4月30日放送「これでいいのダ!日本列島あかるいニュース」一部

話してることと同じ内容のテロップは省略してますが、ここを強調したいんだろうな、というところは残しました。
ナレーションは女性のアナウンサーです。

スタジオ。
鶴瓶「さて、続いては南原キャップのレポート、良いと聞いてますねぇ、これは」

南原「この番組の若いディレクターに藪木(やぶき)という奴がいまして、この藪木という奴に何も聞かされずにロケに行ってきました。」
(「藪木」を妙に強調。判りやすく何か含みのある表情)
南原「ご覧ください、どうぞ」(笑顔で画面に向かって手を延ばす)

テロップ「都内スタジオ」

藪木「(ノックして)失礼します」
「NANDA 南原清隆様」と書いてあるドアを開けると、白いポロシャツ(下に淡いグリーンのTシャツが見える)、淡い青のジーンズ姿の南原さんが茶色いソファに座っている。

藪木「一つお願いごとがありまして」
南原「ほぉ」
藪木「僕、一つコーナーを任されることになったんですよ。」
南原「おぁ。おめでとう」
藪木「それで、ぜひですね、一人会って頂きたい人がいるんですよ。ロケに出て欲しいんです。僕と一緒に。」
南原「えっ?」

ナレ「藪木は新聞の切抜きを持っていました」
黒い画面に白い文字のテロップ「会ってほしい人がいるんです」

南原(うつむきながら)「めんどくせーなー」
藪木「めんどくさいって」
楽屋にスタッフ?の笑いがおこる
南原(顔を上げると笑っている)「正直」
藪木「そこをですね、僕を助けると思って」
画面下にテロップ「藪木健太郎32歳。ディレクター人生崖っぷち。妻子あり」
藪木「これで一本立ちしないと」
南原「(真剣な表情)うん」
藪木「もう妻と子供もいるんで」
南原「うん。妻と子供ねー。でもそんな事情、誰でも持ってるからね(笑)」
藪木「そうなんですよねぇ」
スタッフからも笑いがおこる
藪木「そこをなんとか。この人に触れて」
南原「うん」
藪木「あの・・・」
言葉が出てこないで、手をぱたぱた動かす
藪木「良い、コーナーにしませんか?」
南原さん笑いながら、しどろもどろの藪木さんの頭をはたく。
南原「信用するよ。あえて、見ない。これは」
藪木さんの持っていた新聞記事を裏返す。
黒い画面に白い文字のテロップ「あえて見ない」

ナレ「こうして、ナンチャンは詳細を聞かぬまま東京駅にやってきました」

東海道・山陽新幹線乗り場という案内が映る。
旅行かばんを肩に背負って南原さん登場。ベージュの上着。中に薄紫のシャツ。ズボンが薄茶色。

藪木「そんなに離れてないんで・・・とりあえず」
南原「新幹線だろう。離れてるんじゃないの?」
地図が画面に出る。東京に赤丸。そこから線が延びて、名古屋まで線が延びる。

ナレ「新幹線で、そんなに離れていない名古屋へ」

テロップ「2時間35分経過」
名古屋の駅名表示板が映る。
ホームを移動する南原さん。
藪木「ちょっとだけ電車に乗るんで」
南原「本当に?」
再び地図が出る。今度は名古屋に赤丸。そこから線が延びて、鳥羽へ。

ナレ「ちょっと電車に乗り、三重県鳥羽市へ」

テロップ「5時間10分経過」
鳥羽駅の駅名表示板が映る。

駅から外へ出た南原さんが映る。
南原「会おう。会いに行こう」
藪木「あのー、タクシーじゃないんですよ」

画面転換。画面に海が映る。

船に乗っている2人。
南原「なー、藪木。俺がこれから会う人って、どんな人かもう教えてくれよ」
急に土下座する南原さんに、慌てる藪木さん。
南原「頼むよ。教えてくれよ、藪木。もうロケが不安なんだよ」
窓に映るスタジオの鶴瓶さんが「そりゃそうやろ日本こんだけ(音が重なって後は聞き取れません)」と言う声が入る。
藪木「(新聞のコピーを南原さんに渡しながら)この記事・・・」
記事を見る南原さん。

画面に新聞記事が映る。

ナレ「その記事は、自治医科大学助教授の地位を捨て、伊勢湾に浮かぶ離島、神島の診療所に赴任した本物のDr.コトー、奥野正孝さんを取り上げたものでした。」

藪木「この人に会ってもらって、この人は“本当に幸せなのか”聞いて欲しいんです」
記事を読みながら、言葉無くうなづく南原さん。

黒い画面に、白い文字のテロップ「あなたは 今 幸せですか?」

藪木「で、あの、あらかじめ言っとくと、もうこれで最終(便)なんですよ。」
南原「え?」
テロップ「泊まり?」
藪木「これで戻る船はない」
南原「(腕時計を見ながら)いやいや、まだ昼の2時半だぜ?」
藪木「いや、あともう一便あるんですけど、それは来る便だけなんですよ。」
南原「えぇ?」

