「なぁ親父〜」
「ナニ?」
「ヤらせて?」
「何を〜?」
「セックス」


『もう一度始めましょ?』



いや、マジで意味解んなくて聞いたのに、返ってきた言葉は更に意味が解らなかった。ちょっと状況を整理してみようか。
ここは自宅のリビングで、今は金曜の夜中だ。いつも通り仕事をし、いつも通り残業をして帰宅して、これまたいつも通り夕飯を食い俺はリビングでテレビを見ていた。最初は映画を見ていたのだが、飽きてチャンネルを変えてるうちに最終的にニュースに落ち着き、午前0時になってそれも終わってしまったので風呂でも入って寝ようかと思っていたら親友と呑みに行っていた悟浄が帰宅して、リビングに直行してきたので放置すんのもアレかと思い取り敢えず自分の分の酒を用意し一口飲んでみたところだった。
悟浄は俺の同棲相手……なんかでは当然無い。れっきとした俺の実の息子だ。俺がまだ高校生の頃、当時遊んでくれていた女の一人に頼み込んで産んで貰った。32歳の弁護士やってる女で外見も頭も良かったけど、何より性格が凄く良くて柄にも無くコイツと一緒に居たいなんて思ったりもしたのだが、相手が受け入れてくれなかった。歳の差もさることながら、俺はまだ高校生だったわけで大学だのなんだのって未来があって、それを自分が奪うのは嫌だと言って笑った。その代わり一つだけおねだりを聞いてくれると言った。だから俺は子供じみた独占欲で相手の子供が欲しいと言い、彼女はじゃあ一度だけ生でナカ出しさせてあげると言った。彼女に取って良いことなんて一つも無い願い。けれど彼女はそれを承諾し、あまつさえ運良く出来た子供を産んでまでくれた。仕事にも私生活にも支障があっただろう人生の一大事をたかだか高校生のおねだりなんかで一人で成し遂げてしまった彼女には一生頭が上がらない。最近は会ってないがそのうちまた飲みに行きたいもんだ。こんなに可愛い悟浄と出逢えたのも全て彼女のおかげだしな。なんて話は悟浄にはしたことはないが。実は悟浄には母親はいないと言ってある。そのことについてコイツは小さい頃はともかく、大きくなってからは何も言ったことがない。コイツももう21だし女遊びもしてるんだから俺の話が嘘だってのは解っているハズなんだが、一向に問い詰めて来る気配は無い。だから悟浄は母親の顔はおろか名前すら知らない。彼女もそれでいいと言っていた。自分が腹を痛めて産んだ子なのに会いたくならないのだろうか。こんなに可愛いのに。そういえば母親の事は聞かれないが、父親については一度だけ聞かれたことがあったな。しかもわりと最近。まぁ、それについては何も隠すこともないわけで、事実そのまま俺の子だと答えてやったワケだがあの時の悟浄はあまり嬉しそうじゃなかった。俺の子供ってのがそんなに嫌なのかよと思ったくらいだ。
で、だな。何をどうしたら冒頭のヤらせて発言に行き着くんだ。コイツの突飛な行動には大分慣れてる俺でもこれはさすがにわっかんねぇぞ……。
「熱でもあんのか?」
「ねぇよ」
「酔っぱらい過ぎて俺が女に見えたか?」
「見えてねぇよ。そもそも親父っつってんじゃん」
確かに呼び掛けはそうだった。
俺が呆然と悟浄を見ていると、焦れた悟浄が拗ねたように唇を尖らせた。
「嫌なのかよ?」
むしろ嫌じゃない場合が解らん。
「あのさ、俺ら親子なんだけど?」
「だから親父って言ってんだろ」
「そもそも男同士なんだけど?」
「親父だもんな」
「40間近の同性の父親とヤりたいか?」
「うん。抱きたい」
しかも俺が抱かれんのかよ。
「悟浄」
「ナニ?」
「クソして寝ろ」
「ちょ! 可愛い息子に対してソレひどくね!?」
「自分で可愛いとか言ってんじゃねぇ!」
「なんだよ、人がせっかく強姦は避けてやろうと思ってんのにさぁ」
「ふっざけんな! 合意が得られなかったら強姦する気かよ!」
「仕方ねぇだろ! ヤること同じでも合意の有無で呼び方違うんだから!」
「問題はそこじゃねぇ!!!」
おかしい。俺どこで悟浄の育て方を間違えたんだろう。つか外でもこんな調子で女とヤってんじゃねぇだろうな? 言えた義理じゃないが孫ができる前に予告が欲しいぞ。
……てか、ちょっと待て。これもしかして俺の返答がどっちだろうと問答無用でヤられるってことじゃね?
…………何が悲しくて息子にヤられなきゃならないんだ。
「なぁ、悟浄。百歩譲って俺がお前を抱くんじゃダメか?」
「別にいいけど、俺相手で親父勃つの?」
勃たねぇだろうな。
「そうやって適当にごまかす気だろ」
なんでバレた。
「親父が考えそうなことくらい解るって。親子なんだし? 俺、生まれた時からずっと親父と一緒にいるんだぜ?」
床に座っていた悟浄がゆったりと立ち上がった。頭の中で警鐘が鳴る。これはヤバい。どうしたらいいんだ。悟浄が俺の座っているソファーに近づく。ヤる気になってる男を止める良い方法が浮かばない。もうコイツ殴り飛ばしてもいいかな? いいよな?
