Theater Report #11
            

24.Dec.01
 クリスマス・イブは、クリスマスらしく!と云う訳で本日は「A Christmas Carol」です。

 実は他のものを観ようかな、と思ってtktsに行ったのだが、今日は何と4本しか安売りをしていない!その中から季節モンだし、話は判ってるし、Only8Stageだし、と云う事で「A Christmas Carol」にした。(この分では場当たり主義でTicketを買ってきた私はここ暫く何も観られないかも知れない。23日の日曜日から異常にNYの人口が増えている)

 この「A Christmas Carol」は、Patrick Stewart脚色・演出・主演の一人芝居で、音楽も効果音も全く入らないシンプルなものでした。舞台はチャコールグレーに統一され、最低限の椅子、机等しかなく、これまた実にあっさりしていた。照明もシンプルながら要所を押さえた実によい明かりで、お芝居の進行をよくサポートしていた。今回NYに来て、明かりが良い、と思ったのは初めてのことだ。他が悪いなどと云う事は全くと言っていいほど無かったのだが、今回は兎に角控えめで出しゃばる事無く良い照明であった。

 さて本題。
 名優による名演技というものは、ディケンズ作の、善良な市民を脅してキリスト教的に改心させるという偽善と傲慢に彩られた作品を心洗われる傑作に仕立て上げるものだとつくづく感心いたしました。本当に素晴らしい演技であった。「もしかしたらこの作品は本当に心洗われるストーリーなのだ」と思いこませてしまうのに充分な舞台であった。
 Patrick Stewartの演技は、観客を掴むのも早く、決して逃す事が無く、客を疲れさせない様に適度にリラックスさせ、兎に角あきさせない。
 休憩後、2幕の導入もいきなり彼の世界に引きずり込むが、全く強引ではない。
 例によって英語が判ればもっと数倍面白いに違いないと思うのだが、言葉の壁を越えて、演技そのものに感動出来る。軽妙にして重厚、緩急の使い分け、役柄の演じ分け完璧。実際スクルージを演じている時と他のキャラクターを演じている時の表情や声、目線など実に巧みに演じ分けていた。もしかすると耳が不自由な方でも各キャラクターを理解出来るかも知れない。
 何をやっても嫌みになったり臭くなったりする事がない。本当に素晴らしい。

 因みにマイクはPcc4枚のみ、殆どNonPA。

 クリスマス恒例となっているらしいこのお芝居の終演と同時に観客は全員スタンディング・オベーションで、惜しみない拍手を彼に送った。そしてこのお芝居の収益金は、ホームレスの援助に寄付される。彼は、観客がお金を払ってくれた事に心から感謝していた。

 本当に心洗われる話なのであった。
 スタートレックの船長もやる時にはやるのである。
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