俺の恋人がサディストだったんだけど!?






捲簾の最近のマイブームは俺の乳首を弄ることだ。



リビングのソファーに座ってコーヒーを飲みながらテレビを見ていたら、捲簾が寄ってきた。
捲簾と俺は恋人同士だ。満員電車で俺が痴漢されてるとこを(なぜかよく痴漢にあう)助けてくれたのがきっかけで知り合った。その後色々あって付き合い始め、今では捲簾の家で同棲している。元々俺はボロいアパートで一人暮らしをしていて、捲簾は一軒家でやっぱり一人暮らしだったから一緒に暮らそうって言われて凄い早さでOKした。
あれからもう半年。早いもんだ。
俺がリビングでくつろいでいると捲簾が寄ってくるのはいつものことだ。ソファーに凭れて居るときは、そのソファーの後ろに立っていつも俺を優しく抱き締めてくれる。
……今までは。
最近そこに新たな行動が追加された。それが俺の乳首弄りだ。
別に恋人同士なわけだし、やることヤってるわけだからそれ自体は別にいい。今さら恥ずかしいの、なんてこたぁねぇよ? けどな、セックスに雪崩れ込む訳でもなくソコを弄くるのはどうなの…。しかも、こっちの都合なんかお構い無しでだ。俺が興奮しようがなんだろうが、捲簾が満足すればそこで終了されてしまう。アフターフォローなんて存在しない。捲簾にオネダリすれば抜いてくれなくはないけど、それだけじゃやっぱ燻る。ちなみにそんな捲簾は、欲情したから乳首を弄る訳ではなく、弄ることによって乳首が勃ってくるのが楽しいらしい。だから勃てばそこで興味が終了するわけだが。
後ろから捲簾の手が回されて、優しく抱き締められた。この腕の中は俺が一番安心する場所だ。身体の力を抜いて目も閉じる。捲簾の匂いがする。この匂い好きだなぁ。いとおしさが溢れていく。
あ、ヤバ。身体、熱くなってきた。
少し困って身動ぎするが、捲簾が離してくれる気配はない。ってか、これだけで反応してしまうのも、元はといえば捲簾のせいだ。平日なんかはこういうスキンシップは夜だけだからいいけど、今日みたいな休日はずっとだから。捲簾は何気にスキンシップが好きだ。そして人の体温が好きな俺が拒むことはもちろん無く、それを解っていて余計に触れてくれる。だから今日も朝から何度かこの腕の中に閉じ込められている。でも、それだけじゃ無くて……。腕の中に閉じ込められるたびに必ず乳首を弄られていて……。今は夏だから俺は上はタンクトップしか着ていない。その薄い布地の上から刺激されれば、もちろん気持ちイイ。がんばって耐えようとしても勃つまでされるんだから、無駄な抵抗はしないけど、それでもそこで放置されるのがわかっているのだから微妙な気分だ。
するりと俺の身体の前でクロスされていた両手がほどかれる。
ああ、またされる……。
観念して目を閉じると、捲簾の指が俺の乳首に触れた。朝から何度も悪戯されているけど、今日はまだ一度もイってないから、燻っていた身体が一気に熱を上げた。乳首を引っ掻くように爪で刺激され、快感が走る。
ヤバい、これだけで半勃ちなんだけど……。
しばらく爪の先で乳首を刺激していた捲簾は、ソコが勃ってきたのに気付いて今度は指の腹で先端を擦り始めた。
「っは……」
思わず声が漏れて、腰が揺れた。けど捲簾はそんなことお構い無しに乳首だけを弄んでいる。やがてソコがしっかりと勃ちあがると、仕上げとばかりに数回指で弾いてから手を離した。
「よし、満足」
良くねぇよ……。
心の中で毒づいて、上擦る呼吸を整えようとするけど、あんま効果がない。乳首だけじゃなく身体中が熱くなってるし、チンポも勃ってるし、……困ったことに最近弄られすぎてただでさえ敏感になってきてる乳首が、もう布が擦れるだけでも耐えられないくらいキモチイイ。まだ昼間だけど、さすがにもう耐えられない。
満足したらしく離れていこうとした捲簾の腕に手を伸ばす。
「捲簾……」
振り返って見つめると、捲簾が意地悪く笑う。
「ナニ? 我慢出来なくなっちゃった?」
コクりと頷く俺から一度離れて、捲簾はソファーを回り込むと俺の前に跪いた。俺は少し位置をずらして、浅く座る体制になる。ジーパンの前をくつろげて、チンポを取り出すと直ぐに捲簾はソコを口に含んでくれた。目が潤んでいるせいで捲簾が良く見えないけど、それでも俺のチンポが捲簾の口を犯しているのは見えて、余計熱が上がる。結構いっぱいいっぱいだったせいで、もう出そう。てか、捲簾のこの犯されてるって感じの面イイな。酷いコトしたくなる。ゾクゾクと背筋を何かが走り抜ける。でも、さすがに嗜虐的な感情は押さえようと思ったけど、乳首弄くりまわされて放置もそれはそれで酷いよな、と、思い直した。我慢なんかしないで思い切りヤっちゃえ。
捲簾の立たせた髪を掴んで、俺は思い切り捲簾の頭を動かした。
「っぐ……!」
捲簾が呻くような声をだしたけど、気にせず喉の奥までぶちこむ。苦し気に眉根を寄せて目を細めている顔を見ると、すっげ犯してる感がして征服欲が満たされていく。捲簾の頭を玩具みたいに動かして、自らの快感だけを追ってみる。こんなことしたのは初めてだけど、意外と罪悪感は湧かなかった。多分捲簾が、苦しそうな顔してるわりに唇で扱いたり舌でくびれとか先端を刺激する程度の余裕を見せてるからじゃないかと思う。ホント、この男は経験豊富な上に快楽に従順だ。
あー、ヤバい。もうマジで出る。
上顎に先っぽを擦り付けるようにして突っ込むと、俺の限界が近いことを察した捲簾がソコを吸い上げた。口内の粘膜で柔らかく締め付けられて、腰が跳ねた。
「っ……!」
びゅるる、と捲簾の喉に直接流し込むみたいに精液を叩きつける。捲簾の唇が俺の毛に張り付いていて、俺が思いっきり口内に突っ込んでいたコトを教えてくれた。
