とある日常のヒトコマ

マドラー
<八戒×金蝉>


初めて見た時から綺麗な人だと思っていたのだけれど、やっぱりすごく綺麗だと思う。
「良く似合ってますよ」
革のベルトに付いた鈴を爪で弾くと澄んだ音がした。
やっぱり黒を選んで正解でしたね。この人は色が白いからとても映える。
「ね、金蝉。良い音でしょう?」
問いかけても返事は返ってこない。それも仕方ないだろう。何故なら今金蝉の口にはボールギャグが嵌められているのだから。
まぁ、それだけじゃないですけど。
ボールギャグに加えて目隠しもしているし、腕は後ろで一纏めにしてテープでぐるぐる巻き。脚はプレイ用としても使える壁に設置されている丈夫なイミテーションの燭台に左右別々に思い切り開かせた状態で拘束し、アナルにはローターとプラグが押し込まれ、肝心の勃ちあがりきった性器には小さな鈴付きの黒い革ベルトがキツく食い込んでいる。
この店はどこでどんなプレイをしても困らないのが良い。一応名目はバー、ただしセックス付き。誰とどんなプレイをしても構わない。そんな店。
先程から金蝉の身体が跳ねる度澄んだ鈴の音が僕を楽しませてくれる。
この状態だと、金蝉は何も言えないし何も出来ない。限界を訴えることも許しを乞うことも出来ず、苦痛のような快感にひたすら犯されることになる。気を失うなら多分マシな方だ。ついうっかりと人格を破壊してしまいそうでゾクゾクして堪らない。
でも意外とこの人頑丈なんですよね。
今のところ僕が毎回負けているのだから。
そう思うとそろそろ勝ちたいなぁなんて思う。連敗はちょっとね。
まぁ、僕が勝ったらこのゲームは終わりになってしまうのだけれど。
今日は開店直後からこの状態だから、そろそろ……何時間放置してるんだろう?
壊れちゃったかな?どうだろう。革ベルトで締め付けられている性器は凄い色になっていて、そのうち壊死しそうだけれと。
どうしようかな。何時もより長く放置していることは確かだけれど、毎回こんな扱いをされるのが解っていて抵抗もせずに拘束させてくれるこの人の事だ、こういうプレイが好きなんだろうからとことんやってみるのも愉しそうだ。
ああ、そう言えばここを悦ばせていない。
まだ冷たいカクテルの入ったグラスからマドラーを手に取る。金属製の細長い棒の先端に小さな球体が付いているシンプルな作りのそれは、持ち手側に宝石を模したガラス玉がはめられていて、その隣に性器を締め付けているベルトと同じ小さな鈴が付いている。
この人のここを悦ばせたことは僕は無いけれど、触れられるのは初めてだろうか?先端の球体が無ければ初めてでも問題は無いのだが、どうだろう。
少し思案したが、考えたからといって解るものでも無いし、様子を伺いながら挿れれば問題は無いだろうという結論に至った。この状態の金蝉が様子を判別できる程の反応を返せるとも思えないが、それはそれとして。
ベルトが食い込んでいる性器の先端にマドラーを触れさせると、金蝉の身体がビクンと跳ねた。見えていない彼に僕が何をしようとしているか解らせるよう、性器の先端の小さな穴をマドラーで軽く撫で、先走りの溢れるその穴に押し付けると、窪みに嵌まるだけで当然マドラーは飲み込まれはしない。
初めてっぽいなぁ。
全く綻んではいない様子に、入らないたろう事が解って少し残念だ。
しかし、入らないまでも多少は悦ばせておきたい。今は入らなくても、そのうち入るよう少しずつ拡げていけばいいのだから。
指先に力を込めると閉ざされた入り口を抉じ開けるように球体が押し付けられる。僅かずつ拡がって球体が埋まっては行くが、沈み込んでは行かない。アナルとは違ってここは入り口を抜けても管は細いままだから、このまま押し込むと根本まで閉じた肉を抉じ開けていくことになる。それはかなりの激痛だ。その証拠にすぐそばにある金蝉の脚は、既に筋が浮くほど緊張しきって小刻みに震えている。
でももう少し。
「―――ッ」
金蝉の喉から息をのむ音がすると同時に、押し付けていたマドラーの球体が尿道を抉じ開けほぼ姿を消した。脚がガクガク震えもがくように宙を蹴る。
今日のところはここまでかな。
一気にやるものでも無い。痛みだけだったらそれはプレイではなくただの暴力だ。
けれど、マドラーを抜こうとして気付いた。金蝉の性器は全く萎えていない。
アナルと違いこちらは伸縮性も無いので、無理なサイズのものを挿れられて最初から気持ち良くなる事は無い。明らかに感じているものは激痛だけの筈だ。けれど、性器は萎えていない。
「へぇ……」
試しにマドラーを抜き、痛みから解放されて身体が弛緩したのを確認してからもう一度先端に球体を押し付けてみると、金蝉の身体が緊張したのが解る。
けれど、彼は暴れも逃れようともせずに、ただ先端から透明な体液を溢したのだ。期待し、その行為を望んでいるのだと言わんばかりに。
ならば、止める必要などどこにも無い。
「貴方は本当に、変態ですね」
笑いながら囁き、僕はマドラーをその小さな穴に思い切り捩じ込んだ。


とある日常のヒトコマ