詰められる間合いにタイミングを計る俺の視線の先で、悟浄は足を止めた。間合いに入るか入らないかの際どい位置で。そしてテーブルの上のグラスを掴み、いきなり中の酒を思い切り俺にぶちまけた。
「テメッ」
カッとなって反射的に立ち上がった俺に今度はグラスが投げられる。放物線を描いて飛んだグラスに俺は慌てて手を伸ばした。グラス自体に思い入れは無いが、当然その材質はガラスで、落としたら割れてしまう。勢い良く投げられた訳じゃないからグラスを受け止めるのは簡単だった。が、逆にその滞空時間分俺には隙ができていたわけで、悟浄の狙いは初めからそれだったと気付いた時にはもう、グラスを受け止めたのとは逆の手を悟浄に拘束されていた。ぐいっと捕まれた腕を引かれ、そのままソファーにうつぶせに引き倒される。手を使えないせいでまともに倒れ込んでしまい、息が詰まった。つか、この体勢、服の酒がソファーに染みこむじゃねぇか。明日絶対悟浄にリビング掃除させてやる。なんてどこか呑気に考えていたら、後ろに捻り上げられてた手に冷たい金属の感触とカチリという音。
咄嗟に手を振り払い背筋で起き上がろうとしたが、柔らかいソファーの上で悟浄が馬乗りになっている状況では足場も条件も悪すぎた。腕だけは解放されたもののそれも一瞬で、弧を描いたもう一方の手錠の輪を悟浄がキャッチし無造作に引っ張る。金属製のそれが手首を擦る痛みに顔をしかめると、拘束されていない方の手も掴まれ身体の後ろに回され手錠をかけられた。グラス投げ捨てりゃ良かったかな……、今更だけど。ぶっちゃけると悟浄はケンカが強いが俺ほどじゃない。だから油断してたっつーか、成長を見ようかなんて悠長なことを思ってた訳で、今それを少し後悔している。ハナからコイツは敵わないのを解った上で道具を持ち出して来たわけで。少しは頭使うようになったじゃねぇか。チクショウ。漸く手に持っていたグラスを抜き取ってもらえた。軽い音をたててテーブルに置かれたのが目の端に映る。俺は仕方なく抵抗を諦め身体から力を抜いた。このまま抵抗してたら手首が擦り傷だらけになっちまう。金属製の手錠は簡単に拘束できる代わりに直ぐ傷が付く。
「あれ、抵抗もういいの?」
「……良くねぇよ」
「ふぅん?」
するりと悟浄の手が俺のうなじを撫でた。僅かな快感に首を竦めると悟浄の笑う音が耳に届く。クッソ。性感帯は気持ち良い場所だからそう言うんだよ! 嫌悪がなけりゃ気持ち良いのは当たり前だろ! 気持ち良いよ、悪いか!
「つか、なんでいきなりこんなコトしようと思ったワケ?」
「あ、それ聞いちゃうんだ?」
指で首筋を撫でながら悟浄が身体を倒した。耳朶を甘噛みしながらついでのように舐められて、息が乱れる。囁くように耳に吐息が吹き込まれ。
「秘密」
ざけんな……。
しつこいくらい耳をなぶられ、思わず首を振って逃れる。
「よせって」
「ハイハイ。他もしろってことね」
ちげぇよ。
うなじに唇を押し付けられる感触に反論が途切れる。そのままそこに僅かな痛みが走った。
「バカ。痕つけんな」
しかも自分じゃ確認出来ない位置。そして多分シャツで隠れない位置。首筋に触れていた指がそのまま前に流れ、鎖骨を撫で、胸を辿り、腹を触ってTシャツの裾から忍び込んだ。背後から覆い被さったまま、右手で俺の顎を捕まえて、左手はヘソで遊んでいる。悟浄の頭が俺の肩に乗っていて吐息がすぐ傍で聞こえる。なんでお前の方が呼吸が荒いんだ。ヘソの周りを辿っていた指がそこに突っ込まれる。微妙な感覚に思わず首を竦めると、また耳朶を食まれた。ヘソを弄られることは余り無いだけに、感じている感覚が快感なのか違うのか判別がつかない。遊んでたつもりだったがまだ開発途中の場所もあったらしい。てかなんか漏れそう。それが精液じゃないことだけは確かだが。
「そこやめろ……」
首を捻って文句を言おうとしたら思ったより近くに悟浄の顔があって驚いた。近いって距離じゃない、キス寸前の距離。そう思ったのは俺だけじゃ無かったようで悟浄の右手が俺の頬を押さえ付けて、顔を固定された。柔らかい唇が俺のそれに押し当てられる。なのに悟浄も俺も目なんか閉じず、じっとお互いの瞳を見つめていた。澄んだ赤い瞳。この色が俺は昔から好きだった。彼女は生粋の日本人だったが、俺の方はじいさんが外国人で、俺は殆ど受け継いでいないのだがどうやら悟浄には色濃く出たらしい。その色で虐められたりぐだぐだ言われたりもしたが、ある意味俺の息子だって証みたいなものだったから俺も悟浄も変な意味では気にしなかった。きれいなきれいな血の色。悟浄自身の生命力を表している力強い赤。こんな間近で見ることは最近無かったな。触れただけの唇が離れる。
「よせ」
「別にキスくらいいいじゃん。初めてでもねーんだし」
ファーストキス的な意味なのか、ガキの頃の親子のスキンシップ的な意味なのか、どっちだ。前者は当たり前過ぎていわずもがなだから後者だろうか。
「ガキの頃のお前も強引だったわ」
「あ、ズリィ。俺だけのせいにする気かよ。親父もしてくれたクセに」
「覚えてんのかよ」
「全部じゃないだろうけど覚えてるよ」
そんな昔のコト忘れろよ……。もう10年以上前じゃねぇか。
「良くそんなガキの頃の事覚えてんな」
「親父のコトだし? 忘れねぇよ」