捲簾の髪を握り締めていた手を開いて解放すると、尿道に残ったのまで吸い上げるようにして捲簾は俺の股間から顔を上げた。生理的なもので潤んでいる瞳が色っぽい。
「キモチ良かった?」
あの程度のことじゃ怒りもしない男は笑いながら自分の唇を舐めた。そして身体を起こしてしまう。
チンポを仕舞いジーパンも元通りに戻すと、捲簾は立ち上がった。
「さて、そろそろおやつの準備でもすっかな」
のんびりそう言って本当に歩き出そうとする捲簾に俺は慌てて手を伸ばした。
「捲簾……」
「ん? まだ足りない?」
わかってるクセにわざわざ聞いてくる。それでも身体の熱は下がらない。だってこれはプレイの一環。ただ煽るための言葉。
コクりと頷くと捲簾は少し苦笑した。
「なぁ、悟浄。今日俺お前に酷いコトしちゃいそうなんだけど?」
「酷いコト?」
「そ。そんで多分泣いて嫌がっても止めてやれない」
優しいキスをされて思わず瞳を閉じると、やっぱり優しく頭を撫でられた。
「だから今日は止めとこう」
捲簾の笑顔が愛おしげなそれで、俺のコトを気遣っていてくれるのがわかった。けど、多分それは杞憂だ。だって俺は多分捲簾にされてイヤなことなんて、無い。
答えるかわりに捲簾に腕を回す。そして唇を重ねて舌を突っ込む。捲簾が苦笑した気配がして、舌が俺に答えてくれた。お互いに相手の快感を引きずり出すように舌を絡ませあって、口内を刺激する。飲み込めない唾液が唇の間から零れて俺の顎を濡らした。とろんとした目で見ている俺にもう一度触れるだけのキスをしてから、捲簾が俺の頭を撫でた。
「酷いコトしてもイイ?」
コクンと頷く。
「シて」
俺の返事に満足そうに捲簾は笑うと、俺を横抱きにして立ち上がった。
「!?」
「続きはベッドでな」
軽くウィンクすると、俺をお姫様抱っこしたまま捲簾は寝室へと歩き出した。



静かにベッドに下ろされて、服を脱がされる。今さらこんなことで羞恥なんか感じないし、早く欲しいしで俺は腰をあげて捲簾に協力した。そんな俺の様子に嬉しそうに笑って捲簾は俺のチンポにキスしてくれた。
酷いコトするって言ったわりにいつも通りで少し拍子抜けした。ってか、捲簾の言う酷いコトってなんだろ? セックスの最中の酷いコトなんて、色々有りすぎて解らない。オーソドックスなトコだと焦らしプレイとか、馴らさずに無理矢理突っ込んだりとか? 焦らしプレイは確かに苦しいけど嫌いじゃないし、馴らさなくても濡れてれば多少痛いくらいで捲簾のなら受け入れられる気がするんだけどな。ひょっとして新たな扉を開いちゃったりする? SMとかスカトロとか……。でもベッドでスカトロはなさそう。後片付け大変そうだもん。と、するとSM? んー、それってどうなんだろ。軽く縛られたりとか、乳首をつねられたりくらいのコトならそういうの好きな女としたことあるから正直全然抵抗無いけど、いきなり鞭とかハードなのはなぁ。したことないからちょっと不安かも? でも相手は捲簾なワケだし、うーん、割と何でも平気そうかも。
酷いコトする宣言されてる割に緊張もせずにベッド転がっていると、捲簾も自分の服を脱いで俺に覆い被さった。鼻先を触れ合わせた後、ついばむようなキスが降ってくる。そのキスを深いものに変えながら、捲簾はベッドの隣にある収納に手を伸ばした。上から二段目の引き出し、そこには普段セックスに使うアイテムが入っている。キスを続けながら見るとはなしに見ている視線の先で捲簾の手が中身を取り出す。まずローション、それから……え、ソレなに? 思わず目を丸くして固まると、捲簾は何でもないような顔をして出したものを俺に見せた。ローションは解る。けどその後の2つが解らない。いや、正直に言うなら2番目のは解りたく無いけど解ってしまった。ただ信じたくないだけだ。現実逃避だ。捲簾の手で煌めくシルバーのリング。この状況で指輪をくれるんだ〜なんておめでたい頭はさすがにしていない。自分の頬がちょっとひきつるのが解った。くるくると捲簾が指で弄んでるそれは、いわゆるコックリングと呼ばれるもの……。アダルトグッズの店で見たことはあるけど、自分で体験するのは初めてだ。わぁい、初体験だ〜……なんて思えるか! しかし、そんな俺の動揺は次に捲簾が見せてくれた物によって吹っ飛んだ。ナニコレ、パール……じゃないよな。でけぇし。それは5個のスチール? なんか金属っぽいボールが連なっているもので、一つ目のは直径2センチくらい、次が3.5センチくらい、三つ目が5センチくらいで、四つ目と五つ目はちょっとソレは……というサイズ。オマケのように紐と、終点には3センチくらいのリングが付いていた。嫌な予感しかしない……。だってコレ、明らかに、ナカに入れる以外の使い道が浮かばないんだけど。ナカに玩具入れられるのは全然構わねぇけど、コレはさすがに無理じゃね? だって直径5センチとか捲簾のと同じくらい太いし、最後の二つに至ってはどう頑張っても入らない気がする。つか、押し込まれたら裂ける。下手したら筋肉ぶったぎれる。
「こういうのしたかったんだ?」
一応確認。今日たまたまそんな気分なのか、実は元々そういうプレイが好きなのか。たまたまで用意はしてないよな……、解ってるよ……。
「うん、実は」
そうだったのね、知らなかったぜ。ってか、今までは我慢して俺に合わせていてくれたってことか。それはそれでちょっと気の毒かもしれない。そう思ってしまう程度には俺も捲簾が好きだった。
「マジで嫌なら止めとく。どう?」
「んー……」
