とある日常のヒトコマ

髪留め
<金蝉×捲簾>


今日は客が少ない。3月末の火曜日、天気は雨。決算期のトコも多けりゃ、人事異動なんかも集中してるからな。ここの客層は社会人ばかりだから皆忙しいのだろう。で、暇らしいここのマスターである捲簾は、バイトの悟空に丸投げして俺にのしかかってきた。
「仕事しろ」
「そーゆーなって。折角のセックスフリーの店なんだから楽しまなきゃ損だろ?」
趣味と実益を兼ねたそんな店を作ったのはお前だろうが。などと言ったところで聞きはしないことは嫌という程解っているので、反撃の方向を変えてみる事にした。どうせヤるなら俺も愉しみてぇからな。
「テメェが下で好きに扱って良いなら付き合ってやる」
「お、珍しくシたいプレイあんの?良いぜ」
普段されるがままの俺が積極性なんぞを見せたのが面白いのか、捲簾は楽しそうに笑いながら身体を起こした。
「何しても良いんだろう?」
「珍しくハードなコトしてぇの?」
「テメェなら壊しても問題無さそうだからな」
聞きようによっては、いやよらなくても酷い台詞であるのだが、捲簾は楽しそうに目を細め挑むような顔で口角を吊り上げた。
「良いぜ。壊せるもんなら壊してみろよ」
そして自らタイに手をかけ全裸になると、俺に向かって脚を開く。
「何期待してんだこの変態」
「そりゃするっしょ。ナニしてくれんだろーってゾクゾクすんじゃん?」
開かれた脚の間の性器は触れてもいないのに既にほぼ勃ちあがっている。
「イかねー方が良いなら、チンポ縛っとく?」
「そうだな」
「ハーネス持ってくるか?」
今日は俺の性器を拘束する気は無かった様で手ぶらな捲簾が首を傾げたが、それも面倒だ。
しかし手の届く範囲に縛れるような紐も道具も無い。少し思案して、多少キツくても痛ぇのは自分じゃないから良いかと判断し髪留めへと手を伸ばした。髪を纏める太目のゴムに金属製の装飾のリングが付いているソレを捲簾の性器に巻き付ける。
「お前ソレ普段使うんじゃねぇの?」
「使うな」
「俺のチンポ縛って我慢汁と精液染み込んだヤツでも使うの?」
「臭わなけりゃ構わん」
何故か吹き出した捲簾の性器を思い切り締め付ける。既に勃起状態なのでやりにくい事この上無い。
「ちょ、痛ェって。キツすぎ」
「リングはもっと狭いぞ」
「え、そっちまで嵌めんの?」
「ぶら下がってたら邪魔だろうが」
「ソレ嵌まるかぁ?明らかにちっせぇだろ」
「無理にでも嵌めてやるから心配するな。加減を誤ったところで貴様のイチモツが折れるくらいなモンだ」
「ヒデェ」
そう言いつつも笑う捲簾は脚を開いたまま抗う素振りすら無い。どう見ても明らかに小さい輪を嵌められる事に異論は無いらしい。痛みを感じない筈が無い事は解っているのだから、痛みも望む所なのだろう。その考えを肯定するかのように、握っていた捲簾の性器は一気に硬度を増した。何を期待してやがるのか。
「デカくすると余計に痛ぇぞ」
「ハハ。それもまた一興ってな」
「そうか。なら握り潰してやるから心配するな」
「ヤメテ、もっとデカくなる」
本当に変態だこの男は。マゾヒストでも無いのにこういうプレイも楽しめる快楽主義者。
本当に握り潰したい訳でもそれが目的な訳でも無いので、会話を切り上げて完全に勃起して太く硬くなっている捲簾の性器を開いたリングで挟み込む。力をかけずに添わせた状態では合わせ目が触れ合わないどころか、3センチ程隙間がある。既に硬くなっている性器は押しても凹みはしないので、真剣に握り潰す気でいかないと嵌まらないだろう。
己が身にもある器官なだけに、その耐えられないであろう激痛を思い逡巡してチラリと捲簾の様子を伺う。しかし、ヤツは抗いもせず楽しそうな顔を崩さないまま俺の手元を見ていた。
これから何をされるのか解らない筈がない。3センチの隙間も、捲簾の性器の太さに対して直径が2センチ程足りないリングも見えているのだ。
と、性器の先端から透明な液体がとろりと溢れだした。
ああそうかよ、期待してんのかよ握り潰される程の激痛を。ならやってやろうじゃねぇか。
リングを握り込みゆっくりと握り締めていく。多少皮を挟もうが知らねぇ。力を込めても全く体積の減る気配もない性器を押し潰していけば、捲簾の身体が強張り脚に筋が浮く。それでも抗いももがきもせず、声すら出さない。
「―――ッ……ぅ、ッ」
漏れる呻き混じりの吐息にその苦痛具合が伺える。それでも、止めろとも言わずその身体を差し出しているコイツは、ここで止める事など望んではいない。
容赦なく握る手に力を込め、リングを狭めていく。手の中のひしゃげていく肉の感触が生々しい。ここまでされても全く萎えない性器が押し返してくるのを力を込めて無理矢理押し潰す。
「―――ッ!!!」
捲簾の喉が鋭い音を立てると同時にガチッと鈍い音を立てて金具が嵌まる。力一杯握り込んでいた手のひらを開くと、リングで無理矢理括れを作らされた有り得ない形状になった性器が晒された。
「……ッ、……フ、ゥ」
呼吸に混じる堪えきれない呻きと、身体を小刻みに震わせながらも、これ以上は無いと判断した身体がソファーに沈み込む。普段の軽口すら叩けないまま、目をキツく閉じているその姿に続きをしても良いか迷う。
「捲簾」
聞こえていないかもしれないと思いつつ声をかけた。聞こえてない状態ならば、外してやろうと思いつつ。
「まだ準備しただけじゃねぇか。へばってんじゃねぇよ。脚開け」
静かに命令すると、捲簾の呼吸が乱れた。そして、ソファーに沈んだ時に閉じかけていた脚が開かれていく。
上等だ。
それじゃ、本日のメインイベントと行こうか?
口角を吊り上げ、俺はテーブルに放置されていたワインボトルを掴んだ。


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