マッサージv


「今日はちゃんと部屋が取れました」
にっこり笑って八戒が言う。
いつも通り二人部屋二つに一人部屋1つ。
「一人部屋はでいいですよね」
「いいよ〜。オレ三蔵と一緒な」
悟空が嬉しそうに笑う。
それに笑顔を返してから、八戒がを見た。

にこりと笑い、鍵を手渡す。
「ありがと」
が笑顔を返して鍵を受け取る。
と、八戒が少し怪訝そうにの顔を覗き込んだ。
、疲れましたか?」
「え?」
「なんだか元気が無いみたいですけど」
「そ、そんなことないよ!」
慌てて手を振るの肩に、悟浄の手が乗った。
「ひょっとして一人部屋が寂しいのか〜?」
その茶化した様子に、がムッとして言い返す。
「違うよ! 別に一人だって平気だもん」
「なんだよ、寂しかったらオレと同室んなるか?」
「結構です!」
悟浄を殴るまねをすると、彼は肩をすくめて部屋へと逃げていく。
「もうっ」
余計なことしか言わないんだから。
悟浄の後ろ姿を見送ると、なんだかため息が出てしまった。
しまったと思うより先に八戒の声。
「一人部屋、寂しいですか?」
う…、また迷惑かける……。
そう思っては笑顔をキープしながら八戒を振り返る。
「そんなことないよ。一人部屋、好きだよ。のびのびできて嬉しいなぁ」
視線が痛い。
「もしかして僕ら、いつもに寂しい思いをさせていたんでしょうか?」
神妙そうに問われれば、嘘をつくのが忍びなくなってくる。
八戒の翡翠の瞳が、を見つめる。
その緊張に耐えられなくなって、は本当のことを言うことにした。
「少しは寂しいけど、平気。我が儘言わないって決めたから。だから、いいの。気にしないで」
にこりと笑えば、八戒は少しだけ眉を顰めた。
男と女である以上、同室にするのは八戒には抵抗があるらしい。
それはきっと三蔵も同意見で。
「あ、じゃ、オレと同室んなりたいな」
突然悟空がの横でそう言った。
「な、ダメ?」
「ダメというか…、ええとですねぇ」
悟空は成人男子に入るのだろうかと、八戒が必死で考えているのが手に取るように見える。
言った本人は目をきらきらさせて許可を待っている。
八戒がその目に負けて、それでも最後の反撃を試みるべく口を開いた。
「どうして同室になりたいんですか?」
「……なんで? なりたいからじゃダメ?」
八戒の負け。
「いいですか? 、三蔵」
思わず吹き出してこくこくとが頷くと、その手から三蔵が鍵を奪う。
三蔵にも異論はないらしい。
どうやら悟空はよほど信用があるらしい。

「あー、気持ち良かったぁ」
風呂から出てきた悟空の第一声。
「なんか食うもんない?」
ちなみにこれが第二声。
「クッキーとかでもいいならあるよ?」
先にお風呂に入ってしまったはベッドの上でごろごろしていた。
その姿勢のまま伸び上がって自分のリュックからクッキーを取り出していると、背後で悟空の楽しそうな声が響く。
「ダーイブ!」
「ぐっ」
上から悟空が勢いよく降ってくる。
否、のねているベッドに飛び込んできたのだ。
もちろんそこに寝ていたは……。
「っ、なにすんのよ! 痛いでしょ!!」
「あ、うまそうなクッキー」
「聞いてるの!?」
「いただきまーす」
「ちょっ」
「あ、うまい」
の手がふるふると震えた。
「人の話を聞けー!!」
殴ろうと振りかぶった手を器用によけると同じベッドの上で、おいしそうにクッキーを食べている。
喧嘩じゃ勝てない。
瞬時にそう計算する。
の目がきらりと光った。
射程内だ。
「これでも……くらえっ!」
勢いよく悟空の上に馬乗りになると、その脇腹にねらいを定める。
そして一気にくすぐる!
「っっ!」
悟空が目を見開いた。
「さあ、覚悟しなさい!」
「うわっ、タンマ! タンマ!」
「しるかっ!」
「や、やめっ! 〜〜〜っ! あはっ、あはははは!」
「思い知れ〜!」
「あははは、や、やめ、ははっ、こ・の」
調子に乗ってくすぐっていたの下で、悟空が手のひらを握り込んだ。
その瞬間、勢いよく悟空の身体が跳ね起きた。
「きゃっ!」
馬乗りになっていたがベッドに転がる。
と、その上に馬乗りになる悟空。
汗を拭いもせずニヤリと笑う。
「形成逆転だな」
わきわきと指を動かす悟空に、の顔が引きつる。
「覚悟っ」
「きゃーっ! やめてぇ!」
悟空の手が脇腹に降りてくる。
こしょこしょこしょ。
「ーーーっ!」
こしょこしょこしょ。
「ぶはっ、あははははっ、や、やめっ、あはははははははっ…ご、悟空っ、はははっははは」
「勝利ッ」
にんまりと笑って悟空は勝利を宣言するが、その手はしばらく止まらなかった。