ここまで来てもう一度確認してくれる捲簾は、こういうプレイがノーマルじゃ無いことは解っているんだろう。すごく優しくて、俺の事を気遣ってくれてる。それは素直に嬉しい。だから、俺はその気持ちに答えたいなんて思ってしまった。どうせ何をされるにしても、全部捲簾が与えてくれるものなんだから、少し怖いけど、でも、いいって思ったんだ。
「嫌じゃない」
少しくらい痛くても多分平気。
けど、そう思った俺に捲簾は豪快にカミングアウトしてくれた。
「お前解って無さそうだから言うけどさ、俺マジでSだから。お前の苦痛で歪む顔見てぇし、泣き叫ぶ顔が見たい。お前の身体作りかえて、人様に見せられないような身体にしちまいてぇ。普通のセックスでもそれなりに感じるけど、本当はお前が本気で嫌がる事をしたい。お前が泣き叫んで俺に許しを乞うのを想像するだけで勃つ。しかもそんなお前を犯しまくりたい」
本当に恍惚とした表情で囁かれて、言われてる内容はアレなのに、何故か俺の身体は熱を上げた。
「泣き叫んで許しを乞うようなこと、俺にシタイ?」
「シたい」
「……俺にだけ?」
「こんなに滅茶苦茶にしてぇのは、お前だけだよ」
「ならいい」
「……本気?」
「うん」
捲簾に腕を回して引き寄せる。
「俺の全て、捲簾にあげる」
酷いコトされるんだろうって思うけど、案外怖くないもんだな。捲簾のこと、本気で好きだからかな。さっきのボール無理矢理ぶちこまれてケツの筋肉ぶったぎれて垂れ流しになったとしても、別にいいかって思う。そのくらい、捲簾が好きなんだ。だから、捲簾は俺に何したっていい。捲簾のヤりたいこと、俺にして良い。
優しい唇が降ってきて、俺は目を閉じた。そして、膝を立てて自分から足を開いた。
捲簾は俺に触れるだけのキスをしてから、身体を下に移動させた。俺の開かれた足の間に胡座をかいて座ると、コックリングを手に取った。実物を見るのも初めてなら、もちろん使ったことも無い訳で、俺には使い方だってわかりゃしない。思わずじっと見ていると捲簾はリングと俺のチンポの両方にローションを垂らして、先端からするりとソレをはめた。コレ多分今みたいに萎えてる時につけるものなんだろうな。だって勃ってたらやりにくい。ってか、入らないだろう。金属性のリングは伸縮性なんて無い。……え、てか、ソレどうやって外すの? 勃たせるなってこと? イヤ、ソレ無理だから。チンポの根元にリングを固定すると、捲簾は満足げにリングをなぞった。
そして、再びローションを手に取ると、今度はボールにそれを垂らした。普段は下に零れないようにって加減するけど、今日はそんなことお構い無しにたっぷりかけてる。ボールが全て濡れると手を濡らしていたローションを俺のケツの穴に塗りつけた。外側と、ごく浅い部分だけを取り敢えずって感じで濡らすと、馴らしもせずにボールを入り口に押し当てた。
今更そんなことで怯えることも、抵抗する気も無く、力を抜くとすぐに一つ目のボールがナカに入り込んできた。冷たいのと、馴らしてないから拡げられてる感じは有るものの、捲簾に抱かれ馴れてる身体は痛みも無くソレを受け入れた。それに少し安心して身体から力を抜いたまま次を待つと、すぐに二つ目もナカに押し込まれた。さすがに入り口を抜ける時に拡張感はあるけど、痛みはやっぱ無い。うん、大丈夫。
けど、次のはどうなんだろうな。次のは確か5センチくらいだったハズ。普段ソレと同じくらいの太さの捲簾の入れられる時は、少し痛い程度でその痛みが逆に気持ちイイくらいだけど、あれは散々馴らされた後だし、快感で心も身体も溶けている状態だから今と比較すんのはアレだろうな。捲簾のと同じくらいのサイズのスチールのボール、入らなくは無いだろうけど痛そうだなぁ。
ボールを入り口に押し当てられて、少しの不安に目を閉じる。俺は大きく息を吐いて身体の力を抜いた。ぐっとボールが入り込んでくる。一気に拡げられてる感じがして、ヤバっと思ったときには身体が強張っていた。
「いっ……」
馴らされて無いとこんなに柔軟性無いとは思わなかった。痛い。痛い。けど、力入っていたら余計痛いから必死に身体の力を抜く。いつもなら気を使って動きを止めてくれる捲簾が、今日は動きを止めてくれない。
そういや酷いコトしたいって言ってたっけ……。良いって言ったの俺だから我慢しないと。まだ耐えられる範囲だし。
入り口がピリピリする。身体が強張っているせいなのか、受け入れる準備が出来てないせいなのか解らないけど、入り口の筋肉自体も痛い。入るのは今までの経験から解ってるのに、身体が勝手に拒絶する。
「っう……」
上手く力を抜けないせいで苦しいのは解っていても、どうにもならない。せめて抵抗だけはしないようにシーツを握りしめて耐える。
「っ、あああっ!」
ズプッと三つ目のボールが俺のナカに押し込まれた。結構な圧迫感が奥に侵入してくる。圧迫感もかなりキツ……。呼吸を喘がせてなんとか身体を落ち着かせようとするが、ナカは拡げられてるわ入り口は皮膚がヒリヒリするわ筋肉はズキズキするわで震えが止まらない。
なのに、捲簾は次のボールを入り口に押し付けた。
「ウソッ、や……!」
この行為が始まってから初めて俺は捲簾に抗った。身体がまだ落ち着いてなけりゃ、力だって入りまくってる。さっきのボールですらこんなにダメージ食らってるってのに、次のなんて入れられたら……。あんなデカイの、マジで壊れる……。
背筋をゾクリと悪寒が駆け抜ける。思わずずり上がって逃げようとした身体を捲簾に片手で押さえつけられた。いつもとは全然違う、手加減の無い力で。
「や、やだっ! 止め……!」
必死で抗うのにびくともしない。そんな俺を見下ろして捲簾は笑った。欲情を隠しもしない目で。
怖い、怖い、怖い!
壊される……!
