とある日常のヒトコマ

媚薬
<天蓬×八戒>


何度も何度も唇を深く重ねては舌を絡める。
二人の唾液だけでは無い液体を彼に飲み込ませるよう、覆い被さって軽く拘束して。液体の味が薄まる度、グラスから追加してはまた舌を絡める。
「もぅ……いい加減にしたらどうですか」
息が上がって来てる八戒が口内の液体を飲み下して、首を振ってキスから逃れた。さっきまではそれをしつこく追いかけていたのだが、そろそろ解放してあげようかななんて思ったので、顔を少し上げた。
「イイじゃないですかキスくらい。減るものでも無い」
「減りませんけどね、僕が言いたいのはそのキスくらいをどれだけ続けるのかってことです」
「僕の気がすむまでですかね?」
「解放する気は無いって聞こえるんですが」
「そんなことは無いですよ?」
「ていうか、何で今日はずっとキスなんです?キスが大好きなんて可愛いキャラじゃ無いでしょうに」
酷い言われようです。その通りだけど。
「折角美味しいお酒が手に入ったんですから、一緒に飲みたいじゃないですか」
「それなら普通に飲ませてください」
「美味しく無いですか?」
「美味しいですけどね」
「それは良かったです」
「良くないです。百歩譲って口移しは良いとしても、せめてコレは外してください」
そう言った八戒が上げられたままの腕を少し動かした。チャリ……と鎖が鳴る。
そもそも僕が来店した時、八戒は奥のソファーに座って一人で飲んでいた。ので、今日手に入れたばかりの秘蔵の酒を持って彼のところへ押し掛けたのだ。そして僕を見て隣を開けてくれた八戒の手を掴み革ベルトで両手首を拘束して壁の燭台に引っ掛けてみたり。その気があれば外すことは出来る程度の拘束。そこから酒の口移しを30分程。
多分そこまで抵抗する気も無いのだろうが、ソレ、意外と致命傷ですよ?教えてあげませんが。
「たまには拘束されてみるのも良いでしょ?」
「貴方は質が悪いから嫌です」
「酷いですねぇ」
事実だけど。というか、そこまで解っていて僕の持ってきたお酒飲むなんてね。口移しだから安心したんでしょうかね?
あ……少し身体が熱くなってきた。
そろそろ効いてくる頃ですね。新しく開発した超強力な媚薬が。
甘いですよねぇ。僕が飲むのが嫌なワケじゃないんですから、口移しも全く問題無いってことに気付いていないなんて。
覆い被さったまま少しだけ身体を擦り付けてみると、八戒の身体がピクッと震えた。
酒のせいでは無いだろう熱で頬を染めて、僕を睨む目がもう潤んできている。
「何を、飲ませたんです?」
「貴方が思っている通りのものですかね」
「どうやって……」
「口移しで」
「は?」
意味が解らないと言った顔の八戒の膨らみ始めてる股間に僕の勃ちあがってきているソレを擦り付けると、八戒は呆れたような溜め息を吐いた。
「何で貴方まで飲んでるんです……」
「僕も気持ち良くなりたいじゃないですか」
薬で強制的な快楽に呑まれるのも愉しいし、気が狂わんばかりの欲に支配されるのも愉しくて好きだ。
でも、今日は敢えて八戒に飲ませる方を優先してみました。僕が飲んだのは口内に残った分くらい。多分、八戒の10分の1程度。
その僕でさえ勝手に性器が勃起してるわ、触れて欲しいわ、撫で回して舐めしゃぶりたいわで結構大変なことになってきてるのだから、八戒はどうなることやら。触れる布越しの性器が凄い勢いで触れてもいないのに勃ちあがっていくところをみると、一気に薬が回ってるのだろう。
「ッ……ハ」
八戒の目が潤んでるどころか虚ろになって、口の端から唾液が垂れた。そして身体をピクピク震わせながら、股間を僕に擦り付けてくる。
本当に強いんですねぇ、この薬。あの八戒が、完全に理性飛ばして僕の見てる前だと言うのに自分の性器を僕に押し付けて必死に快楽を得ようとしている。普段であれば、相当時間を掛けて攻め続けないとこうはならない。なのに、今日はキスだけで完全にメス化している。
身体を離すと必死に悶えて何とか快感を得ようと必死になって、繋いだ鎖が音を立てた。
本当はこの為に拘束したんですよ?自慰なんてさせたら貴方の恥態を十分楽しめませんからね。
必死に身体をくねらせて、穿いたままのパンツの布地に性器を擦り付ける様が、普段の八戒とかけ離れている上に非常に浅ましくて、無様でエロくてとても興奮する。呼吸を荒くして開きっぱなしの口から舌をつきだし虚ろな目をしたまま椅子の上で一心不乱に腰を浮かせて揺らめかせて空を突き上げて……なんてしている様をじっくり観察する。これ正気に戻ったら僕殺されそうですね。
まぁ、そうはさせないように、しっかりきっちり調教しちゃいますけど。
ああそうだ。折角だから動画も撮らないと。後で正気の貴方に見せるのが楽しみです。ね、八戒?


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