「し、死ぬかと思った……」
がしみじみと呟くと、の上で悟空がしれっとしながら言った。
「食い物の恨みは恐ろしいって言うだろ」
そうか、そこの報復だったのか。
いろいろ違う気がしたが、気力のないには何も言えなかった。
ただでさえ疲れているのに、余計な体力を使った気がする。
「あたし、もう寝る。悟空、退いて」
「あ、ゴメン」
ひょいとの上から退いて、ベッドの端に腰掛け直す。
「ああーっ、肩こったぁ」
ようやく解放された身体で、力一杯のびをする
「マッサージ、してあげようか?」
「へ?」
「だから、マッサージ。オレうまいんだぜ」
誇らしげに言う悟空。
それが悟浄だったらまだ理解できる。八戒ならそうだろうと納得するところだったが、相手は力自慢の悟空だ。
「遠慮しとく」
あの馬鹿力で揉まれたらたまらないと思い、が丁重に辞退した。
けれど、悟空にはそれが不満だったようだ。
「してやるって。マジ上手いんだってば」
ぐいと、力任せに再びベッドに沈められる。
その力が怖いんだってばっ!
そう思いながらも、子供のお手伝いを無下にするのも気が引ける。
「じゃあ、お願いしようかな〜?」
引きつった笑顔でも、もちろん悟空は気付かない。
ものすごく嬉しそうな笑顔をかえされ、は覚悟を決めた。
「じゃ、うつぶせになって」
「う、うん」
うつぶせに寝ると、悟空がの上にまたがる。
その手が、背中を滑った。
もみもみもみ。
「あ」
もみもみもみ。
「ん」
もみもみもみ。
「あっ」
「イイ?」
「ん、イイ」
「だから言っただろ、オレ上手いって」
「ん。あっ、そこ」
「ここ?」
「そう、あん。気持ちイイ」
「こことか良くない?」
「ああっ、イイ。そこっ」
「イイだろ? 
「ん、最高」
マッサージの話である。
実際悟空のマッサージは以外と上手かった。
「あああ、そこいいなぁ」
「こりすぎだよ、
「そうかなぁ。自分じゃ普通のつもりだったんだけど」
「普通じゃないって。こことかすげぇかたいぜ」
「いたっ、いたたた」
「揉み返しくるかもなぁ」
「いいよ。きてもいいからもっとしてv」
「おっけ」
優しく身体を触る指がものすごく気持ちイイ。
悟空の方が体温が少しだけ高いのか、とても暖かく感じる。
セックスが好きなのは、人の体温が好きだから。
包まれるように感じる優しい体温。
解されていく身体。
血行が良くなってるからかな。
それとも悟空の体温かな。
わからないけどすごくあったかい。
久しぶりに感じる包まれるような温かさに、はいつしか眠りに落ちていたのだった。




おやすみ。
花吹雪 二次創作 最遊記