リリースしていると思います。そして、キ ャッチ&リリースとは1割ずつ殺す作業ですか ら、漁業組合が駆除し、釣り人が釣ることによって、バスはいちばん増えた時期に比べると非常に減っています。 そのかわり、県の統計ではまだブルーギルが出ていません。県は昨年90万円ですか、ブルーギル駆除のために補 助金を投じているということで、県の推定ではブルーギルが2500トンいるというんですね。琵琶湖にはブラックバスも いるけれども、それ以上にに多くのブルーギルがいる。これをやっぱりきちっと駆除しなければいけないと思います。 瀬能 ブラックバスが減っているとという事実は、動かしがたいことだと思います。それでも、中井さんのお話にあった ように、バスが減っているとはいえほかの魚が食われているのは事実と私は理解しました。 琵琶湖はシンボリックな場所なので話題に出てしまうんですが、残りの時間を使って、さっき事例に出たため池とい う場所の重要性について、少しお話しいただければと思うんですが。 水口 それについては反論がなければいいんじゃないですか、それ以上。ブラックバスとブルーギルのことをきちっと やらないと。ただブラックバスブラックバスと騒いでいるのがおかしいっていうんですよ。問題はブルーギルですよ、今 やらないといけないのは(会場一部より拍手)。いかにもブラックバスが問題があるというような言い方で話してますから。 瀬能 ブラックバスを論点に据えたシンポジウムですから、当然、そこが中心になると思います。ブラックバスがだめ でブルーギルはいいという意見はまずないと私は考えますが、ご意見はありますか。 かくま ブルーギルについてもどんどん言っていただきたいと思います。われわれも歓迎します。 水口 琵琶湖のことはこれ以上いやということなので、次に霞ヶ浦にいきたいと思います(会場より笑い)。 瀬能 霞ヶ浦の話をするまでもなく、これまでの議論の中で共通の理解が得られたと感じましたが、どうでしょう。 水口 霞ヶ浦の話はしなくていいということですか。というのは、秋月さんとかくまさんは発言の根拠を、研究者として の中井さんに頼っているところがある。ですから、そこのところをきちっとしておかないと。また秋月さんが何か言い、 じゃ、あなたは何を根拠にするんですかと言ったとき、中井さんがこう言っているでは終わりでしょう(会場笑い)。だから、 自分で調べて自分の意見をもたないと。事実を知らないとだめなんですよ。 瀬能 それ(霞ヶ浦の事例)がなくても、後半の議論はできると私は考えます。後半のほうがおそらく広汎な内容をふ くんでいるので、できれば次の論点に移っていただきたいと考えます。 水口 1分でいいですから。お手元の資料に載っている元茨城県内水面水産試験場におられた浜田さんの論文を見 てください。「生物科学」の昨年(200年)1月に書かれています。私も25年間、霞ヶ浦で研究していますからよくわかり ますが、ここに書いてあるような新外来魚、ブラックバス、ブルーギル、アユ、ペヘレイ、ハス、アメリカンキャットフィッ シュなどが、今、霞ヶ浦に増えています。浜田さんはその根拠として、○○(聴き取れず)の水ガメ化、下地川?逆水門 の締めきり、富栄養化などで魚種が変わって行った、ということを理路整然と書かれています。ブラックバスのことは 一言も書かれていません。ところが、浜田さんのように理路整然としないといけないところを、中井さんは全部ブラックバ スのせいにしています。ですから、私は霞ヶ浦のような研究を琵琶湖でもやるべきだと皆さんに言いたいわけです。 これは内水面の資料で、ブルーギルとブラックバスの漁獲量の変化です。このように霞ヶ浦でもブラックバスは減っ て、ブルーギルが増えています。そして、今、琵琶湖ではブラックバスとブルーギルの共食いが起こり、なおかつブラッ クバスの20パーセント以上には脊椎骨異常があり、ブラックバスは非常に哀れな植民の状態です。侵入者でもなん でなく、ブラックバスは琵琶湖で非常に哀れな状 態になっています。それが事実だと思います。 瀬能 中井さん、いかがですか。 