もう一度唇が触れる。別に嫌じゃねぇのが困る。確かに悟浄が言う通り今更なんだよな。まだコイツがガキの頃あまりにもかわいかったもんだから時々キスしてやってた。どこの親もそんなもんじゃないかと思う。保育園の頃にはコイツからもしてきてたし。子供なら大抵そうだからあんま気にもしなかったし、拒めば泣かれるのは明らかだったしで普通に受け入れていた。それも小学校に上がる頃には無くなって、ファーストキスとか言い出す思春期にはみんな忘れてるモンだから特にその事を気に止めてもいなかった。まさか覚えていたとは。俺にとっては今更減るモンでもないコイツとのキス。図体デカくなってるけど自分の子だし、いまだに俺の目には親バカフィルターがかかっているのか可愛く見えちまうんだよなぁ。そのせいで抵抗も嫌悪感も無いのが悪い。身長なんか俺よりデカイしすね毛だって無精髭だって生えてる明らかに成人男子のくせになんでか可愛いんだよなぁ。
ヘソを弄んでいた左手がするりと腹筋を撫で上げる。止せって言ってんのに。眉をひそめて悟浄を見た瞬間唇を舐められた。柔らかい舌が何度かソコをなぞる感触に呼吸が乱れる。それに気付いた悟浄は嬉しそうに目を細めて、今度は俺の下唇を食んだ。ゾクリと腰から快感が這い上る。マジでヤベェ。最近遊んでもヌいてもいなかったせいで身体が勝手に快感を拾う。少しずつ位置をずらしながら唇に歯を立てたかと思えば、噛んだ唇を引っ張って閉じたままの歯列を舐めてくる。これもうディープキスだろ……。それでも口を開かない俺に焦れた様子も無く、悟浄は俺の唇を食んだり舐めたりしている。ガキみてぇ。やってる内容はともかく、飽きもせずに同じコトを繰り返して楽しそうにしてる姿はどう見てもガキそのものだ。思わず笑みが浮かんだ瞬間、腹を撫でていた手がそこを撫で上げ、胸を揉むように掴んだ。女じゃねぇから掴めないそれを気にすることもなく、悟浄の指が俺の乳首を押し潰した。
「ッア…………」
思わず零れた声を飲み込むように悟浄の舌が歯列の間から忍び込む。唇を深く重ね、入ってきた舌が俺の口内を味わうように舐めていく。マジでよせって……! 首を振ろうと僅かに動いただけで頬を押さえていた悟浄の手に力がこもった。手のひらで頬を押さえ、指で顎をキツくとらえたまま口内を蹂躙していく。骨を掴んでいる指がギリギリと食い込む痛みに顔をしかめた。キスってこんな暴力みたいなモンだっけ……? 快感を痛みが上回ってくれて、おかげで少し冷静になる。すぐそばの悟浄の目を睨み付けるが、動じもせずにしっかりと見つめ返してくる瞳に諦めて俺は顎に力を入れた。
「ッ……!」
悟浄の身体が勢い良く離れる。俺の上に馬乗りになったまま身体を浮かせて左手で口元を押さえこちらを睨んだ悟浄を睨み付けたまま、俺は口の中の血まじりの唾液を吐き捨てた。
「ナメてんじゃねぇぞ、クソガキ」
悟浄が身体を浮かせているおかげで隙間がある。身体を捻って起き上がろうと腹を浮かせた瞬間、悟浄の手が俺の頭を掴んでソファーへと叩き付けた。顔面から勢い良くソファーの座面に顔を押し付けられて、いくら柔らかいっつってもかなり痛い。鼻も折れそうに痛いが口も開かないくらいキツく押さえ付けられていて呼吸もマトモに出来ない。
「親父さぁ、ガキを甘く見すぎじゃね?」
ざけんな。
なんとか睨み付けようと首に力を入れるが後頭部を鷲掴まれている上に体重込みで押さえ込まれれていてびくともしねぇ。暴れすぎて息が上がってきた。せめて呼吸だけでも確保しねぇと、このままじゃ酸欠で意識を失う。顔を横に向けたいのにそれすらも出来ない。
「優しくしてやろうと思ってンのにさ」
ギリ……と悟浄の指が俺の頭に食い込んだ。痛ぇよ、バカ。俺の頭握り潰す気かよ。ヤバい、目の前が暗くなってきた。身体が無意識に硬直して拘束された手が何かにすがるように蠢く。それに気付いたのか、押さえ付けていた悟浄の手が離れた。途端に確保出来た呼吸に思わず思い切り吸い込んでしまい、俺は噎せた。上に乗られたまま身体を捩って噎せていると、上から何か布のようなものが降ってくる。浮かんでいた生理的な涙がそれに吸いとられた。
「ッ……!」
顔を背ける間もなくその布で目隠しをされる。頭の後ろではなく横でキッチリ結んだ音がした。布の色が濃いせいか、ほとんど透けない。光くらいしか解らない。と、突然腰に手がかかった。悟浄のケツが少し下がって俺の太股の位置に座り、その手が俺の下に潜り込んだ。
「よせ!」
指が何かを探った次の瞬間ジッパーを下ろす音がして、一気にパンツを下ろされた。悟浄が乗ってるせいで腿のところまでで止まったが、コイツ、下着もまとめて下ろしやがった。外気の感触とソファーの感触が直に下肢に触れる。つか、俯せだからチンポがソファーに触れて何かヤだ……。
「大人しくしてろよ」
声と同時に上に乗っていた悟浄の身体が浮いて、身体に手が触れたと思ったらいきなり身体を引っくり返されてビックリした。見えないせいで急な動きに反応出来ない。と、ぐいっと足を引かれ、抵抗する間もなく腿のところで止まっていたパンツと下着を纏めて脱がされる。カッとなって解放された足で悟浄が居るであろう場所を薙ぐと、豪快に空振ってソファーから落ちそうになった。足は自由なんだ。いっそ落ちて逃げようとした俺の肩が押さえつけられる。痕がつくんじゃね? って強さで掴まれてソファーに押し付けられ、今度は腹に悟浄が乗った。
「そういうコトしちゃうんだ?」
楽しそうな声音のあと、ゴソゴソと何かを漁る音が響く。何の音だ……?
