すごく、すごく気を付けていたんだけど……風邪をひいてしまった。 朝起きたときにやばいなーって思って。 で、薬飲んで。 昼には治ったかなって思うくらい調子よかったのに、今はかなりやばめ。 「、疲れましたか?」 バックミラーごしに八戒が聞く。 は慌てて顔を上げるとなんでもないような顔で笑った。 「大丈夫だよ」 「そうですか?」 心配そうな八戒にギクリとしながらも、笑顔を保つ。 と、横から悟空が三蔵のシートに手をかけた。 「なあ、あとどのくらいで街着くの?」 「そうですねぇ……。30分くらいですかね」 ハンドルを軽くきりながらのほほんと現役保父さんが答えた。 ほほえましいなぁ。 の顔が知らずほころぶ。 とん。 何かが肩に触れた感触に、がそっちを見ると、悟浄がの肩に頭を乗せて目を閉じている。 「なにしてるの?」 「ナニって、寝るんだよ」 「銜え煙草で?」 「そ。なーんか悪い?」 「あぶないよ」 そう言ってが煙草を取る。 一口だけ吸うと、悟浄の腕に手を取られた。 「?」 「ダメ」 ひょいと煙草を取り上げられる。 「女の子が吸うもんじゃねえの」 一瞬何を言われたかわからなくてきょとんとしてしまう。 が、すぐには憤慨した。 「男女差別ッ!」 怒鳴るをかまわず煙草を外に投げ捨てると、悟浄はの頭を撫でた。 「ま、もう少しの辛抱だぜ」 「……な、なにがよ」 「さあな」 の熱に気付いているのかいないのか。 多分気が付いてる。 が唇をとがらせながら前を見ると、遠くに街が見えてきたところだった。 「今日の部屋割りですけど、僕とが同じ部屋でもかまいませんか?」 八戒の言葉に、の目が点になる。 「かまわん」 「いーぜ」 「なんで〜!?」 三者三様の声を受けて(一部無視して)、八戒はにこりと笑ってを見る。 「はかまいませんか?」 どうしてそういうことになったんだろう…? 頭の中ではてなマークが回っている。 一人部屋がなかったのか、それとも……? ぼんやりした頭で考えていたの顔を覗き込んで、八戒がもう一度問う。 今度は控えめな、それでいて心配そうな顔も忘れずに付けて。 「嫌ですか…?」 「そんなことない!」 わざとだと解っていても引っかかってしまう……。 恐るべし、八戒。 いま泣いたカラスがなんとやらで、既にいつもの笑顔に戻っているし…。 部屋に行くとすぐに八戒は明日のルートの打ち合わせだと、三蔵の部屋に行ってしまった。 は、額に手を当てる。 そんなに熱くはないと思う。 ぼんやりした頭でそう考える。 でも一度座ると、もうそこから動きたくない。 ベッドに横になると、身体が溶けてしまったように動きたくなくなる。 次第に暖まっていく布団がなんだか気持ち悪い。 部屋が肌寒く感じる。 目を閉じただけのつもりが、気が付いたら眠っていたようだった。 気が付くと、を八戒が心配そうに見つめていた。 「……?」 声を出そうとしたけど、喉がからからで上手くできない。 「気が付きました?」 「……私」 「熱があります。疲れたんでしょう。ゆっくり休んでください」 手で熱を計ろうと上げかけたけれど、布団がしっかりと肩まで掛かっていてあきらめた。 既に夜遅いようで、日は暮れてしまったようだ。 「八戒、気が付いてた?」 「ええ。はっきり気付いたのは宿に着いてからですけど。悟浄に言われました。無理しちゃ駄目ですよ。これからは具合の悪いときは出発の前に言ってくださいね」 やんわりとしかられる。 「でも、迷惑かけたくなかったの」 言い訳。 すると八戒はふわりと笑って、の頭を優しく撫でた。 「迷惑だなんて思ってませんよ」 思わぬ優しい仕草に、心がじんわり温かくなる。 「さ、眠ってください」 促されてが目を閉じる。 そのままうとうとまどろみに入りかけたとき、八戒の気配が遠くなる気がして目を開けた。 が目を開くのと、八戒が立ち上がるのは同時だった。 おいていかれる。 ぼんやりと心に浮かんだ言葉。 おいてかないで。 