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22.Jan.02
 Great!Terrific! “LOVE,JANIS”

 素晴らしい舞台だった。60年代のROCK・DIVA『ジャニス・ジョプリン』にトリビュートされた作品で彼女の伝記ミュージカルです。妹のローラの回想録に基づき、家族への手紙や数々の媒体へのインタビューを織り込んで構成されています。
 このミュージカルではジャニスは2人の役者によって演じられます。一人は歌を唄うジャニス。もう一人は唄わないジャニスです。この2人は、彼女の心の中の一面ずつを演じ、一緒にインタビューに答えたりして進んでいきます。2人は同じ表情、感情の時も有れば、全く違う感情表情の時もあり、唄わないジャニスを唄うジャニスが慰めるような所もあります。色んな場面での彼女の気持ちや葛藤が実に分かりやすく作ってあります。
 舞台は曲と曲の間にインタビューや手紙が入ると云った構成でテンポも仲々良くて飽きさせません。

 さて本日、何に一番感動したかというと、RockSpiritである。ジャニスへのトリビュートとして作られたこの作品には間違いなくRockSpiritが溢れており、演奏するBandのメンバー全員が本当に素晴らしいRock Musicianであった。
 RockSpiritとは何か?大変説明しにくいんですが、簡単に云うととても純粋無垢な傷つき易い反体制的荒ぶる心とでも云いましょうか、兎に角ピュアで傷つき易いけど長いものには絶対に巻かれないと云った精神です。『理由なき反抗』的心と言ってもいいかも知れません。Rockという音楽はこの精神が有ってこそ成立するものであって、決してBand構成やリズムで決まるものではない。ドラムもギターもベースもなくったって構わない。手拍子でもピアニカでもリコーダーでもいい、それこそ何にもなくったってこの精神さえ有ればそれはRockなのである。形や形式ではないのである。ここが大変重要な所であって、巷に溢れるRockと称する音楽の殆どは、Rockを茶化した似非Rock、バッタモンなのである。Rockを愛するものとして腹立たしい思いである。政府や体制側の先生、大人達がにこやかに許してくれる音楽などRockではない。本来Rockとは体制にとって危険な匂いを振りまいていなくてはいけないのだ。
 その貴重なRockSpiritが舞台に溢れていたのである。近頃正しいロックが聴けないとお嘆きの方は是非足を運んで頂きたい。足を運んだら、あなたもStanding・Ovationするに違いない。客の入りが50%位だったので、Closeしない事を祈るばかりである。

 さて音ですが、60年代のテイストに溢れておりました。
 聞かせ所ではPAしていましたが、ギターもベースもアンプの音が中心でドラムも殆ど生でした。大変小さな舞台でみんな大変近くで演奏しているのでそれぞれの楽器の音を聞き合って演奏していると思われます。そこが又演奏の良さにも繋がっていると思う。開演前、休憩中は懐かしい60年代後半の音楽を流して雰囲気を盛り上げていました。
 ギター、ベースのアンプにはスタンドではなく、SM-57がぶら下げてありました。ドラムも殆ど57でkickがRE-20、ハイタムはあまり見た事がないけどAKGかシュアーの古いヤツに似たのがあったと思います。ヴォーカル、コーラスはSM-58。Settingもそれなりに昔風で60年代の音を再現しようとしていました。結構格好いい音でした。
 然し今回一番再現に成功したのは矢張り、60年代後半のフラワーチルドレン達のRockSpiritだったと思います。RockSpirit自体は時代で変わるものではないと思いますが、現れ方は当然変わります。
 唄わないジャニスによって演じられるシャイな心がシャイであるが故に薬や酒に溺れていく姿には悲しみを覚えました。60年代はRockMusicianがドラッグで死ぬのが格好良かった時代だと云われていますが、それは70年代のミュージシャンの死が格好悪すぎただけでしょう。

 兎に角RockSpiritに溢れた感動的なミュージカルです。機会があったら是非御覧下さい。

 このページはフラワーチルドレンをイメージして色を選びました。読み難くてすいません。


 今回のNY滞在で最後にこの作品をもう一度観ました。矢張り間違いなくとても素晴らしい作品です。NYに来た人は何をさておいてもこの作品を是非見ていただきたい!宜しくお願いしたい。
Theater Report 37