FATE(番外編)(side:三蔵)


俺の家にサルが引き取られて来たのは、俺が12の時だ。サルはまだ小学1年だった。
ウチで引き取ることになった経緯は解らないが、ある日突然俺の叔母に当たる人物がソイツを連れてきて俺に面倒を見ろと押し付けた。
ふざけんなと文句は言ったが既に社会的観点で引き取られた後で、かつ、俺の家は大きな会社をまわしていたこともあり両親はほぼ不在で、俺はソイツの面倒を見ざるを得なかった。
サルは事故に会って記憶を失っているらしく、過去の思い出を持っていなかった。
が、そんなことはお構いなしといったくらい底抜けに明るかった。
すぐに俺に付きまとうようになったが、生憎俺はその頃すでに敷かれたレールを走ることが決まっていたため、教育時間というのがあり、当然サルは一人でいることも多かった。
だが、アイツはすぐに新しい小学校にも慣れ、学校から帰ってくるとすぐに外へ遊びに出かけるようになった。

そんなある日、夕食だと俺を呼びに来たサル…悟空は、嬉しそうに俺に今日の出来事を報告をした。
「新しい友達ができたんだ!」
コイツは明るいし人懐っこいから友達が多い。
だから、新しい友達報告も良くあることだ。だが、いつも以上に嬉しそうだ。
「どんなヤツだ?」
興味が湧いたので素直に聞いてみた。
そうしたら、俺が聞いたことが嬉しかったようで、悟空はスゲェ笑顔になった。
「えっとね、優しくって、背が高くって、何でも知ってる、スッゲェキレイな兄ちゃん!」
何でも…ねぇ。
まだ小さい悟空は無邪気にそう言ったが、すでに捻くれていた俺はその言葉に共感は湧かなかった。
昔は大人は何でも知ってると俺も思っていたな。
もうそんな幻想はいだいちゃいねぇが。
それきり俺はそいつの事を聞いたりはしなかったわけだが、サルはことあるごとに今日の出来事報告をするわけで、ソイツの話は時々聞いていた。
名前は「天ちゃん」。学生らしい。悟空が公園で遊んでいると、一緒に遊んでくれたり勉強を教えてくれたり話を聞いてくれたりするらしい。そして相変わらず何でも知っている、らしい。
悟空からその言葉が出る度に俺は僅かに苛立つ。
過剰反応しすぎだという事は解っている。
ただ、何に苛立っているのかは良く解らなかった。
何でも知っている人間が居るわけねぇのに信じ切っている悟空になのか、現実的に考えてしまう自分になのか、それとも俺の知らない俺じゃない誰かを誇らしげに語るその事実になのか。

