≪報われない小悪魔の誘惑シリーズ≫

相談


今日もいつものように遊びに来た悟浄は、けれど難しい顔をして黙ったままもう小一時間ソファーに体育座りをしている。相変わらずの超ミニの制服のスカートから覗くパンツを眺めながらコーヒーを淹れて、悟浄の分はテーブルに置いて、俺はそれを飲みながら悟浄の隣に腰かけていた。同じく小一時間程。
いい加減なんもしねぇでただボーッと座ってんのもツライ。どーすっかな。こんな顔してる理由を聞くか放置するか。
……放置でいっか。
飲んでいた冷めたコーヒーを飲み干して立ち上がりキッチンへ向かおうとしたら、なんか後ろに引っ張られた。足を止めて振り向くと、悟浄が泣きそうな顔をしてシャツを掴んでいた。
「あのさ、相談したいことあんだけど……」
「相談?」
「うん……。ちょっと他のヤツには出来なくてさ」
それで俺を頼ってくれたのか。悟浄がこんな顔をする程の悩み事の相談相手に俺を選んでくれたのは、素直に嬉しい。歳も近くねぇし、親友どころか友達ですら無いただの近所の兄ちゃんなのに。
空のカップをテーブルに置いて、相談をじっくり聞こうとソファーに戻ろうとすると、悟浄の手がそれを止めた。なんで。
「そこ座って」
「へ?」
「座って」
座れって……ここ床なんだけど。いや、ラグは敷いてあるけどよ。つかここ俺の家なんだが。
首を傾げながら取り敢えず大人しく従ってみる。床に座れば当然ソファーに座る悟浄よりは目線が低くなる。もしかして俺がなんかしちまったのか? お説教タイム? 相変わらず難しい、加えて泣きそうな顔をした悟浄はやっぱり体育座りをしたまま中々言い出せないようで、うろうろと視線を泳がせた。てぇか、パンツ目の前なんだけど……。
「あのさ………………ン…………ド」
「ゴメン聞こえない」
やっと口を開いた悟浄だったが、声が小さすぎて聞こえない。もう一度と催促する俺に悟浄は泣きそうになってから、意を決して口を開いた。
「俺、ヘンみたい……なんだケド……」
「は?」
言葉が少なすぎて意味が解らない。
「変って、ドコが? もしかしてまた髪の色を何か言われたのか?」
「……言われてない。てか、何も言われてはねぇんだけどさ」
それは良かった。いや、良くない。
「じゃ、何でそんなこと思ったワケ?」
視線をウロウロとさまよわせた悟浄は、そろりと上目遣いで俺を見た。やっべ、かわいいなオイ。
「話とか、本とかで、書いてあって……」
「何が?」
また口をつぐんでしまった悟浄にだんだん焦れてくる。はっきり言えって。
と、悟浄が俺をキッと睨んだ。涙目で。
「俺ヘンじゃないか、見てくんね?」
言うが早いか、返事も聞かずに悟浄の手が下に降りる。何を見ろと言うのか、思わず視線を降ろすと悟浄はただでさえ捲れていたスカートを完全に捲りあげた。そしてパンツに指を……。
「待て! ちょっと待て! 見ろってソコ!?」
「うん……。こんなこと頼めんの、捲簾しかいなくて……」
その言葉は嬉しい。素直に嬉しい。が、その前が嬉しくない。てか、コイツ何考えてンだ!?
「俺は男だぞ!?」
「うん。だから頼んでる」
「イヤ、そういうのは同性に聞けよ!? 女の身体のことなんてわかんねーって」
「……でも、俺多分ヘンだし、それにいくら同性でもこんなとこじっくり見せ合うとかねーから」
それもそうだ。考えて発言しろよ俺。
「捲簾なら、女のココ見たことあるだろうし。だから、ヘンかどうかも解るかなって」
あー、そういうことなら女友達よりは解るかもしんねーけど。
「でもソコはそうそう他人に見せるもんじゃねぇから。つか、それなら病院とか」
「病院は…………怖いし、恥ずかしい……」
そっか。ソコ診てもらうとしたら婦人科か。そりゃ恥ずかしいわな。まだコイツ高校生だもんな。だからといって何で俺。
「相談できる人、捲簾にしか浮かばなくて……」
泣きそうな顔で言われると、困る。悩みを相談されるのは嬉しいだけに困る。ンなトコ見せてもいいと思うくらい信頼されてるって事実がスッゲェ嬉しくて、困る。でもこれOKしたらアウトだろ……。
