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Theater Report #34
          

17.Jan.02
 “42ndSTREET”
 これも何となくどっちでもいいや等と思っていた作品です。私、間違っておりました。反省しております。面白かったです。楽しかったです。本当に楽しめました。

 場内が暗くなると指揮者が迫り上がってお辞儀をして演奏が始まります(日本でやった時もこれやったんだろうか?)。舞台の幕が開くと指揮者は舞台の邪魔にならない定位置に下がります。
 最初はTapDanceの足だけが見えます。そして最初のダンスシーンから物語に入って行きますが、ストーリーはシンプルそのもので、英語の判らない子供だって理解できます。所々突っ込みを入れたくなる程シンプルなストーリーです(ついさっきまでロクに振りも覚えられなかった主人公があんなにすぐ出来るようになる辺りは一寸如何なものか、とは思う)。でも細かい心の動きを表現していると大河ドラマになってしまうのでしょうが無いですね。我慢しましょう。
 舞台の転回も心地よいテンポで進んでいきますし、兎に角華やかなのがいい。根本的に暗いシーンはない。主人公が例え落ち込んでいようと(本当は変だけど)根っこの処で暗くないので見ていてとてもお気楽。根アカでお気楽なアメリカンドリーム、良いなあこういう単純なミュージカル。私、実は好きです。実に適度に大掛かりでポイントポイントで派手な装置が出てくるところも、やっちゃえば勝ちといった感じで好きです。

 照明も華やかで、余り主張することなくムービング使いまくりで良かった。1980年の初演からは大分変わってるんだろうなあ、照明的にも音響的にも。機材が進歩してますからね。でも初演当時の雰囲気も残したままで新しい技術を導入しているんだと思う。だからムービングが余り主張していないんだと思う(“AIDA”は主張しまくりだったけどあれはあれでいいんだと思う)。
 因みに“42ndSTREET”と“45 seconds from Broadway”の照明デザイン、音響デザインは同じ人です。

 絵斜幕の使い方も上手いというか、良かった。

 さて音響です。今日は少々長くなると思います。
 大変良く出来ました。花○です。しかも五つ上げちゃいます。実にナチュラル!声もオケもちゃんと舞台から聞こえてきます、何の違和感もなく。違和感の無さは特筆モノでした。音を気にして観ている私でさえなんなく舞台の世界に入っていけました。メインのスピーカーは何処にあるか見えなかったけど、ステージフロントが利いているのかなあ。
 幕開きのTapの音と所々の声は一寸大きいように思ったけど問題になる程ではないし、良く出来ていました。私としてはTapの音はあと3db、声は1.5db位抑えた方が良いと思った。
 舞台の面にはPccが5枚有って、これでTapの音を拾っているんだろうけどそれにしてもクリアーだなあ、足に仕込んでんだろうなあ、と思って後で聞いたら、矢張り仕込んでたそうです。今日はこのショーの音響クルーの中に私がNew Yorkに来るにあたって、文化庁に提出する受入承諾書(New Yorkでの研修は私が引き受けますという書類)を書いてくれた人(“RENT”の音響デザイナー)がいたので会いに行き、舞台裏を見せて貰ったり、幾つか質問させて貰ったりした。
 使用していたワイヤレスマイクは、全部で60本!!42波が声を拾う為で、18波がTapシューズに仕込んであったそうです。42本有っても出演者が54人いるので一部は使い廻していました。それにしても60本!日本では絶対実現不能な数です。
 会社の人間に問い合わせた所、「理論的にはA帯+B帯で12波、AX帯で10波のトータル22波です。出力を落として、(通常10mWの所1mWまで落とす)A+Bで30波までの運用が可能です。AXまで使用すれば、50波位はいけそうですが、実際そんな事例は見聞きしたことはありません。」と返事が来ました。60波は凄い数です。
 頭には、Toupee Clipsという2cm×8mm位の小さなで髪に仕込み、ケーブルは3MのTRANSPOREとBLENDERMというテープで貼り付けているそうです。因みにBLENDERMの方が柔軟性があるそうです。日本でも同じかも知れません。スキンヘッドの役者にはこれらのテープで頭に貼り付けているとのことでした。只この日は、スキンヘッドの役者さんは胸にマイクを付けていたそうです。
 メインのスピーカーは、セットの大臣柱の裏にあるそうです。見えないはずだ。舞台の上から客席側を見たら結構な数のスピーカー仕込まれていた。2階席の奥用には高域補助のホーンが2本仕込んであった。バルコニーの下や二階席の天井には3mおき位でUPMらしきコンパクトスピーカーがディレイ用に仕込んであった。その他サラウンド用に上下の壁にも5mおき位でそれらしきスピーカーが仕込んであった。
 舞台上の役者への返しは、上下5発ずつで、バンドの音のみを返しているとのことであった。声はハウリングを起こすので返せないそうだ。そりゃそうだろう。60波ものワイヤレスマイクが舞台の上を走り回っていては返せるはずがない。
 又DigitalMixerは使わないのかと聞いた所、DrumMixやBandMixには使うこともあるが余り使わないとのことでした。理由はリミッター感のある押さえ付けられたような音がデザイナーには好まれていないとのことでした。然しプロデューサーはスペースファクターが良いので使えと言うそうです。実際42ndの音響ブースは4尺×2間位の場所を取っていて結構客席を潰していた。

 さて今日はここまでですが、近い内にこれから始まるミュージカルのテクニカルリハーサルの様子を見学させて貰えるかも知れないので(今交渉して貰っている)もし実現しましたら、レポートします。