中学に上がると同時に、俺にはある程度の仕事が任された。
まだ責任のある仕事は無いが、それでも社内で値踏みされる仕事だ。
正直疲弊していた。
あからさまに子ども扱いをする連中はまだいい。
それよりも、協力的な態度を取りつつ、隙を狙っている連中が厄介だ。
まだ時間が浅くて、好意の裏も解り辛い。
誰が味方で誰が敵なのかが曖昧なまま、しかし、あからさまに全員敵扱いをするわけにもいかず、味方が欲しいとかそんなんじゃないが、ワンマンでやれるような立場でもなければ知識も無い。
そして現在俺の教育係的立場の男が無駄に野心家で疲れる。
利用されてやる気はねぇんだよ。
深くため息を吐くと、心配そうに俺を見ていた悟空と目が合った。
「三蔵、大丈夫? 仕事忙しくて疲れてんじゃね?」
「別に、平気だ」
こんなガキに心配されるのはまっぴらごめんなので、口元だけで笑って見せる。
「そっか。ならいいけど」
ニコッと馬鹿ヅラで悟空が笑い返す。
「でもさ、なんかあったら俺に言えよな。俺だって三蔵の役に立ちたいんだから!」
「ああ」
その気持ちは素直に嬉しいが、表に出すのは癪なので表情は動かさない。
「まぁ、大したことはねぇよ」
「ふぅん?」
「ちょっと嫌なヤツがいるだけだ」
「ぇー、それって結構おっきいと思うけどなー」
「仕事だから仕方ねぇ」
「えー、でもなー」
仕方ないと納得しきれない悟空は顔を顰めて唸っている。
こういう素直なトコは結構いいと思う。
「なんか弱味でも握れりゃいいんだがな」
何とはなしに呟いた。
そうすれば、ヤツは俺のコマになる。
俺のその言葉を聞いて、悟空は少し考えた後、名案とばかりに笑って言った。
「天ちゃんに聞けばいいじゃん!」
「は?」
「弱味、握っちゃえば三蔵楽になるんだろ? だったら弱味握っちゃえばいいじゃん」
コイツは馬鹿か…。
盛大なため息を吐いた。
「そう簡単に握れたら苦労はねぇよ」
「大丈夫だって! だって天ちゃん、なんでも知ってるんだから!」
素直に信じ切っている瞳に、一気に苛立ちが増した。
「じゃあ、今度ソイツに会ったら聞いておいてくれるか?」
「うん、いいよ!」
何でも知ってるヤツが居るわけが無いことをサルに教えてやりたい。
それ以上にそこまで信頼されているヤツに解らないと恥をかかせてやりたい。
これは嫉妬なのかもしれない。
「あ、じゃあさ、その弱味知りたいヤツの名前教えてよ」
「ああ、ちょっと待ってろ」
悟空が名前を覚えられるわけがないので、名刺を渡そうとして少し躊躇する。名刺には社名、部署名、課名、肩書、所在地、電話番号と、色んな情報が印字されている。そんなに馬鹿正直に情報を提供する必要もないだろう。どうせ単なる嫌がらせだ。
俺はメモ帳を一枚破って、そいつの名前を書いた。

次の日家に帰ると、上機嫌なサルが俺に飛びついてきやがった。少しよろけたじゃねぇか。
「何しやがる! この馬鹿ザル!」
「あ、ゴメン! ちょっと嬉しかったから!」
「は? 嬉しい? 何がだ?」
「今日ね、天ちゃんに会えたから、弱味聞いてきたよ!」
「ほぉ…」
少し興味が湧いた。
俺が悟空に伝えたのは名前だけだ。
そんなんで弱味なんて、解るわけもなければ、状況だって解らんだろうし、そもそも俺のことだってほとんど知らないだろう。
にも関わらず悟空が落胆していない。
つまり何らかの回答はあったんだろう。解らない以外の回答が。
いい度胸してやがる。
「で、どんな弱味なんだ?」
ありきたりじゃ無い答えだと楽しいんだがな。
挑発の笑みが浮かぶのを止められない。止める必要もない。どうせ悟空はそんなこと気にしやしねぇ。
「えっとね」
悟空はちょっと考えるかのように、視線を巡らせた。
「ヴィーナスってお店のリカちゃん」
「……は?」
思わず間の抜けた声を出してしまった。
そりゃそうだ。予想もしない言葉が飛び出してきたんだから。
そんな俺に不思議そうな顔をしながら、悟空は言った。
「だから、弱味」
「弱味……」
「うん、天ちゃんがそう言ってた!」

翌日、私的に探偵部門をやってるヤツで口が堅そうなヤツに脅しをかけて、その件について調べさせた。
その報告が上がってきたのが3日後。
ヴィーナスという店は存在していた、キャバクラだった。
そしてリカという人物も確かに存在していた。
それだけでも驚きだが、なんとソイツは俺の教育係の交際相手だった。
しかもただの交際相手じゃない。
俺の教育係は妻帯者だ。
つまり、不倫相手だ。
確かに、これ以上無い弱味だ。
『何でも知ってるんだから!』
背筋を悪寒が走り抜けた。