一向に頷かない俺を最初うかがうようにしてた悟浄は、やがて痺れを切らしたのかいきなりパンツにかけていた手を下ろした。
「ちょっ!?」
止める間もなく一気に足から抜かれたパンツがソファーの後ろに放られる。そしてその膝が開かれ……。
M字開脚された足の間。つるりとしたソコのピンク色の割れ目が目の前に晒される。思わず凝視した俺の視線の先で悟浄の指が割れ目の横に触れた。そのせいで僅かに開いた入り口から濃いピンクの濡れた粘膜が覗く。
「ちょ……おま……!」
動揺のあまり言葉がでない。そんな俺を無視して悟浄は不安げな声を出した。
「ヘンじゃね?」
おぉ、悩み相談だった。すっ飛んでた。
少し冷静になって悟浄のソコを観察。つっても……。
「別に変じゃなくね?」
むしろキレイで感心してしまうくらいなんだが。色素沈着もしてないし、びらびらが大きいワケでもなさそうだ。さすがに思い切り開いてるワケじゃねぇから良くわかんねぇけど。つか、コイツ処女なんだろうか。明らかに使い込んではいなそうだ。うーん、処女膜までは見えねぇな。
と、マジマジ眺めていたら悟浄がまだ不安げな声で呟いた。
「毛……」
毛? あぁ、確かにねぇな。はみ出すのがイヤで形整えてたり全部剃ってるヤツも結構いるから気になんなかったわ。つか、キレイに剃ってんな。ツルツルだ。
指でソコの皮膚を撫でてみる。ん? これ剃ってンじゃなくて脱毛か? 指に毛のチクチクしたのが触れない。
「ン……」
「あ、ワリ」
悟浄の吐息に声が乗って、慌てて指を離した。観察に夢中になるあまり、触ってたわ。ナカとか周りの敏感な粘膜じゃねぇが、際どい位置の皮膚を。
「つか、ヘンじゃねぇって。剃ったり脱毛したりする女も多いぜ?」
そう言って顔を上げれば、悟浄は困ったような顔をしていた。なんで困ってンだ。
「剃ってない……」
「あぁ、脱毛してんのか」
だからココ見せるのにそこまで抵抗がねぇのか。脱毛するときも見せるもんな。視線を落としてすべすべのソコの皮膚を指で撫でる。
「違……」
と、上から掠れた声が降ってきた。違? 違う? って何がだ? 脱毛してないってことか? え、まさか脱毛も剃毛もしてないってこと? って、もしかして……。
「パイパン?」
思わず顔を上げて悟浄を見ると、なぜか悟浄はキョトンとした。あれ?
「パイパン……ってナニ?」
あぁ、言葉が通じて無かったか。
「ココに毛が生えてないコト。お前ココに毛生えねぇの?」
「………………うん」
なるほどねー。大人になったら大多数は生えてくるからなぁ。それで自分がヘンなんじゃないかって思ったのか。なるほどなぁ。だからココの皮膚荒れてもいないんだな。おー、スッゲェすべすべだわ。
「やっぱヘンだよな……」
泣きそうな声で言われて思わず観察しながら撫でていたコトに気付き、指を離して口を開く。
「ヘンじゃねーって。そりゃ多くはねぇけどたまにいるんだって、ココの毛が生えてないヤツも」
「……ホント?」
「ホント」
「俺ヘンじゃない?」
「ヘンじゃねぇよ。安心しろ」
「そっかぁ……」
へにゃっと悟浄が笑った。子供が安心しきったときのあの顔で。この笑顔を見れるなら相談にのったかいがあったわ。ちょっと下半身がツライけどな。
剥き出しの膝を撫でてゆっくり立ち上がりソファーの後ろのパンツを拾って悟浄に渡すと、悟浄が慌てて顔を上げた。
「あ、サンキュ」
パンツを穿いている悟浄を見てても仕方ないので自分の足下を見る。悟浄何見てたんだろ。何か落ちてたか? なんもねぇよな。
「そーいや、コーヒーもう冷めちまってるから淹れ直すか」
「いいよ、もったいねぇし」
「捨てやしねぇよ。それは俺が飲むからちょっと待ってろ」
「はぁい」
スカートを直した悟浄は、早速ケータイを弄りはじめた。疑問が解消されてスッキリしたんだろう。変わり身の早いヤツだ。
苦笑しながらキッチンに向かう俺の背に、悟浄の謎な呟きが届いた。

「やっぱ捲簾手強いな」


……なんの話?





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