「ここまでする気はなかったんだけど。仕方ねぇよな」
蹴るには悟浄の座ってる位置が上すぎる。抵抗しにくい位置。おまけに手錠で繋がれてる両手が完全に下敷きになっていてかなり痛い。と、悟浄の身体が俺の腿までずり下がった。が、腹筋を使って跳ね起きようとした身体を抱き締めることで拘束される。完全に読まれている。抱き締めた腕が背中を降りて、手錠に触れた。外して貰えるワケが無い今、嫌な予感しかしない。抵抗したいのに完全に身体の自由がきかない。ぐっと手錠が引っ張られる感覚の後、悟浄の身体が離れ、俺は再びソファーに押さえ付けられた。また悟浄の身体が移動し、今度は胸と腹の上に横向きに座られる。さっき引っ張られた手錠がまだ引っ張られていて手首が痛い。長袖の季節で良かった。これしばらく他人に手首見せらんねぇわ。俺の上で悟浄は何事かしていたようだが、少しすると今度は腿の上に足の方を向いて座り直したようで、右の足首を掴まれた。足を挟み込んで座っているから足の自由まできかねぇし。つか、悟浄はそっちに手がいってるハズなのになんで手錠が引っ張られたままなんだ? 嫌な予感に手を動かしてみると、背もたれ側には全く動かない。逆側は動くがそれにしたってソファーの上から落ちられなければ余り意味は無いだろう。
「縛ってあるから無駄よん」
やっぱり……。位置的にソファーの脚だろう。にしたって縄短すぎるだろ。ギリギリ手錠が食い込んで痛ェっつの。まぁ、少しでも縄に余裕があれば起き上がるけどな。てか、なんで悟浄はこんなに拘束に慣れてるんだ。いつの間にかSM方面の性癖になってたのかよ。うわ、それヤだな。まぁ、強姦で使うから必要に迫られてって方がもっとイヤだけど。チャリ……と今度は鎖の音っぽいのが響いて、右足首に何かを巻かれた。金属じゃ無い感じ、てことは多分革の枷だろう。予測がついてしまう自分が少し悲しい。ぐっと留め具を締めた圧迫の後、その足も引っ張られた。こっちは手とは違い膝から下をソファーから下ろされ、膝を曲げた状態で床に脚の平をペタリとつけさせられる。多分その位置でソファーの脚に繋ぐんだろう。完全に固定するためにか少し足を引かれ、くるぶしがソファーの脚に当たった。逆側の足を繋がないのは多分ヤりにくくなるからだろう。てか、さっきから悟浄がこの部屋を出ていった気配が無い。つまりは全部使うものを用意してあったっつーことで、…………計画的犯行かよ。動けなくなった俺の上から悟浄が離れる。それでも身体は触れていないがすぐそばに気配を感じる。様子を伺ってじっとしていると、不意に腰骨を指が撫でた。視界を奪われているせいで驚きに身体が跳ねる。クス……と、笑う音がして、その指が今度は脇腹を撫で上げ、着たままだったTシャツを捲り上げていった。手錠で拘束されているせいで完全に脱がすことが出来ないのを気にする様子もなく、胸まであらわにしてその手は止まる。コレ、完全に脱がされるよりハズィっつーの……。
遮られた視界にあった光が暗くなる。濡れた舌が俺の唇をなぞって、それから唇が触れた。噛まれるのを警戒してるのか、深くはならない重ねるだけのキス。そのまま、唇が触れたままずれて、顎にキスされる。それから首筋を食んで喉仏を口に含み舐め回された。焦れったいくらい緩やかな快感。悟浄はしばらくソコを舐めたり吸ったりしていたが、今度は舌で舐めながら首筋を下りていった。鎖骨の付け根を舌で擽るようにつついて、そこから横に移動して鎖骨を舐めた後ソコに歯を立てる。
「ッ……!」
食い破る強さで噛まれて、痛みに声が漏れた。にも関わらず歯を食い込ませた挙げ句、悟浄はソコをキツく吸い上げた。なんでそんな目立つトコに痕つけてんだよッ。しかも噛み痕プラスでって、マジ所有印かよ。これじゃしばらく誰ともヤれねぇわ。悟浄はようやく唇を離すと、脱がせられない服を越えて今度はちょうど心臓の上あたりにキスをした。軽く吸われた感覚に痕を残されたのだろうと思う。なんで痕付けまくりなんだ、コイツは。単に痕を付けるのが好きなのか、それとも他の理由か。つか、ここまでして何がしたいんだろう。ただでさえ面倒な男相手、しかも若くも可愛くも無い俺を、こんな強引に縛り付けてまでヤりたいとか、何考えてんだよ、悟浄。
唇がまた触れたまま左へ滑って行く。ちょっと待て、ソコヤバい。身動ぎしようとしたのに、悟浄にのしかかられている身体は動かず、鎖が軽い音を立てた。悟浄の唇が俺の乳首に触れ、そのまま唇で食まれる。ゾクリと腰から快感が這い上がった。それを眉をひそめて耐える。脱いだ状態で勃たせるわけにはいかない。唇を押し付けるようにしていた悟浄は、次にソコを舐め始めた。ヌルヌルした柔らかく熱い舌で舐められているその感覚が、段々変わっていく。マズイ。全体的に纏めて舐められていたのに、神経が先端に集中していく。快感が一気に増していき、ソコが敏感になっていくのが解る。やがて舌が離れちゅっと吸われた後、軽く歯をたてられて身体がまた跳ねた。
「乳首勃ってる。ヤラシー」
「くわえたまま喋んなッ」
僅かな動きにすら快感が抜けて行く。つか、お前が勃たせたんだろーが。赤ん坊が母乳を吸うかのように何度も吸い上げられて呼吸が上擦る。快感に耐えていると、不意に右の乳首を指で摘ままれた。
「ッア……!」
「カッワイー」
思わず漏れた声に悟浄が嬉しそうに言った。もう口塞ぎたいのに、手は纏めて拘束されてるし……。悔しくて唇を噛むと、それに気付いた悟浄の指が唇に触れた。唇を愛撫するかのようにふにふに押してから、その指を強引に俺の口の中に突っ込んでくる。歯を抉じ開けて舌を指で挟みそれを揉まれ、俺は咄嗟にその指を噛んだ。口内に血の味が広がった。なのにそんなこと微塵も気にした様子もなく悟浄の指は俺の舌を撫で、口内を愛撫していく。
「ッフ、……ン」
苦しいのと気持ちいいのが混ざって意識が朦朧としてくる。閉じられない口端から唾液が零れて頬を濡らした。悟浄は俺の口に指を突っ込んだまま、乳首を噛んだり舐めたりしている。しつこいくらい刺激されて、快感を耐えきれなくなりそうだ。もう片方の乳首も指で摘ままれ弄ばれていて、目が潤んでくる。