思うよりも先に動いた身体。 「?」 服の裾を引っ張られて八戒が振り向く。 困ったような笑み。 なにかが、怖くて。 「行っちゃやだ」 縋るように掴むその手に力がこもる。 「おいてかないで」 の目から涙がこぼれる。 きっと熱で涙腺が馬鹿になってるに違いない。 八戒が、仕方なさそうにベッドに腰掛けた。 「おいていきませんよ」 ゆっくりと頭を撫でてくれる。 暖かいその手。 私大人なのに、大人のはずなのに。 なんでこんなに嬉しいんだろう。 なんでこんなにあったかいんだろう。 近くなった八戒にすり寄って、彼の洋服の裾をつまんだまま。 ゆっくりと八戒の大きな手が、の頭を撫でる。 「八戒」 「なんですか?」 呼べば返ってくる優しい声。 「ありがと」 あったかい気持ちを言葉にしてみた。 すると、八戒は苦笑する。 そしてゆっくりとに覆い被さるように、キスをした。 「かわいすぎますよ、」 ついばむようなキス。 「我慢できなくなっちゃうじゃないですか」 ペロッと唇を舐められると、ぞくっと快感が走る。 「ねぇ、」 間近でその翡翠に見つめられる。 「お願いがあるんです」 その瞳に情欲の熱を感じて、は目を閉じた。 熱い身体に熱を加えられ、ただでさえぼんやりとしている頭は既に思考停止状態。 の足を八戒が割っても、抵抗はかけらも見せず。 縋るように八戒の上着を掴んでいた。 「ココ、すごく濡れてますよ」 筋を指でなぞるようにすれば、それだけのコトなのにクチュと淫猥な音が響く。 恥ずかしくてきつく目を閉じているに、優しく八戒が囁く。 「、感じやすいんですね」 笑う八戒の顔を、薄目でが見ると、彼は視線を感じてもう一度キスをくれる。 舌が絡む。 悟浄とも三蔵とも違うキス。 快感とは遠い、儀式のようなキス。 割れ目を指がしつこくたどる。 けして中に入ってこようとはせず、無理に押し開くことすらしない。 「ホラ、開いてきましたよ」 濡れた音が、の耳を刺激する。 普段は閉じている花びらは、快感を感じ八戒の指を浅ましく迎え入れようと開き始めた。 開いた入り口を、ゆっくりなぞる指。 だんだん開いていく花びらは、次を求めてそれを飲み込もうとし始める。 「ひくひくしてますよ。ここ」 面白がるように入り口をつつく。 「吸い付くみたいですね。それに、すごく濡れている」 クチュっとワザと音を立てて、その液をすくい取る。 「ホラ、溢れるみたいに。大洪水ですよ」 わざとに見せるよう指をかざす。 「やぁ…」 満足にかぶりを振ることすらできず、は八戒の上着の裾をきつく握りしめる。 そうすると自然に八戒の動きが制限されてくる。 「邪魔ですね、これ」 ばさっと、上着を脱ぐ。 と、均整の取れた身体、薄くついた筋肉、その腹に。 大きな傷。 思わずは手を伸ばしていた。 引きつるような痕。 八戒は、気付いたけれど止めなかった。 だから触った。 指に触れる何とも言えないその感触。 その存在は知っていたけれど、見たのも、ましてや触れるのもは初めてだった。 何度か往復するようにその痕をなぞる。 と、八戒が少しだけ悲しそうな笑みを浮かべた。 「これは僕の罪なんです」 綺麗な翡翠が、を見つめる。 「僕は、実の姉を愛して、そして殺した」 指の先に触れる肌の感触。 「は」 こんな時には不似合いなほど綺麗な笑顔。 「は僕を軽蔑しますか?」 何処までも澄んだ翡翠は、見つめていると飲み込まれそうで怖い。 でもそれは。 「きっと何処までも行けるってことだよね」 が僅かにわらった。 呟きは小さすぎて八戒の耳には届かなかった。 「触ってもいい?」 の問いに、少しの間八戒は悩んだようだったけれど、やがて小さく頷いた。 今痛みがないのが不思議なほどの、痕。 大きな、そして深いだろうその痕。 「私の」 かすれて聞き取りにくい声だったけれど、八戒には解ったようで彼は頷く。 