俺の胸を押さえつける捲簾の手を剥がそうと手をかけた瞬間、もう片方の手で四つ目のボールが俺のナカに押し込まれた。
「ッ!!!」
身体が思い切り跳ねて、入り口がはっきりと拒絶した。スチールのボールはナカには入らず押し付けられている状態で止まった。入り口がきつく閉じていて入りゃしない。ガクガク震える手が捲簾の手を握りしめ、爪を立てている。捲簾とのセックスでこんな反応をしたのは初めてだ。完全な拒絶。強張っているだけじゃなく、明らかな意思を持って入り口の筋肉がソコを閉ざしている。
なのに、そんなの捲簾には解ってるハズなのに、捲簾はボールを押し込む手に力を入れた。
「ぅ、あ!」
力ずくでボールが押し込まれる。入り口の筋肉を抉じ開けられて、激痛が走る。いつもと全く違う行為。挿入が目的なんじゃない。これは俺を壊すのが目的だ。
「あ、あ、あ!」
痛くて痛くて、見開いた目から涙がぼろぼろ零れてく。完全に拒絶している身体を、有無を言わさず拡かされていく。まるで身体を引き裂かれるようで、このまま死ぬんじゃないかなんてことまで浮かんでくる。
と、捲簾が熱い吐息を零した。
……ホントにこんな状態の俺を見て興奮しているんだ……。
怖い。こんな男、俺は知らない。
捲簾は欲情に濡れた目で俺を見て、舌舐めずりをして口端を吊り上げた。
「ッ!!!」
グチュッという音と共にものすごい激痛が俺を引き裂いた。一気に意識が混濁する。痛くて痛くて痛くて、それだけで、他のことは何一つ解らない。身体が俺の意思なんか完全に無視してガクガク震えてる。呼吸すらままならない。捲簾の手を握り潰しそうな勢いで掴んでる。
「ッ、は……、あ……ぐ、ぅあ…」
痛い、痛い、痛い。
入り口を強引に通過したボールがその先へ押し込まれて、ナカの粘膜まで有り得ない程押し広げられていく。耐えきれない圧迫感に頭を振り乱してもがくけれど、捲簾が俺を押さえつけていてそれを許さない。ビクビク痙攣してる俺を喜悦を浮かべてうっとりと捲簾が見下ろしている。ボールを奥深くまで押し込んでいた指がズルリと抜かれた。皮膚が引きつれているのか、そんな些細なことまでものすごく痛い。
「あーあ、裂けちゃったな」
赤く濡れた指を捲簾が舐めた。
痛いワケだよ……。捲簾の指の濡れ具合からして、結構裂けてんじゃね? てか、裂けたの皮膚だけなんかな? 結構な痛みだったから、もしかしたら筋肉も傷ついてるかも……。てか、まだ痛いんだけど。全然おさまらない。
「悟浄」
声と共に入り口に何かが触れた。何かっていうか、そんなの一つしかない。さっき捲簾に見せられたボールの数は5つ。でも、今俺のナカに入れられているのは4つ。
押し当てられる最後の一つ、4つ目と同じサイズの大きなスチールのボール。
けど、ダメ……、もう、無理だから。
「や、だ……」
ふるふると首を振ると、髪が乾いた音を立てた。俺を押さえつけていた捲簾の手がどけられる。けど、身動きしたくてもズキズキと走る痛みで逃げることすら出来ない。
「も、ヤダ…。……お願い、止めて…」
捲簾が身体を屈める。そして俺の腰を片手で拘束した。
「止めて…、許してっ…!」
もう俺は何をされても逃げられない。
「イイ声で鳴けよ」
吐息で囁いて、抵抗すらまともに出来なくなったズタボロな身体に、捲簾は容赦なくボールを詰め込んだ。
「がっ、ああああああああああっ!!!」
痛い、怖い、酷い、助けてっ……。
目を開いているはずなのに、何も見えないし何も聞こえない。ただ、ドクドクという音だけがうるさいくらいで。
「っあが…、ぅぐ…、あ!」
すべてを引き裂いて無機物が俺を犯していく。限界を超えて裂けているところを、さらに引き裂いて深く壊していく。
泣き叫んでもがくのに、逃げることすらできない。
「っか…、は! っふ……、ぐ…ぁああ!」
子供が虫の羽をもぐかのような残酷さで、捲簾は俺のナカに最後のボールを詰め込んだ。
「っは…!!! ……あ、あ…ぅ……」
身体はピクピク痙攣しているし、何も映さない瞳は焦点すら合わない。
腹のナカのボールは異物感とか圧迫感とかそんな生易しい物じゃなく、このまま俺はこの無機物に腹ンナカから犯されて引き裂かれて死ぬんじゃないかと思わせるほどで。俺のナカに、玩具が詰め込まれてる……。いや、もしかしたら逆かもしんない。俺が玩具なのかもしれない。ってか、多分そう。俺が、捲簾の玩具。
「腹膨らんでる」
俺の腰を開放して、捲簾は血に濡れた指で下腹部を撫でた。多分そこは、ボールの形に膨らんでいるんだろう。あんなデカイのが入ってるんだ、そうなって当然だ。指が辿った場所に赤い血が線を引く。
うっとりとした顔で捲簾が立てていた俺の膝を掴んで押し上げた。
「っう…、イ、つぅ……!」
身体を動かされて、鋭い痛みが俺を襲う。ぎゅっと目を瞑って唇を噛む。身体を折り曲げられて持ち上がった腰に、生暖かい何かが伝った。
これ、血かな…。あー、もう、マジ酷いことになってそう。
痛いことは痛いんだけど、なんかだんだん慣れてきたっていうか。防衛本能が働いてるのかもしれないけど、痛いのが遠い感覚になってきたっていうか、自分の感覚じゃないような錯覚してきた。ちゃんと痛いって認識はしてるんだけど、実感が伴わなくなってきてる。
自分でソコを見ることはできないから、限界を超えた場所がどんな状況になってるかはさっぱり解らない。皮膚が裂けて血みどろなだけならまだいいんだけど…。
「さすがに閉じなくなったか」
「っ!?」
開かれた脚の間を眺めていた捲簾がからかうように言った言葉がとっさに理解できなくて思わず捲簾を見ると、思いっ切り目が合った。
今、捲簾、何て言った…? さすがに、閉じなく……? って……、え?