「へぇ、我慢強いじゃん? ま、無駄だけどな。いつまで耐えられるか楽しみだわ」
愉しそうに悟浄が乳首を吸い上げる。
「ッ……ウ、ンム」
勃たせたくないのに、そろそろ限界ッ。これ、無理だろ。チンポがピクピクしてきた。腹に力を入れて耐えてみるが、そんなことお構い無しに悟浄が乳首を噛んでくる。ああ、もう、マジ無理。ぐにっと舌を掴まれて腰が震えた。
「イイ反応」
笑った悟浄が勃ってる乳首を奥歯で挟み、すりつぶすじんわりとした痛みすら快感にすりかえられる。勃ち始めたチンポがどんどん硬度を増していく。止まらない。舌を指で押されて、思わずそれに舌を押し付けた。
「カワイイコトしてくれんじゃん」
悟浄が嬉しそうに囁いて、俺の舌を指で撫でる。そしてその指がようやく抜かれ、頬を辿って今度は耳朶に触れた。付け根から耳の形に添って揉みながらなぞられて首を竦める。ヤバい、気持ちイイ。指を突っ込まれてた口は指を抜かれたにも関わらず閉じることすら出来ずに、ただ熱い息を吐き出しているだけだ。耳の後ろを擽られ息を詰める。と、また耳朶を弄る。僅かに首を振って逃れようとすると、乳首を噛まれてビクリと仰け反る。拘束されているせいで逃れることすら出来ない。ただ悟浄の好きなように快感を加えられるだけ。
もう止めろっつーの……。
「悟浄ッ……」
「ナニ? オネダリ?」
「んなワケねーだろ。もうよせ」
「え、何バカなコト言ってんの? チンポこんなガチガチにしといてさ。今止めたら困んのは親父じゃねぇの?」
少し身体を離して悟浄が言った。目隠しされている俺にはコイツがどこを見てるかなんて解らない。けど、なんでだ。コイツの視線を痛いほど感じる。チンポ、見られてる……。触れられてもいないのに完勃ちしてるチンポを、見られてる。そう思った瞬間、トロリと先端から先走りが溢れ、滴り落ちた。
「へぇ、こういうプレイ、好きなんだ?」
するりと悟浄の手が脇腹を撫でる。それにすら感じてしまう身体をもて余す。吐く息が震えた。脇腹を撫でた悟浄の手が腰骨を撫で回す。なのに肝心な部分には触れないまま、今度は腿を撫で下ろしていく。無意識に、ねだるように脚が開いたのを見て、悟浄が熱い息を吐いた。
「こんなに淫乱だったんだな。親父って」
「ッ……!」
慌てて閉じようとした脚を掴まれ、ソファーの背もたれに強引に乗せられて、俺は悟浄に全てを晒させられる。
「嫌だッ!」
拘束されていることも忘れ思い切り暴れた俺の耳に、鎖の音だけが届いた。抵抗も、隠すことすら出来ないで全部晒させられている。悟浄の視線はどこを見てる? よせ、見んな、止めろ、もう嫌だ。俺は唯一自由になる顔を、悟浄から背けた。
「カワイイな」
呟きと同時にぬるりとした感触がソコに触れた。え、ちょ、ナニ? 待って、え、マジで、待って。
「何ッ!?」
「ナニって、舐めてるだけだけど?」
やっぱコレ舌の感触か! てか、舌!?
「おま、どこ舐めッ!?」
「ドコって、親父のケツの穴」
「バッ……!!!」
柔らかい舌を入り口に含ませるように襞を舐められてる感触に一気に羞恥とショックでパニックに陥る。そんなとこを舐められてるのもそうだが、舐めているのが実の息子だという事実に打ちのめされる。
「チンポは遊んでるだけあってかわいくないけど、こっちはセピア色でカワイイ」
「ッ!? も、よせッ、止めッ……、嫌だ!!!」
叫んだ途端、悟浄の動きが止まった。そして、ゆっくり舌が抜かれ、一度唇で入り口を吸い上げて、離れた。
「そんなにイヤなんだ?」
抑揚の無い声が降ってくる。
「チンポこんなにしておいて、ナニがイヤなの?」
「悟浄ッ」
「天蓬には喜んで足開くクセに」
信じられない台詞に思考が止まった。今、コイツなんて言った? え……、天蓬には……って……。
「お前、なんでそれ……」
「バレてないとでも思ってた?」
クスリと悟浄が笑う。なんで、コイツにバレた? どこで見られたんだ? 家では一度もヤったことは無いのに、なんで……。
「なぁ、親父さ、天蓬と恋人同士なの?」
「ちが……」
違うと言いかけて言葉が詰まる。天蓬とヤってんのは確かだけど、恋人なんかじゃない。単に都合のいいセフレなだけだ。ただ、ここで恋人じゃないと言うのが正しいのかが、咄嗟に解らなくなった。恋人同士だと嘘をつくべきなんじゃないだろうか。天蓬が好きで恋人同士なんだと言えば、コイツはこの行為を止めるかも知れない。なら、少しの嘘くらい……。
「ま、どっちでもイイケド」
悟浄の唇が俺の言葉を遮るように俺のソレに重なった。しょっぱなから舌を思い切り突っ込まれて口内を荒々しく舐め回される。呼吸すら奪われる激しさに頭が朦朧としてくる。飲み込みきれない唾液が口端から零れて頬を伝った。
「ッ!?」
ケツに何かが擦り付けられる感触に、咄嗟に抵抗しかけて鎖が音を立てた。
「イイ声で鳴けよ」
囁く声と共にゆっくりと入り口を抉じ開けてくる熱に身体が逃れようとのたうつ。それを押さえ付け、耳朶を食みながら熱い吐息を零す悟浄の熱に引き摺られて俺の熱まで上がっていく。
慣らされていない入り口を拡げられる感覚に快感がゾクゾクと背筋を這い上がる。
「あ、あ、あ」
ヤバ、コイツのデカイ。まだカリ入りきらねぇのかよ。慣らしてなくても挿れられんのには慣れてるから普通ならこんな苦しくねぇのに。ピンと限界まで伸ばされた入り口に、僅かな恐怖と期待でナカがヒクつく。つか、コイツなにもしてねぇのに完勃ちしてるって……。
「も……、無理」
「残念。止まんねーよ」
「!!!」
入り口が裂けたんじゃないかってくらいの激痛とともに、思い切り拡げられたソコを悟浄の一番太い場所が通り抜けていった。
「あ! あ! あ!」
内壁を抉じ開けながら最奥まで一気に犯されて、目を見開いて仰け反ることしかできない。滅多に触れられることの無い場所まで抉られて込み上げる絶頂感に内壁がビクビクと悟浄をくわえこむ。