中井 私もバスは非常に哀れなかわいそうな魚だと思います。その点は同意します。ブラックバスよりブルーギルが 多いというのも、漁師さんも認識しているところですから事実でしょう。県の推定値も出ていますし、それをどうこう言 うつもりはありません。琵琶湖のバスはたしかに減っている。これは私自身、認めています。ただ、それを具体的に するのは非常にむずかしいです。漁獲統計というのは水口さん自身が分析・批判されていますが、それがそのまま 数の動向と対応しているかどうかはわからないんですね。それでも、漁師の方も言う、釣り人も言う。だから、減って いるのは間違いないと思います。 しかし、かなり減ったといわれていても(問題はやはりあります)。バスが減ったと言われはじめたのは90年ですが、 94年〜95年の調査でもバスはまだまだたくさんいたし、未発表で申し訳ないんですが私の潜水調査でも、オオクチ バスは肉食性の魚としては多すぎるのではないかという個体数を保っています。問題にしなければならないのは、 減ったからどうかというより、今いる量がどうなのかということだと思います。実は、それを分析するにはたいへんな 調査をしなければいけないんですが、(影響が大きいということが)わかってからでは遅い。やはり危険性を訴えると いう意味で、バスの問題は(取り上げることが必要なんですね)。 それにしても、なぜバスばかりとおっしゃりたい部分があると思うんです。琵琶湖にしても、ギルのほうが影響は大 きいと思います。けれども、日本全国で今、何が問題かというと、バスがまだ広がっていることなんですね。オオクチ バスは過去だけでなく今も広がっているし、コクチバスもどんどん広がっています。ということは、琵琶湖やそれぞれ のため池で起きた現象は、今後もあちらこちらで続いて起きり、とめられないということなんです。そのような水域で はブルーギルが入っているところもありますが、入っていないところもいっぱいあります。オオクチバス単独で問題が 起こっているところも、たくさんあるということです。 バスとギルの共存水域においてはブルーギルのほうが影響が大きくなる、ということは私自身認めています。しかし、 それは「バスが減って影響が少なくなったからそれでいい」というのとは、また別問題だと思います。 水口 私は「だからいい」なんて一言も言っていません。事実をまず明らかにしなさいと言っているだけです。いいな んて言ってませんよ、一言も。 瀬能 結局、霞ヶ浦の話はともかく、琵琶湖についてはブラックバスの影響をだれもが納得できる形で調査する必要 である、ということですね。それがなされない限り、科学的にものを言うことはできないと。ただし、中井さんの主張に よれば、調査が十分でない現状でも、水にもぐればブラックバスは現にたくさんいる。だから、バスが影響を与えてい るかもしれないという認識は、もっておく必要があるということですね。 前半の議論は、ある意味で非常に有意義だったと思います。多様性の保全が必要であるということと、ブラックバス が在来の生物多様性に影響を与えていないとは言えないということ。これは水口さんからもはっきり言っていただき ましたし、実際そういう事例があるという事実確認もできたと思います。 かくま 冒頭、マスコミの報道のあり方から出発した議論だと思いますが、私もマスコミにたずさわっている人間として 言葉を選ばなければいけないし、科学的に論じる必要もあると思いました。見出しひとつで、事実関係が変わるおそ れがあるわけですから。 同時に、バス釣りを擁護するマスコミのほうも、もう少しバスという魚の位置づけや生態系の話などを、水口さんの おっしゃるようなやり方考え方できっちり書いていただきたいと思います。われわれシロウトから見ても、あまりにおか しな擁護論がまかり通っていると思います。 瀬能 非常に有意義な形で前半戦を終わることができたと考えます。後半は21世紀の釣りのあるべき方向性という ことで、非常に広汎な内容をふくむと思いますが、天野さんにお願いしたいと思います。 |