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「一票の格差を考える会」

最高裁裁判官国民審査投票開票結果

開票結果の検討とマスコミの反応

一票の格差を考える会

(7. 9. 2000) [ 会員 熊井 章 ](9. 9. 2000 改訂)


  • さて、開票結果はどうだったでしょうか。 私たちの会が問題だと指摘した合憲派の5名への X 印は、違憲派の2人への X 印よりも実数にして約50万票多くなりました。 別のおおまかな言い方をすると、総投票数を100としたとき、違憲派に9個の X がつき、 合憲派には10個の X がついたという勘定です。

  • 下の表をご覧下さい。 毎回の国民審査投票のたびに、 投票用紙の一番トップに名前を載せられた裁判官には、異常に多くの X がつきます。 「 分からぬまま、何も書かないのもいけないかと、ためらいながら最初の一人に X を付け、 それで止めてしまう 」人が多いのでしょうか。 今回もそうで、 名前を最初に載せられた亀山裁判官の数値は異常値として計算からは除いた方が良いでしょう。

  • 大出裁判官は、並立制を導入した94年の公職選挙法改正に、 内閣法制局長官として関与したという経歴上の理由で、この裁判には加わリませんでしたが、 別の参院選に関する同種の裁判で、大きな格差を合憲と判決しているので合憲派です。 町田裁判官は新任ですが、経歴から見て合憲派と推定していた所、9月6日の判決では、 案の定 「 合憲派 」でした。

  • 亀山、町田両裁判官は除いて合憲派の平均値を計算すると約549万票です。 大出裁判官は計算に加えても加えなくても、ほとんど影響ありません。 一方、違憲派の2名の平均値は 約500万票で、両派の差は49万票あまりとなります

    裁判官氏名罷免を可( X )
    亀山継夫5,932,395
    金谷利広5,548,385
    奥田昌道5,437,154
    山口 繁 5,538,825
    北川弘治5,431,507
    亀山を除く4名の平均5,488,968
    大出峻郎5,501,125
    4名に大出を加え平均5,491,399
    元原利文4,990,128
    梶谷 玄 5,005,056
    違憲派2名の平均4,997,592

  • この5名と2名の間の49万票 あまり( 総投票数の約 1% )の差は、 検定するまでもなく有意であると考えられます。 その一部は私たちの運動の成果であり、他は有権者の自発的な判断によるものでしょう。 会としては第一回目としては 1% の差でも作れれば良いかなと考えていたので、 まずまずの結果だったと考えます。 それにしても、毎回全員に X をつけると決めている方が、 全国に約500万人 ( 総投票数の約10% ) もいらっしゃるという現実を、改めて認識しました。

  • この方たちは、多かれ少なかれ問題意識を持っているのだと思いますが、 全員同じ10%の X では、どの裁判官も全く痛痒を感じないのです。 各裁判官間に大きなきな差がついて始めて事が問題化するのですから、この方たちにも、 次回は優先順位を一票の格差是か非かに絞って差をつけてくださいと提案したいと思います。

  • 選挙後の各新聞の格差批判の論調には 「 我が意を得たり 」 というものも多く見られました。 日経新聞 ( 30日と7月3日 )の安藤俊裕編集委員の二つの署名記事は、その代表的なものです。 産経新聞 ( 29日 )の社説、朝日新聞 ( 28日 ) 上でのオリックス宮内義彦会長のご意見も貴重な発言でした。 朝日 ( 29日 ) の投書欄では、米国に住む日本人大学院生が、 上記の50万票の批判票を評価し、 選挙期間中インターネット上で草の根的な批判運動が行われたと書いています。 彼は私どものホームページを見てくれたのでしょうか。

  • 今回の衆議院議員選挙の結果でもっとも目立った点は、自民党が 「 都市部 」 で大敗したのに、少ない票数で当選できる 「 地方 」 では強さを維持したということでしょう。 一票の格差の存在は自民党にとって極めて有利であることが、改めて実証されたわけです。 したがって、自民党を支持する人は一票の格差を今後も大きく保ち続けるため、 これら5名の合憲派裁判官を支持すべきですし、 民主党支持ほか反自民の人は、これら5名の裁判官にだけ X をつけるべきだったのです。 現状は残念ながら、殆どの有権者はそこまで考えずに国民審査に臨んだというのが実態のようで、 この分かりにくい制度そのものへの疑問が出るのも、極めて当然のように思います。

  • 最後に、この場を借りて、 この運動の過程で寄せられた反論の一つにお答えしたいと思います。 真面目な反論の多くは次のようなものでした。 「 地方は都市部に比べていろいろの面で遅れており、 不便であり、しばしば貧しい。だから、初心者にハンディキャップをあげるような意味で、 議員定数を多く与えないと、都市部との競争においてますます不利になる 」

    これに対しては、次のようにお答えしたいと思います。

  • 1.地方の遅れや貧困への対応は ( 適切な範囲内の ) 地方交付税の供与や、 ( 適切な内容に限った ) 公共事業投資のような経済的施策で行うべきである。 議員定員増で行うというのは、見当はずれ、ないしは問題のスリカエである。 下記の利益誘導を是認する考えであるだけでなく、 これをますます奨励する結果になる。

  • 2.国会議員は出身の地元や出身グループへの利益誘導が主な仕事なのだろうか。 確かに、政党政治というからには、出身グループの利益代表という考えが基本であろう。 しかし、議員自身だけでなく、有権者までもがそれが主務であると誤解していて、 いろいろと利権を 「 せびる 」 ところに、政治の貧困と腐敗の原因の一つがあると思う。 日本全体を大所高所から見ながら、 地域エゴなく適切に富や権益を配分して行くことこそが国会議員の責任である。

  • 3.国会議員の大事な仕事は、富の再配分以外に、もっとほかにある筈だ。 安全保障、教育制度改革、 エネルギー供給、少子化、年金、財政赤字など幾多の、日本の将来を左右する 地方にも都市にも共通の全国的な課題への取組みと解決である。

  • 4.こういう仕事の出来る人材を全国から探し出しスカウトするのが、 理想論かも知れないが、国政選挙の本来の姿であろう。 こういう事の出来る議員が極めて少ないのが残念ながら現状ではあるが、 こういう課題のための議員であるなら、全国から有権者数に比例して選ばれるべきである。

  • [ ご参考 ]

  • 有権者への質問:「 あなたが投票する候補者に、 地元と国家のどちらに力点をおいて活動してほしいですか 」

  • 青森・・・地元 61 %; 国家 25 %
    東京・・・地元 33 %; 国家 55 % ( 総選挙中の毎日新聞世論調査より )



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