「お前のケツの穴、開きっぱになってんぜ? ナカ、ピンク色ですっげエロい」
さっと、血の気が引いていく。さっきまでとは違う種類の震えに身体がガタガタと震える。
開きっぱって…、それって、俺の身体……、まさか……。
「どうよ、ブチ壊された気分は?」
壮絶な笑顔を浮かべて捲簾が笑った。そして、指でコツコツとナカに埋め込まれたボールを叩く。叩かれたスチールのボールの振動は響くのに、その指は俺の身体に触れない。ってことは、つまり。
信じられなくてふるふると首を振る。
嫌だ、そんなの、信じない、信じたくない。
縋るような目で見つめる俺を見て、捲簾は掠れた声で囁く。
「その顔サイコー。イきそう」
涙でぐちゃぐちゃな俺の頬を撫でて、脚の間から這い上がって、捲簾は俺の顔を跨ぐ。そして、がっと髪を掴み口元に捲簾のチンポを押し付けた。固く勃ちあがっているチンポからは透明な体液が溢れていて、全体をベタベタに濡らしている。口を開けろと言わんばかりに顔に擦り付けられて、捲簾の体液に汚されていく。完全な玩具扱い。捲簾の性欲処理の玩具。
何かが頭の中でふつりと切れた気がする。それが何かはわかんないけど、多分正気とかプライドとかそういった感じのもの。
口を開いて捲簾のチンポに舌を這わせると、一気に喉まで突っ込まれた。
「っぐ…、ん!」
吐きそうになって喉の奥がびくびく震える。それが気持ち良かったのか、何度も喉の奥にチンポの先端を押し付けられる。顔をまたがれている体勢だから手は使えないし、ろくに抵抗すらできないで、ただ口腔を犯され喉まで突っ込まれる。捲簾の快楽の為だけに身体を使われるそれが、苦しくてボロボロ泣きながらそれでも懸命に奉仕していると、唐突に捲簾のチンポが引き抜かれた。涙に濡れた目で見つめる俺の目の前で数度扱くと、低く呻くような声と共に顔に精液がブチ撒けられる。熱い液体が俺の顔中を濡らしていく。
「すげぇツラ……」
欲情しきった声で囁かれてゾクリと身体に何かが走る。
おかしい、俺の身体……。ケツの穴壊されたのと一緒に心まで壊されたかもしんない。こんなの……、こんな扱いされて、……興奮してるなんて……。
ナカから拘束されているような感覚すらする圧迫感で身体なんてまともに動きゃしない。まだ痛みだってちっとも取れてない。それでも、なんでだろ。捲簾が欲しい。捲簾に触れられたい。俺の身体でもっとイって欲しい。玩具にしていいから……。
重い手を持ち上げて捲簾の腰を撫でる。
「……捲簾がキモチヨクなるように、俺の身体使って?」
捲簾のチンポに頬を擦り付けて上目遣いでねだる。俺を見下ろしていた捲簾の瞳にそんな俺の姿が映り込んだ。どろりと溶けた顔して、どこか嬉しそうにチンポに顔を寄せている白濁まみれの、俺が……。
捲簾、引くかな……。ここまでイっちまった俺は、さすがにイヤかな。それとも、壊れた俺を見て、満足して、俺を捨てるのかな。そうかもしれない。処女と同じで一度壊せばもう元には戻らない。壊すのが楽しいなら、壊れちまった俺になんてもう用なんて無いだろう。
……けど、これは、俺が望んだコトだから。
好きだから、捲簾が好きだから。その気持ちは不思議なくらい変わってない。だから、捲簾は俺を好きにしていい。俺を壊すのが捲簾の自由なら、俺を捨てるのも捲簾の自由だ。
捲簾の手が頬を辿り、俺の顔を濡らしている体液を掬って俺の口に入ってくる。指をキレイにするように丁寧にそれを舐めた。この指は、俺の大切な、ご主人様のモノ。
「イイ子だな」
優しい微笑みに嬉しくなってその指に吸い付くと、ゆっくりと口から指が引き抜かれた。再び俺のだらしなく開かれた脚の間に胡座をかいた捲簾は、ケツから伸びている紐にくっついているリングを軽く引っ張った。
「っんぅ、く……」
ボールが体内で動かされる痛みに苦痛の声が漏れる。痛い……けど、でも。
まだ俺で遊んでくれるんだ……。
ほの暗い愉悦に思わず笑むと、捲簾は俺の手を掴んでそれを俺のチンポに触れさせた。萎えたままのチンポに手を押し付けられて、捲簾の意図が解らなくて伺い見ると俺の手ごとチンポを握られた。
「自分でシてるところを俺に見せろ。出来るだろ?」
やんわりと刺激しながらそう命令されて、俺はコクリと頷いた。捲簾の手が離れていったけど、俺は自分のチンポを揉むように握った。見せろって命令だから、敢えて包み込みはしない。捲簾にちゃんと見てもらわなきゃいけない。俺がオナニーしてるとこ、自分でチンポ扱いてイヤらしいことしてるトコ。
痛みが邪魔をしてなかなか勃たなくて、ちょっと焦る。気持ち良くないとかそんなのはどうでもいいんだけど、捲簾がつまらないんじゃないかと思って。せっかく見てくれてるのに、飽きられてしまう。それだけはイヤだ。
どうしよう……。どうしたら勃たせることができるだろうか。あ、そうだ。ちょっと命令とは違うけどイイよな? ダメだったら怒られるだろうからその時に止めよう。でも多分俺がやらしいことするぶんには、捲簾は止めない気がする。
チンポから片手を外してそろそろと持ち上げていく。捲簾の視線を痛いほど感じる。見られてる。俺のやらしいカッコ。
……もっと、見て。
腹を撫で上げて胸に指が辿り着く。その指で、俺は自分の乳首を摘まみあげた。
「っあ……」
ヤバい、ナニコレ、気持ちイイ。すっかり性感帯として開発された乳首を少し強目の力ですりつぶすと、チンポがピクリと跳ねた。いつの間にこんな身体にされてたんだろ……。男なのに、チンポ扱くのより乳首すりつぶされるほうが気持ちイイなんて……。命令されたわけでもないのに、自分で自分の乳首弄って勃たせてるとか……。
「淫乱乳首、気持ちイイの?」
「っ!!」
羞恥に身体が熱くなる。一気にチンポが固くなる。自分の身体なのに反応が制御できない。痛みを上回る快感に脳が侵されていく。こんな酷いコト言われて気持ちイイなんて。こんな反応してたらそれを否定なんて出来やしない。