テロップ『幸せですか? 「白い巨塔」から「Dr.コトー」へ』

南原「本当に、ここごく一部だけ、水際だけがすっごい密集してるな」

ナレ「東京出発からおよそ7時間、ようやく神島に到着しました」

テロップ「7時間経過」
船を下りる2人。

ナレ「ここ神島は伊勢湾の入り口に位置し、人口500人あまり。外周4キロほどの小さな離島。島民のほとんどが漁業に従事し、三島由紀夫の小説、潮騒の舞台でもあります」(ナレーションの間、島を紹介するVTRが流れる)

南原「診療所ってこん中?」
建物の入り口。子供たちがたまっている。
子供「この中」
南原「奥野先生っている? 今いるかな?」

診療所入り口。ドアを開けて中に入る南原さん。
南原「失礼しまーす」
奥野「こんにちわ」
南原「こんにちわ。南原と申します。よろしくお願いします」
奥野「よろしくお願いします」

ナレ「神島診療所所長、奥野正孝さん。自治医科大学助教授の地位を投げうって、ここ神島の診療所に赴任。そのエピソードは美談として新聞にも大きく取り上げられました」
握手をする2人。
南原「初めまして」

漁港の防波堤の上(?)にあぐらをかいて座っている奥野さんと南原さん。
奥野「あの、見て判るようにこの、横が400メートルぐらいで、奥行きが200メートルぐらいしかないんですよ。全部その中に入ってるんです、500人が」
南原「あっち側はないんですか?」
奥野「ないです、ないです。見えてる範囲がこれで全部です」
南原「これがこの神島の全て?(笑)」
奥野「全て。全てです」
南原「えーあの新聞とか、この藪木(と横を指さす)に聞いたりすると、もう助教授、果てはもう教授になって、そのまま大学に残ったら(頭をさげて)お、教授さまっていう風になるんですけども、それを何故、ま、捨ててというか一端おいて、こっちに戻ってきたんですか?」
奥野「戻りましたね」
南原「それはなんで、なんでですか?」
テロップ「なぜですか」
南原「使命感とか正義感みたいなもんから来るものなんですか?」
奥野「いや、それはないでしょうね、そういうの。あんまりそんなに考えてない」
南原「(笑い)」

ナレ「自治医科大学を卒業した奥野さんは、卒業生の義務として1980年から2年間、ここ神島で僻地医療に従事しました」

南原「にじゅう・・・」
奥野「8ぐらい」
南原「28ぐらいで」
奥野「内科しかしてなかったので、他の科が出来なかった」
南原「はい」
奥野「だけども島の方は、多分なんでも出来るだろうと思って」
南原「よく先生いらしたーって」
奥野「そうそう。大歓迎会してくれるわけですよね」
南原「そこでもうなんかね、僕は何も出来ませんって」
奥野「言えないですよ、だから。いえませんよね」
南原「はい、はい」
奥野「もうなんかどうしようと思って、夜なんかあーってもう寝ながら。最初の二年間は。」

ナレ「自分の未熟さと向き合ううちに最初の2年間を過ごし、奥野さんは神島を離れました」
テロップ「二年の勤務の後 離島」
ナレ「しかし2年後、再び島に戻ってきたのです」

南原「これ、またなんで戻ってきたんですか」
奥野「あのー、これ微かな記憶なんですけど、辞める時の送別会の時に、その人はあまり考えていってないと思うんですけども、その酒のついでに、俺が死ぬときにはお前が看ろと、最後を看取れという風に言われたんですよ。やっぱりそういうのって引っかかるんですよね」
(途中、南原さんが何度か相槌を挟む)

黒い画面に白い文字「俺が死ぬ時には お前が看取れ」

ナレ「神島に戻った奥野さんは島の人々との暮らしの中で、絆を深めていきました。しかし、4年後。再び、神島を離れます」
縦テロップ「4年後 自治医科大学へ」

奥野「ちょうど35歳なんですよね」
南原「はい」
奥野「あの頃ってちょっとおしりがむずむずしてくる頃なんですよ。何かそうじゃないとか」
南原「はい」
奥野「何かやってみたいとか」
南原「はい。まだ何か別の自分がいるんじゃないかとか」
奥野「それがあったんですよ」

ナレ「大学に戻った奥野さんは順調に実績を重ね、助教授にまでなりました。しかし、10年後。また神島に戻ってきたのです」
診療中の奥野さんを、部屋の奥から見る南原さん。ゲットスポーツで小宮山さんを見てる姿と重なる、真剣な表情。

黒い画面に白い文字のテロップ「なぜですか?」

奥野「やっぱりこの大学の教員になっていくと、ま、一般的に偉くなりますよね。そうするこう、いろいろと持ち上げていただけますよね」
南原「はい。先生、先生とか」
奥野「そうすると、それが自分の実力と違うってことが自分で判るわけですよ」
南原「良いじゃないですか。実力以外のところで認められて。そのままおだてられて。周りが言ってるんだから、それに乗っかるって言う手もあるわけじゃないですか」
奥野「かもしれないですけどねー」
南原「それが嫌だったんですか?」
奥野「そうですね、それはありますね、ええ」
奥野「ここですと、あの、田舎の医者ですから。まぁ、大したことないですからね、そういう評価っていうのは、そういう風にくだされる。だから普通にみんな接してくれるわけですよ」