「ハッ……、ナカ熱くてキツくてヌルヌルしててキモチイー」
吐息と一緒に耳に吹き込まれた言葉に身体が跳ねる。
はくはくと呼吸をしてる俺の唇を一舐めして身体を起こすと、悟浄はすぐに動き始めた。
「やっぱ慣れてるだけあって、いきなりぶちこんでも平気だったな。ヨさそーじゃん?」
荒い息でそう言った悟浄が、動く速度を上げていく。濡れない器官のハズなのにひきつるどころか結合部からヌチュヌチュと音が響き始める。
「ちょ、待て! お前、生ッ!?」
「別にいいじゃん。ガキができるわけでもないんだし」
「そういう問題じゃねぇだろ!」
動きも止めずに何でもないことのように悟浄は言うが、同性異性に関係なくゴムはマナーだろうがっ。
「どうせ天蓬とも生でヤってんだろ?」
「アイツに生で突っ込ませたことなんざねぇよ!」
生でヤるようなヤツだったら二度とヤらねぇっつの。手が自由ならコイツを押し退けて殴ってる。
「ハハ、じゃ、レアなんだ? ま、強姦だししょうがねーわな」
笑う悟浄の荒い息に声が混じり始める。最奥まで抉るように挿入されて、身体同士が勢い良くぶつかる。そのせいで固定できない身体がずり上がり腕に手錠がギリギリと食い込んだ。けれど、その痛みが無いとコイツに犯されて不様にイってしまいそうだ。
「ヤベ、出そう」
「ちょ」
ナカに出すなと言い掛けた時、悟浄が思い切りナカにチンポを突き立てて息を詰めた。
「くっ……!」
「ッ!!!」
身体の奥に勢い良く熱がぶちまけられて、思い切り仰け反り悟浄を締め付けてしまう。釣られてイきそう。ナカ出しされてイくとか、冗談じゃない。ンなことしたら自分の価値観が揺らぐ。イきそうになってんのと、堪えてるのとで思い切り締め付ける内部を、全部出しきるように擦り付けるチンポで拡げられて、おかしくなりそうな快感で身体が勝手にのたうつ。
「腰振っちゃって。そんなに欲しいの?」
「違っ!」
笑いながら指摘されて、顔が赤くなる。自分でも自覚していたソレを誤魔化したくて、言葉を吐き捨てた。
「イったんなら抜けよッ」
「一回くらいで終わるわけねぇじゃん」
愉しそうに笑いながら、再び悟浄が動き出す。全然硬度が落ちていないソレが敏感になってヒクついている粘膜を擦っていく。その度に悟浄が出した精液が聞くに堪えない音を立てる。
「も、ヤメロッ」
「ヤだね。つか、親父もイけよ」
「誰がッ!」
実の息子に犯されてイくなんて絶対嫌だ。けれど、悟浄はその返答が気に入らなかったようで、笑いながらだった声音が冷える。
「フーン? まぁ、イくまでやるだけだし?」
「ざけんな!」
「大マジだっつーの。……つっても、素直じゃねぇから簡単にはイかせてやんねぇけど」
クッと喉で笑う音。そして心底愉しそうな悟浄の言葉。
「ココだけでイこっか」
グチュっと内部を掻き回してココがどこなのかを示される。つまり、前は触らずにケツだけでイけってことで……。
「ざけんな!!」
「だ・か・ら、大マジなんだわ」
グリッとさっきまで自分が気持ちイイように動いていた悟浄が、何かを探すようにチンポの先端でナカを抉る。少しずつ位置を変えて抉る先端が、確実にソコに近づいているのに気付いて逃れようと腰を捻るが、その腰を掴んで押さえつけられる。そして、ついにチンポがナカのしこりを捕らえた。
「ッ!!!」
「見ーつけた」
前立腺にグリグリと先端を擦り付けながら、悟浄が笑った。
「んじゃ、ヨがりまくって貰おっか。淫乱な親父サマ」
グプッと突然最奥まで抉られて身体が跳ねる。かと思えばすぐに抜けるギリギリ…つーより全部引き抜いてもう一度勢い良く前立腺めがけてブチ込まれて悲鳴のような嬌声が零れた。
「ヒッ、ィアアア!!!」
前立腺は行き止まりなんかじゃなく、内壁の途中にある。だから勢い良くソコを抉ったチンポが当然そのまま最奥まで犯していく。音がするほど激しく身体と身体がぶつかる。
「ぅあ、アッ!」
最奥を抉ったと思うとすぐにまた引き抜かれ、また奥まで犯される。その度目の前がチカチカするほど強く前立腺を抉られ、理性がどんどん剥がれていく。
「ッア! アッ、アッ、ふぁぁ、ハ、ア! アア!」
「親父のナカ、サイッコー」
「ヤァ!! 言うなっ! アアッ! ッ! ア!」
ナカを犯される度、触れられてもいない先端からトロトロと熱い粘液が零れ落ちる。イきたい。もう苦しい。熱くて死んじまう。
「ア! ッン、ゥ、ン!! ひぁ! ア! も、ぉ…!」
実の息子だって解ってるのに、俺の子なのに、もう、そんなことどうでもイイ。イきたい。このデカイチンポで犯されてイきまくりたい。もう、我慢なんかできない。
「欲しっ、欲しい!! チンポ欲しい! イきたい! もっとナカグチャグチャにしろ!」
「ハハ、カーワイ」
笑った悟浄が拘束してる方の足を跨ぎ、拘束されていない方の足を持ち上げ自分の肩に掛ける。足を思い切り開かされた状態でナカを抉られ、身体がガクガク震える。
「親父、今誰のチンポでヨがってるか解ってんの?」
体位のせいで更に深くまで犯しながら問われ、仰け反り、ケツを振りながら喘ぐ。
「ご、じょ、のっ! ごじょ、のチンポ、で、おか、さ、れっ!……もぉ、イっ…! イく! イく!」
浅ましく自ら快楽を貪りながら、唾液を垂れ流して卑猥な言葉を吐く。
「もっと! ナカ、グチャグチャにっ!! あぅ!! ッ! イく! チンポでイく! ケツマンコ、ごじょに犯されてイっちまう!!」
チンポをくわえこんでヒクつくナカを痛いくらいの激しさで犯されて一気に絶頂へと駆け上がる。なのに身体がもっと欲しいと、勝手にケツを振って悟浄のチンポを前立腺と奥の粘膜へと擦り付ける。
「悟浄ッ! もっと!! ぜんぶよこせっ!!」
「ッ……」
「ッアアア!!!! イく! イく! イくぅぅ!!!」
全身が硬直して、思い切り悟浄を締め上げて精液を吹き出す。ガクガクと身体が勝手に跳ねて、内壁は有り得ないくらい敏感になって勝手にヒク付き悟浄のチンポを咥え込みそのせいで快感が止まらない。