「おい悟空」
夕食も終えて、部屋でくつろいでいた悟空に呼びかける。
が、聞きたいことが上手く言葉にならない。
「どした、三蔵?」
素直な瞳。多分コイツは解ってない。
状況というか、天ちゃんなる人物がどれほど異質なものなのかが、解っていない。
そりゃそうだ。コイツはまだ8歳だ。
そんな子供に俺が感じた恐怖は解らないだろう。
多分俺も上手く伝えられない。
「このあいだの、弱味教えてくれたヤツのことを教えろ」
「ん? いいけど? あ、もしかして間違ってた?」
「いや…、ビンゴだった。礼を言っておいてくれ」
「うん、わかった!」
「で、ソイツの名前は何ていうんだ?」
「天ちゃん!」
がっくりと肩を落とす…。そうだ、コイツはガキでサルだった…。
「天ちゃんの本名を聞いてんだよ!」
「ああ!」
そして考え込むこと数分。
「確か…、てんぽー…?」
天蓬…?
「学生か? それとも社会人か?」
「んと…、学校行ってるよ。公園が通り道なんだって。いつも学生服着てる」
学生服?
このあたりで学生服の学校なんて2校だけだ。西高と俺の行っている中学。俺の学校にそんな名前のヤツは居なかった気がする。
「外見はどんななんだ?」
「すっげぇキレイで、背が高くて、眼鏡かけてて、髪の毛肩まである」
「男なんだろ?」
「うん、男だよ」
男で髪を肩まで伸ばしているヤツが思い浮かばない。そんなヤツがいたら相当目立つはずだ。だから多分ソイツはうちの学校の生徒じゃない。
「そうか、わかった。サンキュ、悟空」
「どういたしまして!」

次の日、またもや私的に探偵部門を使った。
今回は前回より秘密度合が低いので結果が来るのが早かった。
翌日には報告書が上がってきた。
件の人物、名前は悟空が言った通り天蓬というらしい。
西高の2年。成績優秀、文武両道、穏やかな人あたりに飄々とした態度。
にもかかわらず親しい友人は居ない。
両親は死別。現在一人暮らし。バイトはしていない。部活もしていない。趣味は読書。
特徴として、占いがあげられていた。
好きだとかそういうものではなく、やる側だそうだ。
占い師みたいなものらしい。それで生計を立てているらしい。
生計を立てられる程の稼ぎがあるんだろうか。
占いなんぞ信じたことがない自分には良く解らないが、多分良く当たるのだろうという事だけは予想がついた。
本当に何でも知っているのかもしれない。
試してみる価値はありそうだ。

悟空には家庭教師がいる。
大学生で、教育学部に通っている男だ。
俺はあまり会ったことが無いが、それでも余り好きになれなかった。
それは悟空も同様らしく、あからさまに毛嫌いしていた。
別に厳しいとか虐められるとかそういう事じゃないが、好きになれないらしい。
悟空は本能で感じるタイプだ。そしてそれは割と当たっている。
学校から直接会社に行かず、一度家に寄って、出かけようとしていた悟空を捕まえた。
「あれ、三蔵どうしたの?」
「お前に頼みがある」
「へ?」
「天蓬にお前の家庭教師の本性を聞いてこい」
「本性…?」
悟空はきょとんとしつつも、うん、わかったと言って外へ出かけて行った。

