短歌


「自然血族」

草餅に草はつなぎの母子草摘めば縁のやわらかきこと

離さじの覚悟の少し愛に似ててんとう虫がありまきを吸う

紫陽花の花色移りゆく陰にしゃがみて第二次性徴の雨

若き日の夢の未だに夢なることの恥に縊れし烏瓜かな

曼珠沙華に燃やしたきもの訊ぬれば「白花曼珠沙華」と答えき

枯葉また枯葉踏み分け餌を探る鳩は古血の色の目をして

ときどきは私を引き裂きたき我の鉤爪求むふくろうのカフェ

 
招待作品として『短歌生活 7号』 所収


飛ぶ鳥の軌跡たわめて大きなる風の吹くとき手を繋ぎゆく

 
自由題・予選通過『短歌生活 7号』 所収


老いし人戻らぬ庭の花柚子の実に寄る皺のその人に似て

惜しまれず去る稽古場のドア外し背中のかさぶたとしてしょっていく

 
『第三十五回 全国万葉短歌大会作品集』 所収


南天の白き小さき花散れば泥土にも未知の星図ひろがる
第6回角川全国短歌大賞 題詠準賞

 
題詠「星」 『短歌生活 6号』 所収



食卓のバター黄金の子の夢に溶けて朝寝の夏休みかな
自由題・予選通過『短歌生活 6号』所収



街を行く女の足の細く長く伸びてゆく夏心太喰ふ
第5回角川短歌大会 佳作 佐々木幸綱選

おむつたたみのボランティアしつつ六歳の娘サンドイッチのレシピを語る
憎まるるほどの器にあらぬ吾は和み別れきお山のボスと

人待つことを忘れた祖母に会いにゆく車は逃げ水を逃がして走る
予選通過
水蜜もぐように取り込む年ごとにサイズ大きくなる子ども服
ほたるこい恋の終わりに沈むべき静かなる水わが胎にあり

(自由題3首/題詠「水」3首)『短歌生活 5号』 所収


金星は熱すぎ火星冷たすぎ地球さみしすぎエイリアン死す

第42回全国短歌大会 佳作 高野公彦選
『角川短歌 2014年1月号』 所収


無精髭の聖者のごとき友還る遠きインドの地の熱を帯び

万葉のうた 万葉賞