「締まるッ…」
呻くような悟浄の声とともに、最奥を抉ったチンポから熱い液体が吐き出される。
「ひぁぁぁぁぁぁ!!!」
痙攣している粘膜に熱い精液を叩きつけられる感覚に、快感が限界を超えた。
「ッァアア!! ひあ! ああ! ぅあ! アアアアア!!!」
再びビクンと身体が跳ねる。ガクガクと震え、悟浄のチンポをくわえこみ、再び絶頂へと駆け上がる。
「ゃぁ! や!! アア! ふぁぁぁ!!!」
「マジ淫乱だな。空イきとか、親父エロすぎ」
「ア! っら! らめっ! らめぇぇ! も、うご、動くなぁぁぁっ!!!」
二度も放ったにも関わらず硬度の衰えない悟浄のチンポが再び俺のナカを犯し始める。イきまくってビクビクしてる粘膜を思い切り擦って、更に前立腺と最奥へ叩きつけるように荒々しく俺を犯す。
「らめぇ! も、っ、う! くる、ぅ! おかしくなるっ!!!」
脳が焼き切れるほどの快感に、目の前が真っ白になる。感じすぎてもう何もわからない。苦しい。もうイヤだ。死んじまう。イきまくって、死んでしまいそうだ。
「なれよ。捲簾」
「やぁぁぁぁぁ!!! っぁ!! ッアアアアアアア!!!」
壊されそうな程の突き上げに、身体が思い切り仰け反って跳ねまくる。イきっぱなしの身体を押さえ付けて蹂躙されて、もう、快感を追うことしか出来ない。
「も、と!もっとぉ!!ふあああああ!!!」
それきり俺の意識は快楽に飲まれた。



「ん……」
ぼんやりと目を開くと、カーテンの隙間から漏れる光で室内はぼんやり明るかった。今何時だろうと手を伸ばし時計を見れば8時21分で、どうやら今日は少し寝すぎてしまったようだと思いながら身体を起こす。休日っつっても、いつも普段通り起きる俺にしては珍しいなと、ベッドから降り部屋を出た。
朝メシなんにしよ。米にするなら顔を洗う前にセットしたほうがいいが、こんな時間だしな。シリアルかパンにすっかなぁ。
とりあえず水でも飲もうとキッチンへ行く。普段は何もない水切りかごにグラスが1つ入っていたので、それに冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを注ぎ、一気に飲み干した。そして、いつものようにすぐにそれを洗おうとパジャマの袖を捲くって気付いた。手首に巻かれた白い包帯に。
なんでこんなモンが……。
ぼんやり考えたところで、ゆっくり昨夜の記憶が蘇ってくる。
酔っ払って帰ってきた悟浄に、リビングで……。
グラスをシンクに叩きつける勢いで置き、慌ててリビングの扉を開ける。
と、そこは何もなかったかのように普段通りで。
ソファーの座面を確認したが、酒も染み込んでいなければその他の液体もこびりついては居ない。それでも昨夜の出来事が夢じゃなかったのは手当された手首を見れば解る。こういう時だけちゃんと片付けやがって……。それが妙に腹立たしい。大体何のつもりであんなことをしでかしたのかだとか、なんてことしてくれたんだとか、言いたいことは山ほどある。堪えきれない怒りに、荒々しく足を踏み鳴らして、俺は悟浄の部屋の扉を勢い良く開けた。遮光カーテンをしっかり引いてある室内は薄暗く、その中のベッドの膨らみはピクリともしない。ズカズカと部屋に入りベッドの脇まで行くと、扉を開けたバァンというすごい音にもめげずに悟浄はぐっすりと寝こけていた。
俺にあんなことしでかして、何呑気に寝てやがる……。
プチッと切れて、掛け布団を投げ捨てるように剥ぎ、悟浄のパジャマの襟首を掴み上げる。
「あぁ? お前良く爆睡こいてられんな?」
低い声で囁やけば、さすがに寝にくかったのか悟浄がぼんやりと目を開けた。
「ん……? ハヨ……」
「ハヨじゃねぇ!!! 昨夜のアレはなんだっ!!!」
至近距離で思い切り怒鳴りつけると、さすがに悟浄が顔をしかめた。
「なんだよ、朝っぱらからウルセーなぁ……」
「テメェ、あんなコトしでかしといてその態度たぁ、いい度胸じゃねぇか!」
胸ぐらを掴んだまま揺さぶれば、悟浄の頭がガクガクと揺れる。
「べっつにいいじゃん。減るもんじゃねぇし、初めてでもねーんだし。ヨかっただろ? 親父だって楽しんでたじゃん」
悪びれもせずに、っつーかむしろ面倒くさそうに言われたその言葉に、怒りがメーターを振り切った。
「ふざけんな! テメェなんざもう知るか! 金輪際お前は俺の息子でもなんでもない! とっとと荷物まとめて出て行けっ!!!」
一気に吐き捨ててしまってから、はっとする。言って良いことと悪いことがあるだとか、そんなことを考える間も無く、言葉が口から出ていた。ヤベ、さすがに言い過ぎた。
なのに、言われた悟浄は表情一つ変えずに「わかった」とだけ口にした。
「え?」
胸ぐらを掴んだまま固まっている俺の手をやんわりと押し、悟浄は面倒くさそうに言った。
「わかったっつったの。今日中に出てくわ」
「は?」
「もともとそのつもりだったし。残ってるモンは全部処分してくれて構わねーから」
言われて部屋の中を見れば、以前より明らかに物が減っている。
俺の手を剥がすと、悟浄は落とされた掛け布団を引っ張り上げた。
「用そんだけ? 俺片付けで朝まで起きてたからまだ眠いんだけど。話終わったなら寝てイイ?」
そのままゴロリとベッドに横になり寝息を立て始めた悟浄を起こすこともできず、俺は呆然と部屋を出て、ぼんやりとキレイに片付けられたリビングのソファーに身を沈めた。
何がなんだか解らない。
酷い言葉をぶつけてしまった。それは解ってる。なのに、悟浄は眉一つ動かさなかった。寝ぼけてて言われたコトが分からなかったわけじゃないだろう。アイツはわかったと返事をしたんだから。挙句の果てに今日出てくって言ったわけだし。……アイツの部屋、物、減ってたな。見える場所だけでもそれが解るくらい。なんでだ。もともと出ていくつもりだったって、何で。だからあんなことをしたのか? 何のために?