「気持ち、イイ……」
言葉が勝手に零れ落ちた。乳首を弄っている手も、チンポを扱いている手も止まらない。いつの間にかシーツに放り出されていた脚を、自らそろそろと開く。膝を立てて、捲簾に全部見てもらえるように。そんな僅かな動きにさえ苦痛を感じたけど、もうそんなことどうでもよかった。俺を見てる捲簾が口端を吊り上げて笑っている。こんな俺を、見てくれている。乳首を弄っていた指の動きを少し変えて、ソコを摘まんでみた。気持ちヨくて、もう苦痛にチンポが萎えることもない。ぐっと強目に乳首を摘まむと、俺はソコを引っ張った。
「ふぁ……、あ……」
トロリとチンポの先端から先走りが溢れる。気持ちイイ、乳首、気持ちイイ、止まんない。引っ張られるのが気持ちイイ。女の胸みたいに乳房があるわけじゃないから、皮膚を引っ張ったときみたいに乳首と胸の皮膚が伸びる。自分の指で潰されて、伸ばされてる乳首を捲簾に見られてると思うとたまんない。ゾクゾクして、もっともっとって、加減も忘れて乳首を引っ張る。少し痛いくらいがイイ。気持ちヨくて、声押さえらんない。ヤバい、乳首でイキそう……。チンポを扱く手に力がこもる。指でわっかを作って思い切り上下させれば、先走りで摩擦もなくてそこからも快感が這い上がり、クチュクチュと音がたつ。快感を耐えようと無意識に身体に力が入った。その瞬間、ナカに入っているボールを身体が締め付けた。
「っあああ!」
ナカに入っているバカデカイボールを、俺の意思なんか無視して内壁がくわえこむ。ビクビクしてる内壁をボールが擦る。苦痛も恐怖もぶっ飛んで、身体が作り替えられてくみたいに圧迫感すら快感に変わっていく。無意識に腰が動く。
「も、イく! イく!」
「イけよ」
捲簾がナカの硬いボールを少し押し込んだ。ぐりっとボールが前立腺を押し上げる。
「や! 出る! 出ちゃう! 精液漏れる!!」
前立腺に触れるボールも、チンポを扱く指も引っ張ってる乳首も、全部真っ白になるほど気持ちヨくて、頭を振って泣き叫ぶ俺に捲簾が笑った。
「出せよ。出せるもんならな」
ビクンと身体が大きく跳ねる。世界から色も音も消えて呼吸すらできないほどの絶頂。
「あああああっ!!?」
苦しい。気持ちイイ。出したい。チンポ爆発するっ……。
おかしい、なんで? イったのに、気持ちイイの止まらない。青天井みたいに苦しいくらいの快感。てか、精液出せてない……? ドライ? なんで? ヨすぎて狂いそう。誰か止めてっ。
なのに快楽を追う身体は止まってなんかくれなくて。ビクビク跳ねながらナカのボールをくわえこみ、腰を揺らめかせて自分から前立腺に押し付け、乳首をちぎれるほど強く爪をたてて摘まみ上げて、チンポを思い切り扱く。浮き出た血管を潰すように扱くと先端から体液が溢れ出すのに、どうして精液を吐き出せないんだ。飛びそうな快感に支配されて、全てを忘れ、ただそれを追い求めて自ら淫猥な行為を施す。イきたくて涙をボロボロ溢しながらチンポを扱いていた手が、何かに触れた。根元にぐるりと回る金属性のリング……。
『出せるもんならな』
捲簾の言葉を思い出す。そして理解する。このリングのせいでイけないってことを。
「やだっ! やだぁぁぁぁ!!!」
半狂乱になって根元のリングを外そうとするのに、つるりとしたそれはきつく根元に食い込んでいて動くどころか掴めやしない。
「やだっ! イきたい! イきたいのに! やっ! も、イかせてぇ!!!」
苦しい。こんな快感知らない。こんなの、ダメだ。気が狂う……。助けてっ、……捲簾!
焦点が合わない目で、必死に捲簾を見る。唯一俺を解放できる、こんな状況を作り出している男を。なのに、その男は俺を見下ろして目を細め口端を吊り上げた。
「まだ俺は満足してねぇよ?」
捲簾の手がベッド脇の収納に伸ばされる。上から二段目の引き出し。
「ヤダ……」
これ以上はダメだ。おかしくなってしまう。気が狂う、……戻れなくなる。
引き出しから捲簾の手が何かを取り出す。小さな洗濯バサミ。どこを挟むのか瞬時に理解して、なのに、身体はただ熱を上げた。2つの洗濯バサミ。普通の、プレイ用のクリップみたいな力の弱いヤツなんかじゃない。挟む部分にギザギザまでついてる本当に普通の洗濯バサミ。
「捲……簾っ」
自分が逃れたいのか期待してるのか解らない。ただチンポも乳首もビンビンに勃っていて、捲簾にされる何もかもを望んでいる。
乳首に洗濯バサミが触れた。それだけで快感に溶けてしまいそうになる。ゆっくりと乳首を挟まれて、バネを広げていた捲簾の手がそっと外された。
「ッアアアアアア!!!」
多分痛み、を感じて、衝撃に身体がキツくナカのボールを締め上げた。
「か、は……っ」
ダメ、ダメ、止めて、こんなの。
はくはくと呼吸をしようとするけど上手くいかない。意識が混濁していて何も解らない。もうやだ、これ以上シないで。
少し冷たい硬い物が逆側の乳首にも触れる。そして乳首を確実に挟む場所で、ゆっくりと手が離された。
「ッッッ!!!」
声も出せずに身体が仰け反った。精液を吐き出せないまま絶頂に強制的に押し上げられる。ナカを拳くらいのスチールのボールに犯されて、乳首を洗濯バサミで潰されて、チンポにコックリングつけられたままドライでイきまくる。イってもイっても全然熱がおさまらないまま、ビクビクと身体を跳ねさせて絶頂に押しやられて帰ってこれない。
もう、無理……。意識が白濁していく。快楽に溶けていく。ああ、もう……。
カチンと小さな音がしたと同時にチンポの先から何かが零れ落ちる。そして、一気にナカのボールが引きずり出された。
「が、はっ! あぐっ! ぅあああ!!!」