「私の元いた世界では、子供を上手く産めないときは、お腹を開いて取り出すの」 の言った言葉の内容に、少し八戒は面食らったようだったがそれでも続きを促した。 は重い体を起こして、彼に触れる。 「だから、きっと八戒はここから産まれたんだよ」 はそっと、その傷痕にキスをした。 八戒からは沈黙しか返ってこなかったので、何を思ったかは解らない。 けれど、力を使い果たしたはそのまま八戒の腰に抱きついた。 八戒の腿に頭を乗せると、そのまま眠りに引き込まれそうだった。 あおられた熱さえなければ。 「」 八戒の言葉に目だけそちらを向けると、彼の顔を見るよりも早く、元いた位置に身体を倒された。 「続き、してもいいですか?」 言葉は疑問系だったけれど、止める気配は微塵もない。 八戒は履いていた物を脱ぎ捨てると、の足を肩に担いだ。 「スミマセン」 言葉と同時に、八戒のそれがの秘所に押し当てられる。 いくら濡れているとはいえ、慣らしてもいない部分にいきなり押しあてられての身体に力が入る。 それを感じた八戒が苦笑した。 「笑うなぁ…」 やっとの事で抗議すれば、再び謝る声が返ってくる。 「ゆっくり入れますから。痛くはしません」 キスと優しい声。 熱い身体を駆け抜けた甘い快感に、のそこが再びとろける。 「」 キスの合間に囁かれ、のからだがぴくんと震える。 慣らすように入ってくる八戒のそれに、の頭が真っ白になっていく。 「のココ、熱いですね」 からかうような言葉。 「熱が、あるせいだもん…」 弱々しい抗議。 「無理させてますね」 どこかシュンと八戒の声に、驚いてが目を開く。 と、間近に八戒の綺麗な翡翠が見えた。 「本当は、を大事に大切にしたいんです」 真顔でそう囁かれる。 「が好きなんです」 内壁を擦られての頭が溶けていく。 熱のせいなのか、快感のせいなのか解らないけれど頭がぼんやりとして、何も考えられない。 「が好きなのに」 ナカを擦られて、の呼吸が乱れる。 「自分を止められない」 奪うようなキス。 ひくひくと、浅ましく男のそれを欲しがるナカを、犯す激しさで出入りする肉棒。 絡みつく内壁は、の意志とは関係なく八戒自身を逃すまいとする。 呼吸すら奪われて、快楽まで支配されて、飛びそうな意識をつなぎ止める翡翠。 その瞳に吸い込まれると感じた瞬間、ひときわきつくそこを擦られては達した。 収縮するその器官が八戒自身を締め付ける。 「」 囁きと同時に、八戒ものナカにその欲望を放ったのだった。 「気持ち悪い……」 の心からの呟きに、心配そうに八戒が見つめる。 「吐きそうですか?」 「違う。なんかどろどろして気持ち悪い」 が自分の身体の有様のことだと指し示すと、八戒は何故か少し笑った。 「責任もって綺麗にさせていただきます」 そういって、全裸のをお姫様抱っこする。 「こ、これって結構恥ずかしいかも」 が戸惑うと、八戒が笑った。 「元気になったみたいでなによりです」 「……それじゃまるで私が欲求不満で熱出したみたいじゃない」 「そんなことは思っていませんよ。適度な運動だったんじゃないですか?」 風呂の椅子にを座らせると、シャワーの温度を調節してまだぶつぶつ言っているにかけた。 「温度は大丈夫ですか?」 無言でこくりと頷く。 八戒はシャンプーを取り、の髪を洗い始める。 地肌を適度に刺激するその感触の気持ち良さにがうっとりしていると、八戒が何かのついでのように聞いた。 「怒ってますか?」 「何を?」 真面目になんのことか解らなくてが聞き返すと、八戒は少し笑ったみたいだった。 「何でもありません」 「え? 気になる〜!」 「身体、大丈夫ですか?」 強引に話を逸らされたのには気付いたが、はしぶしぶあきらめた。 「大丈夫そう。今夜はよく眠れそうだよ」 少しだけ反撃を試みてみた。 「それは、看病の甲斐がありましたね」 あっさりとかわされてしまう。 「かわいくない……」 「流しますよ」 ざあっとお湯がかけられる。 ひどく心地いいその感触にはゆっくり目を閉じた。 |