仕事から帰り、夕食を食べていると、悟空が今日の報告をしはじめた。
コイツはいつも今日あったこと、今日感じた事、思ったこと、それを楽しそうに報告する。
それを聞いてやるのもすでに日課だ。
「あ、そういえば天ちゃんに聞いた!」
「ほぅ」
なかなか名前が出てこなかったから、今日は会えなかったのかと思っていたところだった。
「で、なんつってた?」
「えっとねぇ…」
眉間にしわを寄せて考えている。どうやら覚えにくい内容だったらしい。
「何とかビル……ぅー」
ビル名が思い出せないようだ。
「何とかじゃわかんねぇ」
「えーと、えーと…、あ、そうだ! この間俺が三蔵と虹見たトコって言ってた!」
「あぁ、あそこか」
場所が解って、頷いてから気付く。
コイツ今ビル名、解ってなかったよな…?
「そこに明日11時30分だって!」
思い出せたことにすっきりしたような、全開の笑顔を浮かべた悟空を、俺は思わず凝視していた。
「? どした?」
「お前、この間虹見てきたこと、天蓬に言ったか?」
「うん。三蔵と虹見てきて、すっげーキレイだったー!って言った」
「ビルの名前覚えてるか?」
「覚えてない!」
「場所は覚えてんのか?」
「最上階だった!」
「そうじゃなくて、道とか」
悟空はキョトンとしてから、笑った。
「覚えてるわけねぇじゃん! だいたい車だったしさ、俺寝ちゃってたし!」
そうだ。悟空の言う通りだ。
行きも帰りも家の車で運転手付きで行った。そして悟空は道中寝ていた。
じゃあ何で。
何でその場所を指定できるんだ?
何かあるその場所を予測するだけじゃなく、過去に起こったことまでわかるのか…?
占いでそんなこと可能なのか?
ってか、そもそも占いなんていうのは…。
「おい、悟空。天蓬は何で占っているんだ?」
「は? 何って?」
「道具だよ、占い道具。タロットとか水晶とか…」
「天ちゃんは何も使わないよ?」
何も使わない…?
それは本当に占いなのか?
「じゃあ、お前が聞いた後、天蓬はどうやって答えるんだ?」
「え…、えっと。何て言えばいいんだろ」
悟空が考え込む。上手く言葉が浮かばないらしい。
「えっと、えっと…、うーんと、居なくなる…?」
「は? どこかに居なくなるのか?」
「え? あ、そうじゃなくて。居るんだけど居ないっていうか」
居るけど居ない? どういう意味だ?
「座ったままで、目を閉じて、そのままなんだけど、居ないっていうか」
言葉が見つからないらしく、困ったように言う悟空を見て、何となく言いたいことを察する。
が、それは阿呆な仮定だ。
だが他に考え付かない。
「悟空、お前の通学路って変わってねぇよな?」
「は? え、あぁ、変わってねぇけど?」
「じゃあ、公園の先のゴミ捨て場にまだ何か見えるか?」
「うん。車に轢かれた血まみれのオジサン」
「……」
悟空には霊感がある。
だから今言っているのは生の人間のことじゃない。俺も霊感があるから解っている。
ただ、悟空の霊感がまだあるのか確認したくて聞いただけだ。
「ああ、そっか」
俺が言いたいことを察したらしく、悟空は一人で納得した。
「中身が居ないんだ!」
中身が居ない。
だから居るのに居ないんだ。
身体はそこにあるが、中身は、魂はどこかに行って居ない。
悟空が言いたいことは多分それだ。
幽体離脱みたいなもんなんだろうか? それを応用できるのか?
何か違う気がする。
幽体離脱だとしたら、少なくとも現在という時間軸のことしかわからないのではないだろうか。
それでは説明がつかない。
それに。
「でもさぁ」
言葉に思考の檻から出てみれば、空を見つめたまま真面目な顔をして考えている悟空が居た。
「でもさ、抜けてったりとかはしてないんだよ」
まさに俺が今疑問に思っていたところだった。
幽体離脱なら、身体から抜けていくところとか戻るところとか、中身と身体をつなぐパイプのようなものが見えて然るべきだ。
それが無いというのは、……どういうことだ?
「たださ、居なくなるっていうか、…消えちゃうっていうか」
そこで悟空は一度言葉を切って、考えて、もう一度口を開いた。
「深く、潜る…?」