内臓ごと引きずり出されてるんじゃないかってくらい一気に引きずり出され、痛みが麻痺しかけてた入り口を再び限界を超えて抉じ開けてスチールのボールが引きずり出されていく。その瞬間、意識が真っ白になって、俺はイった。リングから解放されたチンポから凄い量の精液が自分の身体に降りかかる。呼吸すら出来ない。完全に脳が溶けている。気持ちヨすぎて死にそー……。
……ああ、ダメだ。
…………もう、戻れない……。



ぼんやりとした視界は薄暗くて、何も認識出来ない。それでも、いつもの寝室なことだけは解ったから、取り敢えず状況把握は止めて、すぐ傍にあった温もりに抱きついた。その瞬間、ものすごい激痛が走った。
「っ!?」
びっくりして硬直すると、その動きのせいで新たな痛みが襲ってくる。パニック状態になって半泣きになった俺の頭を、優しい掌がそっと撫でてくれた。視線だけで見れば捲簾が困ったように笑いながら俺の頭を撫でている。
「大丈夫か?」
その言葉に記憶が甦ってくる。
ああ、そっか。そうだった。
「ゴメンな。動けない上に痛いだろ?」
確かに全然動けない。普段のセックスでこんなになったこと無いのに。
仕方なく捲簾に頭を撫でられるまま大人しくしてると、捲簾が俺の額にキスしてくれた。これ、気持ちイイな。微睡みそう。目を閉じて身体から力を抜く。
「ホント、ゴメンな」
額に吐息が触れてくすぐったい。別に、謝らなくて良いのに。確かに酷いコトはされたけど、俺は怒ってなんかいない。まぁ、身体は動かせないし、あちこち痛いけど。でも最終的にはヨくなっちゃってイきまくって……。最後の方の記憶が曖昧だけど、もっとって、ねだった……ような? うっわ、マジかよ! ハズッ! あんなことされて気持ちイイとか、淫乱っつーよりもう変態なんじゃ……。ヤバい、捲簾に引かれてたらどうしよう。
そっと目を開くとすぐそばで俺を見てる捲簾と目があった。捲簾はすごく優しい微笑みを浮かべてもう一度俺の頭を撫でて、ゆっくり身体を起こした。
「夕飯、食えそう?」
ベッドから降りて捲簾は立ち上がってしまう。温もりが離れてしまい、少し寂しい。
「メシより抱っこして欲しいな〜なんて」
おどけて言った俺に捲簾が苦笑した。静かにベッドが沈みこんで胸の中に優しく抱き込まれた。捲簾の匂いがする。やっぱ、この場所好きだなぁ。
「なぁ、悟浄」
「ん〜?」
捲簾の胸に頬を擦り付けていると、頭を撫でてくれる。
「ここを出ていってもいいんだからな?」
頭が真っ白になった。
「え……?」
顔を上げようとしたのに、抱き締める腕に力が込められて阻止された。
「それって、別れるってコト……?」
心臓がドクドクうるさい。なんで、イキナリそんなこと……。飽きた、とか? ってか、引いた?
目の前が真っ暗になる。けど、頭のどこかの冷静な部分が仕方ないと俺に告げる。そうだ、これは仕方ないコトなんだ。あんな姿見てそれでも好きでいてくれるなんて、ない。
もう一度捲簾の胸に頬を擦り付けた。暖かい。どこよりも安心する、大好きな人の腕の中。
きっと最後だから。だからもう少しだけ……。
「解った。今までありがと」
捲簾の腕から力が抜けて、ゆっくり身体が離れていく。泣いたら迷惑だから、俺は笑って捲簾を見た。
「……なんで捲簾が泣いてんの」
びっくりした。捲簾の泣き顔なんて初めて見た。なんて静かに泣くんだろう。てか、泣きたいのは俺の方だ。先に泣くなんてズルい。
「え、あ。ワリぃ」
自分が泣いていることに気付いてなかったのか。捲簾は慌てて目を腕で擦った。思わずため息が出た。
「イイケド……。つか、泣きたいのはこっちの方だっつーの」
髪をかきあげると、捲簾がきょとんとした。
「なんでお前が泣くの?」
「え、だって捲簾が別れるって」
なんか話が上手く噛み合ってない? あれ?
「ちげーよ。お前がもう俺なんか嫌だろうと思ったから」
「へ?」
「あのなぁ、自分がしたいこと思う存分しておいて、俺から別れたいなんて言うこたぁねぇよ?」
「え、だってさっき出てけって」
「出てけなんて言ってない。お前がもう俺といるのは嫌だろうから、ここから出ていっても良いって言ったの」
そういえばそんな言い回しだったような……。
「ゴメン! 勘違いした!」
「別にいいけどよ」
うわー、なんで勘違いしたんだろ。だって捲簾絶対引いてると思ったんだよ。だから、……って、俺それをものすごく気にしてたってことなんだろーか。
「あのさ、引いてない?」
「何に?」
全く解らないようで、捲簾が聞き返す。
てか、え、それを言えと。
「俺、淫乱で……変態みたいなんだけど……」
「ああ」
ようやく理解してくれた捲簾はさらりと言った。
「引いてないどころか、大歓迎。むしろウェルカム」
びっくりして捲簾の顔を見つめてしまう。
あんな俺でもいいんだ……。
「むしろ、俺はお前の方が引いてるんじゃないかと思ってるんだけど?」
「え?」
「あんなことしたいと思ったこと無かっただろ? 言質を取って無理矢理しちまったからな。嫌だったり怖かったりしただろうなって」
確かにそうだった。けど。
捲簾の穏やかな苦笑。この男は結局は優しいのだ。
「もうしないから。約束する。それでも嫌だって思うなら、ここから出ていってもいいからな?」
もしかして捲簾も怖かったんだろうか。あんなことして、俺に嫌われたらとか、拒絶されたらなんて、怖かったのかな。だから半年も隠してたのかな。
俺は捲簾に手を伸ばした。
「ヤダ」
身体を引き寄せて自らその胸に顔を埋める。
「もうしないなんてヤダ」
「へ?」
「またしてくんなきゃ許さない」
捲簾の鼓動が聞こえる。すごく早くなってる。なのに、礼儀のように抱き締め返してくれている腕は硬直していて回されてるだけだ。
「でも……」
まだ拒むのか、この男は。ちょっとムカつく。もう、そんな理性ブチ壊してやる。
「捲簾、好き」
俺は捲簾にぎゅっと抱きついた。大好きだから、捲簾が大好きだから。だから。
「俺にもっと酷いコトして」