と、部屋の扉が開く音がした。いつもみたいな勢いの良い音じゃなく、静かな音。そしてゆっくりと廊下を歩く音。普段の騒がしいのが嘘みたいに、耳をそばだてていなければ気付かないくらい小さい音。それが近づいてくる。なんか、俺緊張してる? 心臓がうるさい。足音が、リビングの前まで来た。コクリと唾を飲んで、扉が開くのを待つ。
けれど、扉は開かなかった。足を止めることすらせずにリビングの前を通過した足音が、やがて止まり、そして靴を履く音が聞こえる。
「…………」
のろのろと立ち上がり、リビングの扉を開ける。
と、玄関に座って靴を履いていた悟浄が、振り返りもせずに言った。
「今まで育ててくれてアリガト」
抑揚の無い声。
「……なんだよそれ」
やっとのことで紡いだ言葉は、自分の声ではないかと思うくらい掠れていて。
だってお前そんなこと思ってないだろ。思ってんならこんなことしねぇだろ。そんなに出て行きたかったのかよ。親子の関係をあんなカタチで壊してまで。そんなに俺の子供ってのが嫌だったのかよ。
「……そんなに俺のコト嫌いだった?」
一生懸命育てたつもりだったけど、俺がどんなにがんばったつもりでも、悟浄が足りないと思っていたらそれが全てだ。俺だって完璧な人間じゃねぇし、そもそも足りてるなんて思ったことも無い。いつだって、必死でがんばって、でも足りなくてあがいてた俺に、笑ってくれたのはお前だった。だから、これは多分、愛想を尽かされたってことだ。
「確かにいい父親じゃなかったし。……あんなことまでするほど嫌われてるとは思ってなかったけどな」
靴紐を結んだ悟浄が、立ち上がり、俺を見て笑った。
「アンタはいい親父だったよ。ただ、俺がそれじゃ我慢できなくなっただけ」
「……?」
「言うつもり無かったんだけどな。でも変な誤解されんのヤだし? 俺、親父が好きだよ。父親としてだけじゃなく」
さらりと告げられた言葉の意味が理解できず、何も言えなかった俺に、悟浄は苦笑して荷物を持った。
「んじゃ、行くわ」
玄関の扉に向き直り、ひらひらと手を振り、悟浄が扉に手をかける。
考えるより先に身体が動いていた。
悟浄のカバンの持ち手を引っ掴み、それを思い切り廊下へ叩きつけた。
いきなり荷物を奪われた悟浄が驚いた顔で俺を振り返る。
「……返事くらいさせろ」
「ンなのいいって。考えんなよ。解ってるからさ」
肩を竦めて苦笑する悟浄を張っ倒したくなる。
「解ってんなら行くなよ」
「へ?」
ムカついて悟浄の肩を掴み、強引に唇を重ねる。
俺の気持ちを勝手に決めんじゃねぇよ。
「ここに居ろっつってんの」
言われた意味が解らないらしい悟浄が瞬いた。
「えっと?」
「俺もがお前が好きだよ。多分」
「…………多分って……」
ここまで来て多分って何だよとぶーたれた悟浄をとりあえず抱き締める。
「仕方ねぇだろ。今の今まで俺の子供だから愛してるんだと思ってたんだから」
あーとかもーとか唸った悟浄は、やがて諦めたように大きなため息を吐いた。
「……うん。解った。ここにいる」
悟浄の腕が俺の背に回される。そういえば昨夜は、あんだけ色々されたのに抱き締められはしなかったな。
「大丈夫、もう何もしねぇから」
「……そりゃ困る」
「へ?」
「お前がしてくんねぇならまた天蓬とでもヤるしかねぇなぁ」
「ちょ!」
ポンポンと俺の背を叩いて言った悟浄に、思いきり振り回された腹いせにそう言ってやると悟浄はスッゲェ情けない顔で俺にしがみついた。
「ヤだ! 親父は俺のだから! 絶対ダメ!!」
なんだそのカワイイ独占欲は。思わず吹き出してしまう。
「じゃ、満足させてくれんだろ?」
笑いながらそう言えば、悟浄はずるずるとその場にしゃがみこんでしまった。
「あーもー、結局親父にはかなわねぇ」
「ハハハ」
そう簡単に思い通りになってたまるかよ、ガキんちょ。






−あとがき−

何故か捲簾×悟浄ばかり浮かぶなぁと思い、たまにはリバいくぜ!なお話。
個人的にはどっちも好きですが、性格的なものを考えるとどうしてもストーリーものは捲簾攻めが多くなってしまいますが、多分行き着く先はいつでもリバありだと思う。
この二人のおバカな掛け合いがかなり好きです。
というか、この話の説明の『拘束してレイプからの快楽落ち』って、どこの男性向け成人指定エロ話だ的な感じですね。
BLも好きですが、男性向け成人指定本も好きで良く買ったり読んだりする結果です。わぁい(意味不)。
最後までタイトルが浮かばず、投げやりになりました。ごめんなさい。
淫乱捲簾万歳。(言い逃げ)


花吹雪 二次創作 最遊記