11時23分。
ビルの最上階、展望フロア。
掲示板を熱心に見ているフリをして、辺りを伺う。
平日だから人はまばらだ。学校はサボった。行っていられる状況じゃない。心情的に。
悟空は学校へ行かせたから、一人だ。
と、一人の会社員風の男がベンチに座った。
ちょうどこの間悟空と虹を見た窓のところだ。
このビルだということは解ったが、フロアのどこかまでは解らなかったため、一応ぐるりと辺りを見回す。
ここの展望フロアは360度だ。中央にエレベータ、売店、喫茶店がある。だから例え天蓬が言ったとおりの時間に居たとしても、アイツが予測した何かを見逃す可能性はある。だから、移動できる態勢を取りつつ、壁の時計を見た。あと2分。
あの日虹が見えた場所を視界に入れているのは、悟空が、俺と虹を見たトコだと言ったからだ。
それがビルの展望フロアの事を示すのか、ピンポイントに虹を見たその場所を示すのかは、直に聞いていない俺にはわからない。だからだ。
それにここからはエレベータのエントランス出入り口が見える。
と、一人の男がエントランスから歩いてきた。
カジュアルな服装に、キャップを被っている。背格好に見覚えがある。
向こうから見えないように、隣の掲示板を見るフリをして少し移動する。
と、声が聞こえた。
「コレ」
聞き覚えのある声。それは確かに悟空の家庭教師のものだった。
ソイツが差し出した手には半分に折り曲げられた茶封筒。
受け取ろうと座っていた会社員が出した手には数枚の一万円札。
「あのガキ、馬鹿で手間かかるわ」
「内容次第では報酬を減らすぞ?」
「それは大丈夫。最近、ガキから情報引き出すの諦めたから」
「ほう?」
「家庭教師ってだけで、家の中うろつき放題。楽な仕事だぜ」
茶封筒の中身は、会社の機密か何かだろう。
とすれば、会社員の男はどこかの企業の社員だろう。
脈が速くなって、呼吸が荒くなる。
別にショックを受けたわけでも、取引現場を目撃して動揺しているわけでもない。
ただ、驚いているだけだ。
俺は確かに家庭教師の本性をと言ったが、ここまでのことは予想していなかった。
時間だとか、場所だとか、何が起こるかだとか、何があっただとか、それをこんなにも正確に、確実に情報として手に入れられて。
もちろんそれだけじゃないはずだ。
今回の事は、俺は2件とも悟空に頼んだ。
つまり、間に一人挟んだ伝言ゲームだ。
伝言ゲームなんて、情報が正確に伝わっている確証は低い。
特に、間が子供ならば言葉すら正確かも危うい。ニュアンスなんざ絶対無理だ。
その少ない情報から、確実に相手の望む事を読み取り、正確に情報を手に入れ、かつ相手に届く形で答えを返す。
それがどんなに難しい事か…。
そしてそれをやってのけることができる人間がいることに、俺は心底驚いた。

一週間、調べた。
ネットや本で、その手の事象や現象を調べまくった。
ただでさえ情報過多なこのご時世だ、最初はどこから手を付けていいかわからないくらいだったが、それらしいキーワードさえ見つかれば後は早かった。
相変わらず確証は無い。
科学的根拠も無い。
だが、他には見つからない以上、それだと予測するしかない。
俺には見たことも聞いたことも無い、それ。
唯一根拠だと思われるのは悟空のあのセリフだけ。
『深く、潜る』
それを信じるのは、俺らしく無いと言われそうだが、自分が絶対の存在であるわけでもなし、そういうこともあるのかもしれない程度には信じてもいいんじゃないだろうか。
大体この世に絶対なんてモンは存在しねぇんだ。
だったら。
俺が信じることを信じてみてもいいんじゃないか。
公園の入り口で、柱にもたれかかり待つ。
人影が見えた。
猫背気味の、背の高い男。
さぁ答え合わせの時間だ。
誤魔化すことは、許さねぇ。
俺の仮定が当たりだとすれば、それはとても…。
ソイツはゆっくりと歩いて来た。
そして俺を見て、足を止めた。
「貴方は…?」
「三蔵だ」
悟空から名前は聞いていたのだろう。天蓬は、ああ、という顔をした。
確かに綺麗な顔をしているが、その瞳の光は、薄膜で隠されてはいるけれど、とても鋭い。
お前の力はさながら刃だ。
お前の絶対でこの世界を裁け。
その為の舞台づくりは俺がしてやる。
さぁ、ビジネスの話をしよう。


これが俺と天蓬の出会いだった。





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