次の瞬間、捲簾は俺をきつく抱き締めた。









後日談



「なぁ、捲簾」
「ん?」
「ちょっと聞きたいコトあんだけど」
「……今かよ」
うん。捲簾の言いたいことは解る。だって今セックスの真っ最中だし。結局あの後しばらく俺の身体にダメージが残ってたせいで、捲簾とはヤってない。今日久しぶりにそういうコトになっている。今日も酷いコトされるのかなっていろんな意味で俺はドキドキしてたんだけど、今日はノーマルセックスっぽい。すごく優しい愛撫に身体が緩やかに熱を上げていく。そんな状態で質問コーナーなワケで、捲簾が言いたいコトも解るんだけど、俺の方も今聞きたいんだから仕方ないじゃん。
「捲簾が、気持ちヨくないかもだけど平気?」
「は?」
手を止めて捲簾が俺の顔を不思議そうな顔で見た。
いや、実はあれからずっと気になってはいたんだよ。あの日スチールのボールをブチ込まれたソコは、裂けて血みどろになっていたあげく閉じなくなっていた。ソコの筋肉は一度切れたら戻らない。別に捲簾になら俺の身体にどんなことされたって構わないし、例えそれで壊されたとしても俺は幸せだ。
けど、そんな身体で捲簾が快感を得られるかどうかは別の問題じゃね? 膣だってそうだけど、ソコの筋肉がぶった切れてたら当然ソコは締まらない。締まらなければチンポ突っ込んだとしてもたいして気持ちヨくなんてない。幸いなことに、俺はそれを経験上知っていた。あの時のことは、後悔なんか全然していないし、また同じような状況になったとしても、壊れると知っていても俺はシて欲しいって言う自信はある。けど、それはあくまで俺の話だ。
「えっと、俺のケツ……さ、入れても、捲簾気持ちヨくないかも……」
改めてどうしようもない自分の身体を自覚して、捲簾を見てられなくて視線を逸らした。
捨てられたりして……。そうじゃなくても、もうしてくれなかったりして。そんでセフレとか作られたらヤだなぁ。捲簾には、ホントは俺以外触って欲しくない。
捲簾がため息を吐いた。少し身体が硬くなって、ぎゅっと目を瞑る。
「なんでそう思ったの?」
なんでって。
「この間の、ボール……で、俺……」
「ああ、成る程」
やっと理解したらしい捲簾は、何故か乱暴に俺の頭を掻き回した。謎な反応に思わず目を開くと、捲簾は凄く愛おしげな顔で笑っていた。
「なぁ、悟浄。お前、自分のケツの穴ガバガバになってると思ってる?」
ガバガバって……。まぁ、そうなんだけどさ。
コクリと頷く。
「だから、そんな穴に突っ込んでも俺が気持ちヨくないんじゃねぇかって心配してくれたんだな?」
もう一度頷く。したら捲簾は俺の頭を今度は優しく撫でてくれた。
「お前、ウンコ垂れ流しになってる?」
「へ? いや、そんなことねぇけど?」
「だよな。なら心配いらねぇよ」
「へ?」
きょとんとする俺に捲簾がキスを降らせる。
「壊れてたら垂れ流しになるし、そもそもあんなデカイモン入れたら筋肉ぶった切れてなくてもすぐに締まらなくなって当たりまえだわな」
「じゃあ俺のケツ……」
「今のところ無事だな」
なんだ、そうなんだ……。一気に気が抜けた。あんだけ無茶したのに無事だったんだ。すげぇな、俺のケツ。
「まぁ、玩具抜いた直後はさすがに伸びててガバガバだったけどな」
笑いながら囁かれて顔が熱くなる。あの日ボール抜いた後、捲簾は俺にチンポ突っ込んでくれたけど、そうか、ガバガバだったのか。あれ? でもあの時捲簾、ちゃんと俺のナカでイってくれてたような。首を傾げると、捲簾は俺の乳首を摘まみながら教えてくれた。
「ケツ、ガバガバだろーがなんだろうが、お前だからイイんだよ。筋肉ぶった切れて垂れ流しになっても安心しとけ、俺はスカトロもイける」
…………ここ、感動するとこ……?
非常に複雑な気分になっていると、焦れた捲簾に乳首を噛まれた。
「もういいだろ。早くお前を喰わせろ」
ちぎれそうなくらいの力で噛まれて、痛くて、けどそれがとてつもなく気持ちヨくて、俺は仰け反った。
ケツの穴は壊れてなかったけど、俺の身体は痛みも快楽に変換されるように作り替えられてしまったようだ。でも、平気だ。だって捲簾はそんな俺でも全然構わないみたいだから。
噛まれたせいで勃ったチンポに捲簾の指が絡み付く。
「痛いの好き?」
「好き……!」
腰を押し付けて快楽を求めると、焦らすことなくチンポを扱いて、さらに強く噛まれた。
「血の味する」
欲望を隠しもしない捲簾の声。俺の大好きな声。好きだから、捲簾になら何されても平気。この先どうなっても大丈夫。だって一人じゃない。捲簾と一緒だから。二人ならきっとどこまでもイける。だから、捲簾。……俺と二人でどこまでも堕ちよう?






−あとがき−

乳首責めを書きたかったはずが、どうしてこうなった。「優しく首輪で所有して」が、短編のくせに中編並のファイルサイズになってしまったので、前回の反省を活かして今回はただエロだけを書いたつもりが、アレより長くなったという。おかしいな! ほぼエロで構成されています。そして今回も大将がやらかしてくれました……。ああああああ、悟浄が大変なことになってっ……。もはや乳首弄りより拡張のがメインになっている…。そして何より怖いのは、エロ後半はいつもカットされていることかな! どんだけエロ書きたいんだ私は。ちなみに日記でも語りましたが、制作場所は通勤時間とか職場の空き時間とか昼ご飯中とかです。公共の場をなんだと思ってるのかと。あと、捲簾をなんだと思っているのかというのも…。あ、大将が絡むエロ話を書こうとするといつも激しくなりがちかも…。きっと遊び人だからだね!?(絶対違う)そしていつも無駄に悟浄が一途です。乙女か、乙女なのか!? ちなみにタイトルはあまりに浮かばなかったのでラノベ風の長編タイトルにしてみました。


花吹雪 二次創作 最遊記