場面が宴会場へ映る。島の人たちと囲む会食。何故か南原さん、赤いベスト(還暦のおじいさんが着るような奴)を羽織っている。
島民「特別にドクターって言う意識は無いよね」
南原「あぁ、そうですか」
島民「友達感覚やもんね」
島民「病院へ行くっていう時は鳥羽行くから」
みんな笑う。言った人を指さして笑う南原さん。

再び防波堤の上のVTRに戻る。
南原「大学にまだ籍(席?)はあるわけですか?」
奥野「いや、もう籍(席?)はないですね」
南原「え、もうないんですか」
奥野「もう辞めました」
南原「えぇっ。もったいない」
奥野「そうでもないですよ」

また宴会場に場面が切り替わる。
南原「中学生に、ドクターってどういう人って聞いたら、変な人とか、面白い人って言ってましたよ」
奥野「あいつらめ」
会場に笑いがおこる。
奥野「奴らの弱みもつかんでますけどね」
口を押さえて笑う南原さん。
奥野「こっちも多分、つかまれとるんですけどね」
島民「子供の言うとる事は本当やでね」
笑いがおこる。

防波堤の上。
南原「未練とかないですか。大学に残って・・・」
奥野「ないですね。全然」
何か言いたそうにして言わない南原さん。

再び、宴会場
島民「白衣ってきとるっけ、あんた?」
奥野「着てない」
島民「白衣着やん医者やもんね」
奥野「では、なぜ白衣を着るんでしょう?」(南原さんに手をさして)
南原「えー、医者らしく見えるから(笑)」
奥野「いや、そうなんですよ」
南原「(何を言ってるんだか聞き取れません)」
奥野「大学病院行ったら、白衣を着るんです。絶対に。何故ならこの姿(シャツの上のセーター姿)で大学病院にいたら、私は?」
南原「患者ですね」
奥野「そうですよね。そういうことなんですよ。ここにいれば僕が医者ということは島の人全員が」
南原「知ってるから、(白衣を着る)その必要は」
奥野「ない」

ナレ「白衣を脱いで、見えてきたものがあります」

防波堤。
奥野「この狭い、ちっちゃいとこですからね、すれ違うと顔色が悪かったりとか。子供たちもね、いつも元気で飛び跳ねてるのに、あれ今日はどうしたのかな、とか」
南原「あー」
奥野「財前ゴロウ(漢字が判らない。白い巨塔の、唐沢さんがやってた役?)のように手術をしてっていうのも、絶対あると思うんですよね」
うなづく南原さん
奥野「それと同じように、私はこっちにいた方が、あの楽しいし、楽だし、面白いということなんですよね」

ナレ「それは大学病院では触れることの出来ないものなのかもしれません」

防波堤。
南原「神島は好きですか?」
奥野「そうですね、うん。ま。大好きですね、ここはね」

宴会場。
奥野「(自分の手のひらを縫う仕草をしながら)自分で縫ったんです」
南原「うわぁー」(今、目の前でやられてるように大きなリアクション)
奥野「でもへたくそでね、ホント、ホント」
笑いがおこる。
島民「ちょっとそういうこと、オラの前で言わんといてくれる?」

テロップ「翌日」
海に朝日が昇る。浮かぶ船。

船に乗るところ。奥野さんと握手をする南原さん。細い赤いラインの入ったシャツの上に、淡いグリーンのセーター。
南原「どうも先生、いろいろとありがとうございました。」
奥野「いや、こちらこそ」
南原「楽しかったです」

南原「最後に質問しても良いですか?」

奥野「どうぞ、どうぞ」
南原「この神島で、今暮らしてらっしゃいますけども、先生は今、幸せですか?」
奥野「幸せですね。とっても幸せです」
南原「とっても幸せですか」
奥野「そうですね。やっぱりこの、だんだん島の風景に、景色になれて、自分がなってきたのかな」

船視点で、見送る人たちが映る。
南原「お元気で。またお会いしましょう」
両手を振る南原さん。

南原「来てよかったよ」
藪木「僕もよかったです」
南原「あぁ、よかったな、藪木」
画面に映っていない、藪木さんの肩(?)に手を置く。
南原「一日だけどなごり惜しくなるなぁ。」
藪木「そうですね」
南原「不思議なとこだよ」
船の屋根を支える棒を握りながら、体の向きを変える南原さん。
藪木さん、一人笑っている。
南原「また荒れるなぁ」
ふざけて、南原さんに体当たりをする藪木さん。
南原「お前、俺を殺す気かぁ!」(大慌て。そんなに強く押されてないですって)

ナレ「島が奥野さんを求めていましたが、奥野さんの求めているものも島にあった。幸せな出会いがそこにはありました」

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